第二十八話 蓋世之才
裏を引いてる奴等を引き摺り出す為には、まずはこの小競り合いを何としでも止め無いといけない。
「とにかく情報が欲しいわね。会議って何時から?」
「16時から。それから1時間くらいを予定してる。」
フェリは自分が身につけている腕時計を見る。
「…2時間後ね。カイ、知ってる情報は全部言った?」
「あぁ」
「ありがとう。えーと、それじゃあ、ヴァイゼ様1時間後で大丈夫ですか?それまでに資料纏めておきます。」
「うん、大丈夫。私の方でも準備しておくよ。」
「よろしくお願いします。」
右手を軽く振る彼の後ろ姿を見送りながら、隣に立っているカイを見る。カイもこちらを見ていたようで「やっぱり凄いなお前は」と軽く苦笑していた。
「そんな事はないわよ。武力の代わりに知力を手に入れた才女らしいから、私は。」
「学生時代の時の悪口か。気にするなって言っただろ。フェリーは十分強いぜ。武力が全てじゃない。」
「わかってるわよ。口喧嘩では負けなしよ。」
「そう言えばそうだった。あれは相手が可哀想だったな。今でも思い出しただけでも同情を禁じ得無い。」
「あれは喧嘩ふっかけきたアイツ等が悪い」と呟くと「それはそうだな」と軽く笑っていた。…学生時代の時もそうだったな。カイはいつもこっち側に居てくれた。
「親友、ありがとうね。」
「何だよ急に。」
「まぁ、偶然だろうけど。それでも、この場に居て一緒に戦ってくれて、、正直心強い。」
「…本当、偶にマジでフェリーって男前だよな。」
「ルイもカイも何なのよ。寄ってたかって。」
ルイにも前に似たようなことを言われたな、と思い思わず反論してしまった。可愛いと思われたい訳じゃないけど、何だか複雑な心境になる。
「ルイも言ってたのか。そうか。…フェリ。しっかり戦争の芽叩き潰して、あの2人の門出精一杯祝おうぜ。」
「当たり前よ。こっちは鼻からそのつもり。」
はは、と笑うカイと拳をコツンとぶつけ合った。
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さてと。後ろに簡単に纏め上げていた髪を再度結び直して気合いを入れ直す。
「フェリシテ様、入ってもよろしいでしょうか。」
「大丈夫。入って。」
ノック音と共に入ってきたのは、男の中では割と小柄な眼鏡を掛けた男が入って来た。
「レオンさん、久しぶりです。」
「こちらこそ、久しぶりです。こちらが頼まれていた今までの記録です。」
「ありがとうございます。…今まですいません。」
「いえ、そんな。…正直お力になれていたのか。」
わかりません、と呟く彼を見ながら申し訳ないと感じる。盤上ゲームの使い手だからと言って、本当の戦いで通用するかなんてやってみないとわからないというのが事実だ。…でも、彼は私達が来るまでに死者を出していない。これは一重に彼の尽力もあるのだろう。
「これは、嵐戦を参考にしてたんですか?」
「…はい。元々はあちらは食糧物資が少ないです。そういう意味では、長期になればこっちが有利になります。あっちもそれがわかってますから、奇襲をいつ使うのかあちらのタイミングになると思いまして…」
「なるほど。ありがとうございます。」
記録を見ながら、質問していく。嵐戦というのは数十年前に起きていた戦争で実際に使われていた奇襲作戦の一つだ。私達の国の作戦じゃないしろ、よく勉強し理解して作戦に落とし込んでいるのがわかる。
「レオンさん、よく今までやってくれました。一緒にあともう一踏ん張り頑張りましょ。」
「…は、はい!」
レオンさんの話と資料を元に、情報を整理する。
つまりはこうだ。
小競り合いはいつもの同じような時期に始まった。適当にあしらうつもりで、私達の騎士団は向かい合ったがそこでいつも違うことに気がつく。相手が農民ではなく農民に扮した同業者であると。…まずの疑問の一つはここね。奇襲するなら、私ならここでやる。そもそもそんな物資がある訳ではないのに、何故こんな小競り合いをしたのか。長期戦でも戦える算段が付いているのか。
…これは長期戦にわざと持ち込ませたいのか。
相手の手にわざわざ乗る必要もない。国が裏で手を回しているのはわかってる。スノープリアの狙いは何。今の所は互いの力が均衡しており、お互いに死傷者はいない。…わざわざ騎士を出してくるメリットは何だろう。正直、ハートスノは我が国の北部にあり、食糧が沢山ある訳ではない。軍事面では要ではあるけど……軍事的に要?北部はダンジョンが多く保有されており、山岳地帯のもあり、他の地域の騎士団よりも軍事面では秀でている部分が多い。また、冒険者と技術者の街という面もあり、優秀な技術者は北部出の傾向が強い。
ま、待ってまさか。
「北部開発…鈴ノ木…ナラジア…」
北部開発は東部貴族達の肝煎りで始まった事業だ。元々ダンジョンは危険な面はあるものの、そこで取られる宝石や薬草などはどれも質が高く、我が国の経済の主軸の一つでもある。それが安定して供給されるようになれば国としても、多大な利益を得られるようになる。だからこそ、国としても支援を惜しま無かったけど。
「どうしたですか?フェリシテ様?」
「…インテッリジェンテ潰し…」
「何を言っているですか?」
今、北部をスノープリアに抑えられてとして、国としてはそれなりに打撃を受ける。しかし、それは奪え返す算段が取れ無いことも無い。だけど…それは北部以外無事な場合だ。東部を抑えられていたら…私達は食糧方法を断たれることになる。同時に北部開発の失敗を意味する。確実に内政が荒れることは火を見るより明らかだ。
スノープリアとナラジアは手を組んで、インテッリジェンテ王国を潰すつもりだ。
そう見て間違えない。しかも、この前感じだと国の反乱分子の貴族達と接触を図られている。この小競り合いはアイツ等にとっては、序章に過ぎなかったと。そして、私のスカーレット地方での誘拐&暗殺未遂は一石投じようとした?…状況は思った以上に悪い。うんん、それよりもこの小競り合いは短期で収束させなければ。
「作戦変更よ。」
「え?」
「私のば…お兄様を呼んできてくれない?あと、カイオリスも。3日でこの小競り合い終わらせるわよ。」
「へ?3日?」
レオンの情けない声が執務室にこだました。レオンが驚くのも無理はない。もうこの小競り合いが始まってから3ヶ月も立っているのだから。
「誰も死なせ無いで終わらせる。」
この馬鹿げた企ての出鼻挫いてやるわ。




