「呪いの絵の具」〜最後〜
■まえがき
またまたまたまた前回からの続きの最後の話。
商店街のイベントで描いて貰った絵画と同じ姿になってしまった栗子とお母さん。
シズが栗子を阿修羅に変えてロックマンに対峙させるも無関心に、興醒めしたシズに絵を選べる程に託されて、遂に呪いが解けると思った所に・・・え?
■本文
『いや、何で私がそこ居るん?』
栗「何が?」
『まさか・・・お母さん?』
栗「それ以外の何に見えるねん。可笑しな事言うでこの子は……」
『いや、可怪しいんはお母さんやで、それ顔も身体も普通に私やん!』
栗「え? ああっ! そやったわ。この絵見て似とる思たらそれになんねんやんな!? アカン、お母さんこの絵の栗子見てたら何や懐かしい自分の若い時思い出してな、ああやっぱ親子やねんなぁて、これお母さんの若い時に似とるわあ思てもうてん・・・シズちゃん、これアカンやつやったんかいな?」
・・・シズ? 何その顔、ヤバイんか嬉しんか微妙やで。
ん、嬉しい?
今可笑しな事言うたな私。
けどそうやでこれ、何やシズの顔この状況で嬉しそうな顔しとるもんな。
・・・嫌な予感しかせえへん。
S「ぃゃぁああ、アカン処か最高ですやん! お母さん心根若いしやらなアカン事いっぱいあるねんから、ソレで調度ええ思いますよ! ほんまお母さん何さしても最高やわ。よう似合てますもんソレ!」
栗「ほんまかあ? 何や、これちぃと胸の辺りが寂しい気もするけどな」
S「前と比べたらそうですねえ、ちなみにそれ、ちゃんと服剥がして風呂入れるようになっとって、局部なんか敢えて書かんかったら勝手に補足するらしいでね、ほいで裸は前隠しよる絵になっとるんですよ」
栗「ちゃんと考えてはるねんやん! 頭も気質もええ娘やなあシズちゃん。なあ栗子!」
エラい笑み零して語らい出しとるで、この女共……
何やお母さんにまでそこ弄られたらほんまに凹むやん。
シズなんか興醒め何処吹く風にエラい眼キラッキラッさせてからに……
『いや、何でお母さんに先選ばしとるんよ?』
S「そらお母さんまでなっとるなんて知らんもんで用意してへんかったし、他は変なのしかあれへんもん」
栗「スマンな栗子、お母さんその阿修羅やったらええかな思ててんけど、もう栗子使ったから使えへん言われてな、ほなどれにしよかな思てる内についついソレ見てもうてんやんか」
なんや今の会話に可怪しな話いっぱいあったで……
悪い予感に答え知りたないのに解って来てもうた。
私これ、意外と頭ええかもしれん。
S「それは普通やで」
『いや、あんたは可怪しいでそれ! また私の考え読みよってからに、エスパーやん! 普通にエスパーしとるやん』
栗「何? シズちゃんSや無うてAやんな?」
S「ええAですよ私」
栗「そやんなあ! 栗子もうええからとっとと中から絵選びやっし!」
S「身体選び放題なんやで! こんなんあるか普通?」
可怪しいて、机に並べてあるけど・・・コレなんかタコ人間やん、カリビアン出て来たオッサンみたいなっとるし。
他も色々可怪しいて、パンダか牛だかよう分からん白黒模様のバケモンに、こないだのデッカイ蛾みたいなんとか、どえらい長い首長族とか……
ほんで何でこのタイミングで人魚やねん、ちぃと気になるやないの……
いや待て、他の絵コレ殆どシズが見たがってたUMAの絵ばっかりやん!
私をUMAにしたの撮って、何処か売ろう思てたん違うの?
て、バッグん中に一眼レフ見えとるし!
こんなん鮮明に撮って私やバレたらどないする気よ?
・・・いや、それも織込み済みか?
コイツ、私ごと売る気やな……
S「そがいな考え無いで、安心して選び」
あるなあっ! コレ絶対あるわ。
『・・・にしても、オッサンようこんなUMAまで描けたな』
S「違うで! それ描いたんオカルトショップの姉さんや。美大卒や言うてたから、ほんまかあ? 言うて書いて貰いましてん」
それ、ショップ店員の姉さんを、煽って書かせた言うんと違うか?
恐ろしい女やでほんま。
『・・・ん? ほなオッサンどないしてん?』
S「ああ、近所に居った松田さん所の婆ちゃんが昔、あのオッサンはロクデモナイから近付いたらアカンで!て、ずっと言うててんから、今もよう近付かんわ!」
『ほなアンタ、オッサン知っとったんやないの! アレか、オッサンがヤバい言う話もその婆ちゃんの受け売りか?』
・・・ん?
ちょ待って。
これ、オッサンの書いた絵の呪いと違うんか?
何で私ショップ店員の姉さん書いた絵に乗り換え出来とるねん。
可笑しいやん!
S「何も可笑し無いで、呪いは絵や無うて絵の具やからな」
『・・・いや、そこを引いても色々可笑しいのは可笑しいねんで、特にシズ、あんたのそれ!』
S「私は兎も角、早よ選びて!』
『選べるもんが、ある思うか?』
S「ほなこれ全部仕舞うで、ええんか?」
栗「それやったらお母さん変えよかな……」
『そこは要らんやろ!』
これ面倒臭い事なる前に何か選ばんとか?
もうとりあえず一回人魚なっとこうかな……
S「やっぱな! 栗子はそれ選ぶ思てたわ! まだ絵あるし色々試したらええがな」
『ええんかあ? ほな、とんぼり川綺麗なった言うし、ちょコレで泳いで来るわ! 何や私意外と似合てるん違う人魚……』
おおぅ、一気に視線堕ちたで……
まあ阿修羅からやからな。
けどこれ歩かれへんやん。
どないしたらええねん?
――PITABETAPITABETA――
S「何や人魚言うか、陸でのた打ち回っとる死にかけの魚みたいやな……」
栗「栗子、とんぼりの政治が言う話なんか信じてたらアンタ殺されんで! 毎日ゲロ浮かんどる川が綺麗になる訳ないやろ! あんなもん川に綺麗綺麗入れて綺麗なった言うとるだけやで!」
え、何で私この格好で戒められてんの?
せめてお風呂ドボンするとか、そんなんも無いんか?
これ座るんも結構キツイでえ!
今私ハゼかムツゴロウみたいなっとるもん。
全然思てた人魚と違う格好なっとるで私……
『もうええ、人魚夢見る歳でもないし、女子高生らしく大人の夢叶えたるわ!』
S「おお栗子、ようやっとその気になったか」
『やるよ私! もうこれは私の悲願やな!』
栗「気張りや! 栗子」
私は唯一何も描かれていない紙に書かれてある四つの文字をただ見つめ、似ていると想像し続けた。
【総理大臣】
私の不遇な立場を改善するには、もうコレしかないと思たんです。
そして私は江崎家から姿を消していました。
そう、絵には何もないのだから当然やったとです。
けれど乗り換えは成功していました。
結果として私はとんぼり川を綺麗綺麗を使わずに綺麗にする事に成功しました。
しかし、絵の具の呪いは描かれた本人が「似てる」や「そっくり」と認めて姿を変えるも、絵の具が完全に乾く三日程を過ぎると元に戻る呪いやったんです。
気付くと私は家で制服を着て机の前に居ました。
机の上にはとても奇天烈な絵が何枚も……
S「お、次何する?」
「呪いの絵の具」〜完〜





