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シルバーリング  作者: Yua
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第24話「一球入魂」――えいっ!

僕は引き続き、地面に腰掛けながら、姉ちゃんと青ちゃんの追いかけっこを観戦します。今は徐々に姉ちゃんが、青ちゃんを岩の隅に追いやってるところです。そして、追い詰めて、手を伸ばして…………空を切ります。 スカッ


「くっそぉぉ! ちょこまかと!」

「ふふふ、残ねんでした~」


後一歩の所まで追い詰める姉ちゃんの手を、青ちゃんが紙一重で躱して、からかってる感じです。姉ちゃんがかなりムキになって絶叫してます。対する青ちゃんは本当に楽しそうです。


姉ちゃんは、よく僕をからかって遊んでるけど、自分が、からかわれるのには馴れてないみたいです。かなり頭に血が上ってる様子です。


僕も後で姉ちゃんのこと、からかってみようかな? でも、からかい返される気しかしない……。僕が姉ちゃんをからかおうと思ったら、よっぽどのこと言わないとだと思う。何かあるっけ? 思いつかない……。まぁいっか。


 それにしても、流石は村最速の精霊さんです。本当に速いです。姉ちゃんもビックリな速さで追い回してますが、青ちゃんはまだまだ余裕といった感じです。


こうやって外から観戦していると、青ちゃんが大分と手加減してるのも分かります。青ちゃんは、あえてギリギリを演出してますね……。その方が姉ちゃんが悔しがるので、わざと隅に追いやられていってます。凄いです……。


 でも、こうして観戦していて気がついたんですが、青ちゃんの逃げ方には何だか、かなり癖があるような気がします。


姉ちゃんが隅に追いやって、捕まえようとする手に対して、青ちゃんは今のところ全部、左側に避けています。少し左斜め上の方。


そして姉ちゃんの手を左側に躱した後は、今のところ必ず一瞬だけ立ち止まります。悔しがる姉ちゃんを見るために、立ち止まってる感じです。そして姉ちゃんを一笑いしてから、立ち去ります。


そうして観戦している間にも、また青ちゃんが、姉ちゃんに隅に追いやられていきます。姉ちゃんも今度こそは! と意気込んでます。


僕の今までの観察通りなら、この後、青ちゃんはまた左側に避けて、僕を背にする位置で一瞬だけ止まるはずです。 そう……。丁度、このあたり……。


(――えいっ!)


僕は、水を小さな編み状に編んで、その位置にゆっくりと静かに投げ飛ばします。青ちゃんは姉ちゃんに気を取られて、こちらには注意を向けないはずなので、速さは捨てました。速さよりステルス優先です!


そして青ちゃんは、予想通り姉ちゃんの追い込む手を、左へ避けます……。そして立ち止まる……。姉ちゃんを見て、笑いかけて……


「――あうぅっ!」 パシャーン!


とらえた……。


水の網は直ぐに崩れていったけど、青ちゃんの身動きを一瞬だけ封じることが出来ました。目の前にいた姉ちゃんが、その隙を見逃すはずはなく、難なく青ちゃんを捕まえました。


ビックリするくらい綺麗に決まった……。予想通りの動き、そして予想通りの位置へ死角からの攻撃……。完璧!


「青ちゃん!?」「うそー」


一緒に観戦していた精霊さん達がビックリしてます。僕もビックリしています。ビックリするくらい綺麗に決まった……。予想通りの動き、そして予想通りの位置へ死角からの攻撃……。完璧!


「そ、そんな……」


捕まった青ちゃんは意気消沈といった感じです。少し涙目で震えています……。えっ! そこまで落ち込むの!? それ程、速さには自信があったのでしょうか?


まぁ、いいや。そんなことより、では早速撫で回しますか! なでなで、さすさす……。


「なっ! なんなの! やめて!」


ふふ、この子、何だか不貞腐ちゃってて、とっても可愛いです。ハムスター撫でてるみたいです。そんな経験ないけど、多分こんな感じだと思います。


やめてと言われてますが、青ちゃんなら簡単に逃げることが出来ると思うので、止めません。なでなで、さすさす……。


「そんなことより、くろすけ! 何を! さっきは一体何をしたんだ!? どうやってそいつを捉えたんだ!」


姉ちゃんが興奮冷めやらぬままに、僕の肩を揺らしながら聞いてきました。これ程取り乱す姉ちゃんは貴重です! その可愛い顔を、僕の姉ちゃんフォルダに保存っと……。


「すご~い! 青ちゃん捕まちゃった!」「どうやったの~」

「私も知りたい……。何で私、捕まったの……。教えて……」


精霊さん達も興味津々で聞いてきます。

んー、何で捕まえられたのかって聞かれてもなぁ……。何でだろ?


そうだなぁ、まぁ、青ちゃんは確かに物凄く速かった。多分本当に村最速なんだと思う。けど言ってしまえば速いだけ。一番気配察知に長けているとも限らないし、視野が広いとか、動体視力が良いとか、小回りが利くとも限らない。もっと言えば、眠ってしまえば、この村で一番遅い生き物になる。


きっと青ちゃんはこの村で最速の精霊さんだけど、最も捕まえにくい精霊さんではないんだと思う。速いだけの存在よりも、小回りを利かせて、緩急つけられる方が捕まえにくそうだしね。


まぁ、そんなことを適当に説明した。でも結局のところ、一番の要因は……


「青ちゃんが油断してくれたからかな」


さっきは速いだけだ、なんて言ったけど、でもやっぱり逃げることにおいて、速さというのは物凄く大きな武器だ。青ちゃんが普通に逃げてたなら、まぁ捕まってなかったと思う。


結局は、青ちゃんが自分の速さに慢心して、僕達のことを侮ってくれたおかげだ。


「うぅ……。遊びでよかった……」


青ちゃんはそう言って、ホッと安堵の息をつきます。


青ちゃんは随分と前に、一度だけ人間に捕まったことがあるそうです。とっても酷い扱いを受けたそうで、今でも人間には余り良いイメージが持てないそうです。その時は、何とか隙を見て命からがらで逃げ出したみたいです。そしてそれからは、もう二度と捕まらないように、速さを追求していったそうです。


「うん!もう捕まらない! 来て!」


青ちゃんが鬼ごっこの再開を望んでいます。


いやー、でも、多分もう僕達が捕まえるのは無理なんじゃない? 編成変えたほうがいいんじゃない? ま、でもいっか。何か楽しいし!


「行くよー!」――と僕が言うと……

「よっしゃー! 今度は私だけで青いのを捕まえてやる!」


と言って、姉ちゃんが真っ先に青ちゃんの元へ、突進して行きました。かなりの気合の入りようです。僕は他の子達を追いかけたいと思います!


「わーにげろー」「逃げる~」「いい度胸!来る!」


そうして精霊さん達はまた散り散りになって逃げ出します。

うん、相変わらず、速いです……。


結局それ以降、姉ちゃんと僕は一度も精霊さん達を捕まえることは出来ずに、終始翻弄されてしまいました。全く近づけず、触れることも出来ませんでした……。


「はぁぁ……はぁ……はぅ……」


姉ちゃんも流石に疲れた様子で、激しく肩で息をしています。僕もぐったりしています……。それに対して、精霊さん達はまだまだ余裕そうです。


「楽しかったー」「楽しい~」「うん、また遊ぶ!」


この精霊さん達を捕まえる道のりは、とても遠そうです……。それでも精霊さん達との距離は、何だか縮まった気がします。ふふ、楽しかったです。




 ○ 私の独り言 ○


何かの分野でトップになった人は、周りから、その人がその分野の全てで優れてる人だと見られがちです。でも実際は、その分野の総合力で優れているだけです。


部分部分では、そうでもない可能性もあります。それどころか、苦手な部分もあるかもしれません。


投資が苦手な有名投資家。演技が下手な大物俳優。足の遅い一流スポーツ選手。喋るのが下手な人気芸人。歌唱力のない人気歌手。枚挙に暇がないですね。


では何故そんな一見、致命的な弱点をもった人達が、その分野のトップに立てるのかですが……勿論、総合力で優れているからです。色んな部分を引っ括めて、総合的に優れていたから、その地位にいるんです。


中にはズルをしたり、如何わしいことをするのに優れていて、その地位にいる人がいるかもしれません。それは、その分野に、ズルをしたり、如何わしいことをするという項目が含まれているからです。


これを気にして批判する人は多いです。けど私はこんな小さなことを気にしているのは、もったいないと思います。ズルがしたいとか、如何わしいことをしなくちゃいけないとか思うなら、好きにすればいいと思いますよ?


そんな小さなことよりも、さっき例に挙げた彼ら彼女らがトップに立てる、もっと大きな要因に目を向ける方が賢いと思います。それは……


潜在意識さんなの!



でも……私の潜在意識さん、なかなかに面倒な子なの……。

分からず屋さんなの……。片付けが下手なの……。


でもめげないの! 頑張って掃除して綺麗にするの!

ネガティブさんはゴミ箱なの。ばいばいなの!


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