058:迷宮透視行③
角を曲がった途端、ユニスはたたらを踏んだ。
進行方向に男が二人。
迷宮と同じ暗い色調の緑色は、戦闘服の迷彩色だ。
ユニスのシェインの目は現在二つ。
晶斗はどこかを移動中だ。
プリンスとのシェインのリンクは唐突に切れた。シェインはプリンスの方が強いから、目の前の出来事に意識を集中するためにリンクを外したのかもしれない。
ともあれ、ユニスは肉眼とシェインの目の両方で、今居る通路を確認した。能力者では無い人間ならば不気味で薄暗い空間だが、ユニスには真昼のように見通せた。
ユニスが視界に入ると、二人の男はヴァイザーをはずした。
驚きと好奇心の入り交じった表情でユニスを見ている。
二人とも同じ色調の金髪に青い目で、顔立ちもよく似た、兄弟みたいだ。どことなく大人びて兄らしく見える方が、にっこり笑いかけてきた。
「やあ、元気? 今日は一段と光ってるね」
「アハ、ありがと。じゃ、これで!」
ユニスは右手の壁に体当たりして、壁の中に潜り込んだ。とにかくここから離れなければ。挨拶してる場合じゃない。あの二人は危険だ。
ユニスが全力疾走して三重の壁を透過したその先に、
「やあっ!」
金髪の二人がいて、同じ角度で右手を挙げた。
さしものユニスも唖然として、出てきた壁に背中を付けたが、中に戻れるのは忘れた。
「どうやって先回りしたの? わたしは最短距離を来たのよ。どんな空間移送をしたの? あなたたちもシェイナー?」
「違うよ、これは科学の力さ」
ひどく陽気な、少年めいた高い声には聞き覚えがあった。
「あ、あなたね。この前、迷宮でわたしを追いかけてきた方は!」
ユニスが兄の方を見やると、二人は顔を見合わせ、お互いを指差した。
「ほんとにわかる? どっちがどっちだって?」
「こっちよ!」
まっすぐ兄に見える方を、ビシッと指差してやる。
「わたし、記憶力はいいんだから。あなたたち、ブルーザの盗賊ね」
若い方が笑った。
「ちょっと違う。僕らはブローザの海賊。国境のあるブローザ海峡から来たから、そう呼ばれてるんだよ。じゃ、わかったところで、君が僕らと一緒に来てよね」
「いいね、それ。僕もこの子が気に入っているから、嬉しいな」
と、兄が同意する。
「え、ええっ!?」
ユニスは総毛立った。一瞬体が固まったが、硬直している場合じゃないと自分を叱り飛ばし、慌てて壁に入ろうとした。
壁にビタンと張り付いた。
「きゃうっ?」
入れない。壁に拒否られた!?
痛い鼻を両手で押さえながら振り向けば、金髪兄弟が距離を詰めている。
「きゃーだっ、来ないで!」
ユニスは全身の毛を逆立て、一目散に通路を逃げ出した。




