表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
地上戦機ライジングアース  作者: クマコとアイ
第六部

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

109/139

109.バグダッド攻防戦(12)

ジェマナイの作戦会議です。

 それより少し前……

 ジェマナイの実質的なリーダーであるリュシアスは、味方の子ルーチンにたいしてジェマナイのAIネットを介した通信を送っていた。

 作戦会議……というものは、ジェマナイではめったに開かれない。

 それぞれの子ルーチンは、ジェマナイの出力した演算結果に基づいた行動を取る。

 それは、ジェマナイのAIネットを介して行われ、命令系統もそこで一貫したものとなる。

 すべての管轄権は統合知性体であるジェマナイが握っているのだ。


 だが、今回は違った。

 子ルーチンそれぞれは、独自の思考も持っている。

 そこで、ジェマナイとの齟齬が生じることもしばしばなのである。

 そのために、リュシアスはAIネットを介した通信で、現在の戦況とこれからの作戦について確認した。


「ヴォルガ二将。敵の現在の戦況について報告してほしい。ライジングアースはもう到着したのだったな?」

「は。ライジングアースは、今日の深更にバグダッドに到着した模様。その航路については、サテライト群がクラッキングされていたため、正確には把握できていませんでした」

 ヴォルガは、柄にもなくかしこまって答える。

 この作戦が、ジェマナイにとって重要なものだということは、彼もよく理解している。

「過程については良い。重要なのは、今何がどうなっているのかだ。ライジングアースは敵戦力として機能しているのだな?」

「機能しています。ジェマナイによる分析では、囮として独自行動を取ってくる可能性が高いと」

「それは、わたしも認識していた。敵は人間だ、AIではない。とすると、作戦は忠実に実行される可能性が高い」

 と、リュシアス。

「あなたのおっしゃる通りですね。一将。敵は我々の拠点に攻撃をしかけてくるでしょう」

「15体のビッグマンを相手にか?」

 と、怪訝になってリュシアスは尋ねる。

「それもあり得ます。あのユーマナイズという武器があれば」

「しかし、こちらも量子かく乱フィールド発生装置などで対抗策は講じている。それが敵側に漏れている可能性は?」

「漏れていなくても、即座に認識されるでしょう。こちらの防御手段も一時的なものです」

「そうだな。ライジングアース単体の戦力がどれくらいか、ということが問題だ」

「戦力としても、ライジングアースは手ごわいです。さすがに……」

「ああ。パイロットとコパイロットも優秀なようだ。それは南極の件でわたしも認識している」

「それでは、ライジングアースの激劇には精鋭を向かわせるべきかと思います」

「それで良い。貴官とセラフィアで対処してほしい。わかったか?」

「了解しました。健闘を祈りましょう」

 それで、リュシアスとヴォルガとの対話は終わる。


 次は、セラフィアである。

「セラフィア、例の声はまだ聞こえるのか? 作戦に支障が出るようなら、後方支援に回すが?」

 リュシアスが尋ねる。

「いいえ、まだ……」

「なら良い。お前には、ヴォルガと合流してもらう。無人機もつける」

「ヴォルガ二将とですか? わたしは……」

「不満か? ヴォルガの援護をするなどと?」

「いいえ、そんなことはありません」

 セラフィアが答えると、ヴォルガはひゅーっと口笛を吹いた。

 単騎で行くのがヴォルガのいつものやり方だとは言え、ライジングアースが相手なら援軍はいたほうが助かる。

 ヴォルガは勇猛ではあっても無謀ではないのである。

「よろしく、セラフィア三将」

 と、礼儀正しく言った。

 セラフィアは無言でうなずいた。


 ところで、今この瞬間リュシアスは声しか聞こえていない。

「パスタヤーンストヴァ」と仮に名付けたその駐屯地で、ヴォルガ以下の将校や士官たちは円形の大きなテーブルを囲んでいる。

 そのテーブルの中央には、MVによるバグダッドとその周辺の地図が映し出されていた。


 そこに向かって、ヴォルガは小さな3つの石を取り出して投げた。

 それが、ヴォルガ、セラフィア、ピエタの布陣する地点である。

 それぞれ、2マイルの間隔をとった三角形になっている。

 そして、もう1つの石をその真ん中に投げ込む。

 それが、ライジングアースを誘い込むべき地点である。


 ライジングアースの誘導には無人機を使う。

 どうやら、ライジングアースは単騎で行動するらしい、と工作員からの連絡が入っていた。

 イングレスαの援軍を頼んだ場合、ユーマナイズが使えない、という理由からだろう。

 とすると、ライジングアースはユーマナイズを使ってくる可能性が高い。


 その攻撃方法を「ユーマナイズ」と呼称していることは、バグダッドへと乗り込む直前にわかった。

 英語の綴りにすれば、「HYU-MANIZE」である。

 この攻撃方法は、統合戦線の市民たちにはすでに知れ渡っているが、恐れている者たちも存在する。

 現に、昨日のアレキサンドリアでの戦いでは、市民の間にテロルが起こったらしい。

 まるで、ライジングアースは小さなジェマナイだとセラフィアは思った。

 ヴォルガは、無言で考えこむ。

 饒舌ではないヴォルガは珍しかった。

 しばらく沈黙した後、ヴォルガは言った。

「HYUってなんだろうね?」

 セラフィアは、何かに触れたように押し黙っていた。


 ……


 ヴォルガ、セラフィア、ピエタの3人のビッグマンはそれぞれ徒歩で騎行した。

 ビッグマンの足が大地を踏みしめるたびに、砂塵が舞い上がる。

 ヴォルグラスのメインカメラ上部には、自動的に超音波で異物を洗い去る装置が取り付けられていた。

 それが、ヴォルグラスの角のように見える。

「今度は僕が敵の視界を奪う作戦に出てみようかね?」

 ヴォルガは、コックピットのなかでつぶやいた。

 すっかりくつろいでいるのは、戦闘の高揚感の逆の表れのようだった。


 セラフィアから通信が入る。

「ヴォルガ二将、リュシアス様からうかがったのですが……」

「なんだ?」

 と、ヴォルガ。

「二将は、この作戦が終わったら一将に昇格するそうです」

「ふうん。僕が一将にね? で、それがどうした?」

「リュシアス様は、この作戦を必ず成功させるように、とあなたへのお達しかと思われます」

「なるほど。作戦会議では気をつかって言わなかったのか、あるいは忘れていたのか……」

「ライジングアースは強敵です」

 セラフィアは、プライムローズとブラックスワーンダーでライジングアースと戦った2回の記憶を思い出していた。

 ために、強い口調で言う。

(ヴォルガ二将はまだあの光を浴びていない……あれがどこまで作用するものなのか)

 セラフィアは、プライムローズのコックピットのなかで不安げに考えこんだ。

 すると、

「ま、なんとかなるさね」

 ヴォルガが軽く答えてきたのだった。

 セラフィアは、かるく眉根を寄せる。

 ヴォルガは、突然ふふふと笑った。

 セラフィアの見ているモニタに、そのヴォルガの笑みが映っている。

「僕もね、リュシアス一将から聞いているんだ。今回はライジングアースは鹵獲しなくても良いと。……破壊して良いってね?」

 セラフィアははっとした。

 それは、パイロットを殺すということだ。

 自分もあの時、南極で彼らを殺そうとした。

 不穏な考えが、セラフィアの胸をよぎった。

 そして、そのことをヴォルガに伝えることはしなかった。

 ビッグマンの足音が荒野に響く。

 間もなく作戦開始である。

ヴォルガが悩んでいます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ