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地上戦機ライジングアース  作者: クマコとアイ
第十部

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187/199

187.帰還したシエスタ

シエスタの感想です。

 シエスタは、タージ基地の滑走路にイングレスαを着陸させた。

 コックピットから降りる。

 滑走路を一人歩いていく、シエスタ。


 市内のあちらこちらから、煙が上がっている。


 上空から見ていると、今朝のジェマナイの攻撃では、官庁街の被害がとくに著しかった。

 シエスタは、ジェマナイは追い返したものの、街を守り切れなかった、という実感を強く感じている。


(くそが! ジェマナイは人間を人間と思っていない!)

 女の身にして、そんな悪態をつく。


 これから、ボワテ大佐に報告をしなければならない。

(さっき会ったばかりだと言うのに……)


 ジェマナイは、当分は攻めてこれまい。

 それだけの打撃は与えた。

 しかし、街がこんなに滅茶滅茶では……


 シエスタは、報告書に何を何と書けば良いのか、思い悩んだ。

 彼女は、戦場にあっても「非情」ということに徹することができない。

 敵を討てば、そのことも気に病んだし、それ以上に味方が被害を受ければ、自分のことのように落ち込む。

 とくに、バグダッドは自分が長く派遣されていた街だった。

 今では、アルスレーテ以上に愛着を感じている。

 そんな街が破壊されたのだ。

 シエスタがよく訪れていたカッラーダ地区も、あちこちで火の手が上がっていた。


 シエスタは、一歩一歩を踏みしめながら歩いた。

 それが、彼女の心を調律してくれる。

(ボワテ大佐に会う前に、あたしの心が静まっていれば良いんだが……)

 しかし、それはかなわなかった。


 ボワテ大佐も疲れた表情をしていた。

 それはそうだろう。

 バグダッド市街を9体のビッグマンが暴れまわったのである。

 ここにブラックスワーンダーも加わっていれば、確実にバグダッドは落ちていただろう。

 まさに幸運だった。

 いや、それとは少し違う。

 我々はライジングアースに助けられたのだ、と、ダグラス・ボワテは口にはしないながらも思っていた。


 統合戦線は、今新たなロボ(ビッグマン)を手に入れた。

 その修復は急務である。

 なんとしても、ジェマナイが増援を送ってくる前に対処を完了させなくてはならない。

 鹵獲したヴェガⅡには、コックピット・ユニットが欠けているが、技術部の話では、プライムローズ用に建造してあった予備のコックピット・ユニットがそのまま使えるという。

 それだけは、幸運だった。

 ボワテ大佐は、さっそく技術部に話を通す。

 そんな書類仕事が、彼の前にも山積みになっていた。


 シエスタは、ボワテ大佐の前に立って言う。

「シエスタ・アレーテ中尉、帰還しました」

「ご苦労だった……」

「どうしたのですか? 蒼い顔をして」

「鹵獲したロボに乗せるパイロットのことだ……」

「ああ」

 シエスタは、心のなかでポンと手を打つ。


 噂では、3体のロボが鹵獲できたという。

 3人ものパイロットを探すのは、さぞかし大変だろう。

 そのまま伝えた。

「3人もですからね?」

「いや、1人だ……」

「?」

「鹵獲した敵ビッグマンのうち、使えるのは1体だけだそうだ。これから、そのパイロットを探す」

「なるほど……で、誰に?」

「フィオリヒト少尉を当てたいと思っている」

「また、ネオスですか……」

 シエスタは、眉根を寄せる。

 シエスタは、今日の戦線にも参加したプライムローズのパイロットがダレンザグ中尉だということを知っていた。

 彼女は、反ネオス主義者ではない。

 しかし、ネオスのAI脳は常にハッキングされる危険性をはらんでいる。

 とすると、ロボのパイロットをすべてネオスにするのは、危険なのではないかと思ってしまうのである。


「仕方がない。ネオス以上に優秀なパイロットは君くらいだが、君をイングレスαの部隊からは外せない」

「わたしも、イングレスαのパイロットから離れるのは嫌です。それに、ロボなんて操縦できない……」

「だからこそ、ネオスを当てる必要があるが、フィオリヒト少尉はイングレス部隊でも欠かせない存在だから、困っている」

「上がせかすのですね?」

「その通りだ」

「なんだか、胃の具合が軽くなりました。わたし以上に大佐が頭痛の種をお持ちなのであれば……」

「笑いごとではない。ライジングアースはチーム・アマリの直下に所属させていたが、今後は管轄が移る」

 それは、聞いていなかったことだ。

 シエスタは、ちょっと疑問を感じて尋ねる。

「一体、どこに? まさか空軍の第一大隊直下になるんじゃないでしょうね?」

「君の予想通りだ。ライジングアース、プライムローズ、今回鹵獲したヴェガⅡは、空軍第一大隊の特別編成チームとして独自の作戦行動を行うことになる。わたしの管理下から外れるわけだ……うぬぼれるわけではないが、それが本当に正しいのか、わたしは疑問を感じている」

「わたしもそう感じます……ロボの部隊はイングレスαやエル・グレコと連携してこそ、真価を発揮できるのでは?」

 シエスタの考えはもっともだった。

(ならば、ユーランディア少尉はどうなるのだろう?)

 という思いもある。


「実は、きな臭い噂がある。上は、ロボのAIブレインにNooSを組み込もうとしている、と」

 シエスタは、暗い表情になった。

 現況、自分たち戦闘機部隊すら、NooSの不確実性に翻弄されているのである。

 しかも、ロボまでがNooSによる制御となったとしたら……

「NooSは、信用できるのですか?」

 シエスタは尋ねた。

「分からん。が、わたし自身はNooSを信用していない。NooSはオバデレ准将の肝いりなのだが……」

「海軍のOSにもNooSが導入されたと聞きます」

「ああ。このNooSの拡張には、どうやら統合戦線の技術革新省が関わっているらしいのだ。その官僚の1人が、猛烈にNooSの導入を進めている、と」

「不快ですね」

「不快だ」


 官僚は、いつでも一歩引いた立場でしか現況を見ない。

 政治家と同じだ。

 我々現場に属する人間は、理念のために戦っているのではない、現状のために戦っているのだ。

 ──という思いが、シエスタにもボワテにもある。

 普段は衝突しがちな2人だが、この場ではそれぞれ同じ考えを抱いていた。

 統合軍のシステムがNooSという一OSに飲み込まれていく……これでは、ジェマナイと同じではないかと。

 しかし、この肝心の官僚について、ダグラス・ボワテはどんなに調べてもはっきりとこの人物だ、という確証を得られないでいた。

 NooSというOS同様、謎に包まれていたのである。

(表向きには、オバデレ准将と亡命貴族であるアルフレッド・ウィンザーが主導しているということになっているが……)

 ボワテ大佐もまた、統合戦線の闇を感じ取っていた。


「もう良い。自室に帰って休みたまえ」

 とうとう、ボワテ大佐はそんな言葉を投げかけてきた。

 シエスタは、卒然とする。

「大佐も……徹夜なのでは?」

「ああ。君同様、昨日から眠っていない。しかし、統合軍にとってはわたしの損失よりも、君の損失のほうが重大なのだ」

 ボワテ大佐は言う。

 シエスタは、胸が熱くなるのを感じた。

 無言のまま、敬礼する。


 そのまま、踵を返した。

 朝の光をまぶしく感じながら……

統合戦線は、ライジングアース、プライムローズ、ヴェガⅡと3体のロボを手に入れました。

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