その部下……
4月から更新遅くなりそうです……
アルファ達に連れられてやってきたのは、集落の中でも更に茂みの中にある木で作られた大きな家だった。
立派な家だな、しかもほかの家より全然大きい……
内装は広々とした作りになっていて、天井までがかなりの高さになっている。高い天井のおかげで背の高い魔物も楽に通れる所を見る限り、それに配慮しての作りだろう。
これを作ったやつは相当腕のいい奴だろうと思いながら廊下を歩いていると、俺の前にいたアルファが此方ですと一室の扉を開けた。その部屋はリビング、と言うよりも何か儀式でもするのではと思う位広く作られていた。部屋の一番奥には立派な玉座があり、その左右には鎧を着こんだ魔物の兵士が綺麗に並び、床には赤いカーペットが敷かれ玉座までの道を作っていた。
「……えっと?」
「さぁどうぞ、陛下」
戸惑う俺に、横に立つアルファは手で玉座を示した。
あ、俺にあそこに行って座れってことね、ハイハイ
俺はアルファに頷いて見せ、カーペットの上を歩き出した。
自分よりも背の高い魔物や人相の悪い魔物達の間を急ぎ足で抜けると、手前にある段差を乗り越え、すぐ目の前にある玉座に腰を下ろした。
お、この椅子思ったよりか柔らかい……てか皆こっち見なくていいから!ヤメテ!俺のSAN値が0になるから!
俺は視界に入る魔物達から目をできるだけ逸らしたくて、肘掛けに肘を乗せ頬杖をつくと、何もない床に目を落とした。この静かな空間を誰かが壊してくれないだろうかと少しだけ目線を前に向けると、丁度よく俺の前で片膝をつくアルファが目に留まった。
「あ、そうだった。おい、アルファ……小隊長?」
「はい、何でしょう陛下」
「さっきの話の続きしてくれるか?俺についての話」
アルファは畏まりました、と言って話し出そうとした時、突然誰かの陛下ー!!!と呼ぶ声が聞こえてきた。
「ん?何だ?」
俺がその声に反応したように、アルファや兵士達もすぐに反応した。俺はその声の主を尋ねようとアルファを見たが、アルファの顔は俺が木に吊るされていた時と同じ、青白いものになっていた。
アルファのその表情に驚き周りの兵士達の表情を見ると、兵士達の顔は先程よりも強張り何かに怯える様に身を震わせていた。
な、なんだこの尋常じゃない怖がり方は……そんなにやばいヤツがいるのか?
段々と近づいてくるその声に、俺は唾を飲み込みじっと扉を見つめた。すると突然その扉が開き、一人の男が此方を見て陛下!!と叫んだ。扉の前に居たのは人型に近い魔物と思われる男だった。
まず目に留まったのは、男の美しい顔だった。すっきりとした目鼻立ちに蒼い瞳、誰もが見れば綺麗だと言うであろうその顔の額からは一本角が生えていた。白銀に輝く長い髪は高い位置で括っているが此処まで走ってきたのか少し乱れていた。服は何か高級そうな物を纏い、首にはストールのようなものを巻いている。そして腰には鞭を下げていた。
「あぁ!!陛下!!戻られたのですね!!私、陛下のご帰還を首を長くして待っていました!!あぁ、陛下!!」
男はスタスタと歩き、目の前にいたアルファよりも前にやってくると、片膝をつき片手を俺に伸ばした。その表情はまさに感極まると言った面持ちで俺を見た後、頭を下げた。
え、なにこいつ、全然ヤバそうに見えない
何かの勘違いかと思い、目の前にいる男から目を離し周りの兵士達の様子を見ると、やはりその表情は硬いままだった。
何でだ?あれか?何かの階級とかの位の高いヤツなのか?って、アルファの顔がさっきより白くなってる!?
男の後ろに居るアルファに目を向けると、アルファの顔は先程よりも白くなっていた。取り合えず、俺は目の前にいる男に顔を上げさせると男は俺に微笑んで見せた。顔が美しいだけに、俺は一瞬心惹かれそうになる。
しっかりしろ俺!相手は男、顔が綺麗でも男なんだ!
「あー、えっと……」
この状況にどうすればいいのか分からず思考を巡らせていると、先程アルファに聞こうとしていた事を思い出した。
うーん、アルファは……あの様子じゃ話は無理そうだな。まぁこいつに聞いても問題ないか
仕方なく目の前にいる男に話しかけようとした時、俺は重大な事に気が付いた。
あ、ヤバい。俺コイツの名前知らないわ。あれこれ結構不味いんじゃ……
こんな所で名前なんて聞いたら失望され……いやその前に俺がこいつらの知ってる魔王じゃないとか言い出すのでは……
一度悪いことを思い浮かべてしまえば、そこから先は最悪な事のオンパレードだ
悪い発想の尽きぬ中、結局こうしていても何も変わらないし、分からないのだからと自分に言い聞かせた後、俺は目の前にいる男に意を決し尋ねる。
「あのさ、悪いんだけど……お前、名前は?」
そう俺が言った瞬間、今まで静かに立っていた兵士達が一気にざわめいた。その反応を見せることを覚悟していたとはいえ、さすがに背中に冷たいものを感じた
そして目の前にいる男は悲しそうな瞳で俺を見つめていた。
「へ、陛下……私を、お忘れで?」
「あ、いや、そのだな?俺は今、記憶がなくてだな……」
悲しみを含んだ声で言う男に、胸が締め付けられるような思いになる。
あー!!なんか凄い悪い事してる気分になるわー!!!でも仕方ないじゃん!?本当に知らないし!?
と言うか俺は初対面なわけだし!?
必死に言い訳を自分に言い聞かせていると、突然目の前にいる男が震えだした。
「ど、どうした?大丈夫か?」
「あぁ、陛下……ご心配痛み入ります。ですが、私……どうしようもなく」
「どうしようもなく?」
「……興奮しております♡」
そう言って両手で自身を抱き締めながら息を荒くする様子に、俺は一つ確信した。
あぁ、こいつ変態だわ……
見た目はかなりいい、寧ろ顔も綺麗でカッコいいと思えるのに、頭の中はかなりヤバめの奴らしい。その事を残念に思っていると、男は嬉しそうに話し始めた。
「あぁ!!その鎧兜の下からでも分かる深紅に光る冷たい瞳!!!やはり私の敬愛する魔王アヴァニール様!!!私の名は、サミエル・ド・ラグニイル。サミエルとお呼び下されば幸いにございます。寧ろ奴隷、いいえ……ゴミとお呼び下さってもかまいません!!!」
キラキラと瞳を輝かせる美しい男サミエルは、大分頭のイッてる残念なイケメンだった。




