1章 5話 尾行。。
1章 5話 尾行。。
黒色のワゴンタイプ。ここで見失ったらどうしようもない。
私はとにかく集中していた。信号機が変わるかどうか、間に車が入り込まないか、、
集中だ。
運良くターゲットの車のすぐ後ろに付けた。
なるほど、確かにこうゆう時はカップルの方が疑われない。
きっと、ずっと真後ろについていても疑われないだろう。
そして、走る事約10分。ある建物に入っていった。
パチンこ屋。
もしかして、晩御飯いらない理由はパチンこがしたいからなのか??
「ご主人はパチンこはしない。」
え?
ぼそっとらんが呟いた。
そして、黒いワゴン車は駐車場の奥まで入っていく。
確かに、入り口付近にも駐車スペースががあるのにわざわざ奥まで行くのは怪しい。
私はバレないように、ゆっくり奥まで入っていく。
止まった。
駐車場一番奥、、そこに止まった。
私も奥に行くと流石にまずいので、黒いワゴン車が見える位置で駐車スペースに止まった。
らんは後部座席から何やらカバンを出す。
それはカメラだった!
なるほど、、ここで密会か。
しばし待つ。
なんか、不倫の調査も楽しいもんだな。。
そんな最低な事を考えていると、黒いワゴン車の隣に軽自動車が止まる。
来たか!
ワゴン車から男が降りる。
そして、その軽自動車の助手席に乗り込んだ。
らんは、パシャパシャ写真を撮っている。
そして、その軽自動車はすぐに走り出した。
私も気づかれないように後を追う。
運転席の女性を見ようと思ったが、角度が悪いのか中々見れなかった。
「これは、クロですね。。」
私はらんに語りかけた。
「まだまだ、これから。依頼内容覚えてる?」
「えーと、、会話の盗聴、お金を貢いでいるか、でしたね。」
「そう。会話の盗聴はホテルなりレストランに行けば何とかなる。でも今回の厄介なのはお金を貢いでいるか。」
「なるほど、、、確かにただの不倫なら写真なり盗聴なりで事足りる。。貢いでいるか、、なんて尾行だけで何ともならないですよね。」
うーーん、、私は運転に集中しながら考え込んだ。
お金を貢いでいるかどうかか、、
年の差ならばその可能性はあるが、、
ターゲットの男性は32歳。そこまで貢ぐほど余裕なんてないだろう。
女性はいくつだろうか、、
同じ会社の女子社員、、そんな所だとは思うが、、
車を走らせること20分程、、
通りの少ない道路に1件だけポツンとあるラブホテルに入っていこうとした。
「距離を開けないですぐ入って」
らんはカメラをパシャパシャしながら叫んだ。
私もそのつもりだ。
なぜならば、二人が入る部屋の隣に我々も部屋を取らないと盗聴なんてできないからだ。
二人は車から降りる。
私たちもすぐ駐車場に止め、車を降りる。
二人がホテルの入り口に入り、自動ドアが閉まる瞬間に我々も入った。
ホテルのラウンジ、、
シックなクラシック音楽、カラフルな壁、少し赤い照明、、
なんか久しぶりに来たな。。ラブホテルなんて。。
ルームの写真がある。どこにしようかちょうど二人が迷っている所だ。
こうゆう所の鉢合わせは普通は気まずい。
しかし、私は全然気まずく思わない。
何なら話しかけるタイプだ。
そう、空気が読めないのが長所であり短所だ。
今回は、女を見ていた。
当然、仕事だからだ、、
と、言いたい所だが、これからこの子が、、って考えるといささか興奮してしまう、、
身長はやや低めの可愛らしいタイプ、年齢は22、3歳っていった所か。
まあ、社内不倫で間違いないだろう。
と思ってる時にルームのボタンを押した。
『203』
良かった、平日のまだ18時過ぎ、、
部屋はガラガラだ。。
二人がエレベーターに乗ったのを見届けると、らんは
隣の『202』を押した。
らんはカバンに仕込んでいた隠しカメラで二人を録画していた。
しかし、少し緊張していたが私は冷静に考えてみた。
こんな超美人と、らんと、、ラブホテル、、
きっと、私の人生で一番と思える女とラブホに来るなんて二度とないだろう。
そう思いながら、エレベーターに乗った隣のらんを見た。
らんは、ホテルに入ってから何も喋らない。
もしかして、、
恥ずかしいのか、、、
エレベーターを降りて歩き出す。
らんは、我々の部屋の『202』ではなく、ターゲットの『203』の部屋の前に止まる。
そして、一瞬座り込み何かドアの下に手をやり、そしてまた歩き出す。
らんは部屋に入るなり私に話しかけてきた。やっと話せる、、かのごとく、、
「ターゲットの前では会話をしない。もしするなら他人の声で話す事。」
私は、話し出したらんに少しびっくりしながら、らんをまじまじと見ていた。
そして、らんは盗聴器らしき機械を用意しながら、
「声は一発で記憶に残る。どこかで見た顔でも声を聞いたらすぐ思い出す。探偵は顔より声に気をつける。」
なるほど、、、
妙に私は納得した。面接のあの美人所長、、石井所長もおばさんの声を使ってたな。。
じゃあ、らんも声を変えられるのだろうか、、
そうこうしてる内に、病院の先生がするような聴診器がついた機械を出した。小型の盗聴器か。なんか古典的だな。。
「これで聴こえるもんなんですね。」
その機械を見ながら少し疑う感じでらんに聞いた。
そして、その古典的な盗聴器を壁側において、
今度は何やら小さいボイスレコーダらしきものを取り出し、イヤフォンを耳に付ける。
セミロングの髪を少しかきあげて、、
いい女。。。
しかし、、私の先程の問いかけにはスルーだ。。
「うん、、聴こえる。」
らんは独り言っぽく言いながら、小さいボイスレコーダーらしきもののボタンを押した。
「あなたはこの聴診器で会話を聞いて。録音は一応してるから。私はこちらを聞いてるので。」
え?
「さっきドアの下に超小型マイクを仕込んでおいた。最近のは性能いいからドアの下でも会話が聴こえるの。」
らんは無料のインスタントコーヒーを入れている。
まるで、新婚夫婦の奥さんが朝のコーヒーでも入れているみたいに。。
さっきのドアの件か。
確かに何か仕込んでいたとは思ったが、
あんな所に置いても会話が聴こえるなんて、怖い世の中だな。と怖い世の中を演じている私が思った。
所で、、じゃあ、この壁においた古典的な盗聴器は、、??
「じゃあ、この盗聴器は、、」
私はらんに聞いた。
「ん?保険。。」
そう言って、らんはおもむろにソファーに座りイヤフォンを聴きながらコーヒーを飲み出した。
「あなたのもあるわよ。」
そう言ってらんは私の分までコーヒーを作ってくれた。
おーー、、意外と優しい女。
私はコーヒーを手に取り、仕方がないので壁と向き合いながら聴診器を壁に当てた。




