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追放された俺、辺境で畑を耕していただけなのに、いつの間にか都市ができていた件 ~売らない・奪わない・支配しない、静かな開拓村づくり~  作者: レオン・クラフト


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第20話 村と呼ばれる条件

 翌朝、空は澄みきっていた。


 人数が減ったせいか、畑が少し広く見える。

 作業の音も、少しだけ少ない。


 だが、動きに迷いはなかった。


 レオンは畝を整えながら、周囲を見渡す。

 誰も指示を待っていない。

 それぞれが、自分の役割を理解して動いている。


「……安定したな」


 それは喜びではなく、確認だった。


 昼前、境界の外に人が集まった。

 三人。見覚えのある顔だ。

 去った者ではない。周辺村の代表たちだった。


 イオルが、自然な動きで前に出る。

「用件は」


「話がしたい」

 年配の男が言った。

「中に、入ってもいいか」


 イオルは一瞬だけ迷い、杭の内側を振り返った。

 レオンは、小さく頷く。


 焚き火のそばで、向かい合う。


「ここを、どう呼べばいい」

 男は、唐突に言った。

「拠点か。集落か」


 ミラが、視線を上げる。

 バルドが、腕を組む。


 レオンは、少し考えた。

「呼びやすい名前でいい」


「いや」

 男は首を振った。

「そういう意味じゃない」


 沈黙。

 言葉の裏にあるものが、全員に伝わった。


「代表を立てろ、という話か」

 バルドが低く言う。


「違う」

 男は即座に否定する。

「だが、判断を仰ぐ場所が欲しい」


 ミラが、静かに言う。

「依存ですか」

「……違う、と言いたい」

 男は苦笑した。

「だが、困った時に向く顔があると、助かる」


 レオンは、焚き火を見つめた。

 これまで、避けてきた話だ。


 支配しない。

 王にならない。

 だが、責任から逃げない。


「代表は、置かない」

 レオンは言った。

「ここは、誰かのものじゃない」


 男たちは、少し驚いた顔をする。


「だが」

 レオンは続ける。

「調整役は、引き受ける」


 ミラが、理解したように頷く。

 バルドが、小さく笑った。


「決める場所ではなく」

 レオンは言葉を選ぶ。

「**戻ってきて、相談できる場所**だ」


 男たちは、しばらく沈黙したあと、深く頷いた。

「……それで、十分だ」


 夕方、ミラは帳面を開いた。

 新しい頁に、項目を書く。


 ――調整役:レオン。

 ――決定権:合議。

 ――強制力:なし。


「珍しい形ですね」

 エルナが言う。

「続く形だ」

 レオンは答えた。


 日が沈み、火が灯る。

 人数は多くない。

 だが、誰も不安そうではなかった。


 バルドが、酒代わりの湯を啜りながら言う。

「で、ここは何て呼ばれる」

「呼ばれ始めてる」

 イオルが言った。

「周りじゃ、もう……“村”だ」


 誰も笑わなかった。

 否定もしなかった。


 レオンは、静かに息を吐く。


 村と呼ばれる条件は、建物でも、人数でもない。

 **困った時に、壊れずに集まれること。**


 それが、今日、証明された。


 帳面の最後に、ミラが一行を書き加える。


 ――通称:グレン村(仮)。


 仮だ。

 だが、もう消えない。


 夜風が、畑を撫でる。

 芽は、静かに揺れている。


 ここは、もう空き地ではない。

 誰かの逃げ場でもない。


 続けることを選んだ人間たちの場所だ。


 レオンは火を見つめながら、そう確信していた。


本話もお読みいただき、ありがとうございました!


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