第7鑑定 殺戮天使
「これでよし。と……」
ゼノがアイリスの取れた目をはめ込んだ。
「ありがとうございますお父様」
キョロキョロと辺りを見渡しながらアイリスがゼノに質問する。
「お父様は、私たちを修理していますが、それは楽しいのですか?」
「楽しい? どうだろ? 考えたことないな……」
ふーむ。とゼノが考え込むと、アイリスが続けた。
「お父様はいつも笑顔で私たち修理します」
「そう? 考えたこともなかった」
「じゃあきっと楽しいのかな?」
「きっと?」
アイリスにはその表現が引っかかったようだ。
「自覚してないから分からないし、それでも笑顔で修理してたなら多分楽しいんだと思うよ?」
「自分のことなのに分からないのですか?」
「そうだね。だって、何でか分からないのに泣く時や何でか分からないのに幸せを感じることってあるでしょ?」
「私にはそのようなことはありません」
感情がないので。と最後に付け足した。
「僕から見たらアイリスにも感情はあるけどなー」
「そんなものを持ち合わせるのは非効率的です」
「ねぇねぇマスター!」
ゼノが何か言おうとすると、ミラーが割り込んできた。
「ん?」
「シャルロットの腕がまた取れたんだよ! ほんとボロ人形だよね~」
ミラーがケタケタ笑う。
「そんなこと言わないのミラー」
ゼノが窘めるが、言われた当の本人は気にせず取れた腕を縫いつけていた。
「ちょっとシャルロット! 君を治すのは僕の役目だって言ってるだろ?」
そう言ってゼノがシャルロットの腕を引っ張ると、取れていない方の腕も取れてしまった。
「お父様。二度手間です」
「ごめん! 痛かったよね? すぐに治すね。あれ? 昨日よりも中の綿の量減ってない?」
「ボクは痛みを感じないよ? けど……」
シャルロットがゼノに迫る。
「ボクへの傷はボクへの愛情だよね?」
シャルロットがゼノを抱きしめようとすると、奥からノワールが叫び出した。
「貴様! また我を放っておくか!」
「あぁごめんノワール。今日研ぐ約束してたね。シャルロットを治したらすぐ行くね」
ゼノがシャルロットの腕を縫い始める。
「痛む? 中の綿少し増やそうか」
シャルロットはゼノの膝の腕で寝てしまった。
●
「報告します。古代の遺産を扱える者の行方が分からなくなりました」
ギルド長が素直に報告をする。
「何としても探し出せ」
きっぱりと国王が告げる。
「しかし、新たな能力者を探した方が速いかと」
「ならん。ゼノとやら以外は認めぬ。いつまでに見つかる?」
有無を言わさない言い方でギルド長に迫る。
「この広い世界で、行方を探すとなると……ひと月やふた月では見つからないかと……」
「では――」
国王がギルド長を睨む。
「1週間とする」
これは、国王からギルド長への死刑宣告だ。
翌週。ギルド長が変わったという情報が王都中に出回ったが、大きな騒ぎにはならなかった。
効率主義者の元ギルド長、アッシュは敵対するギルドへと向かった。
その心は復讐心に満ちていた……
●
「ちょっとみんなにも手伝ってほしいことがあるんだけどいいかな?」
ゼノが言うと、いつも通り廃屋の中が爆発した。
「ちょっと落ち着いて」
「実はこの前買い物をして野菜の苗を買ったんだ。それの芽が出てきたんだ」
庭に出てみんなに見せる。
「ルミエにはこの野菜のお世話をお願いしたい。これからどんどん作物を増やす予定なんだけど、頼めるかな?」
「もちろんでございますわ」
「そしたらボクが料理してあげるよ」
「シャルロット! あんた料理なんかできるのかい? この中で一番料理が似合わないけど?」
「ミラー。そんなこと言っちゃダメだよ。シャルロットが作る料理って本当に美味しいんだから」
「これが胃袋を掴むというやつですか。以前にルミエが言っていました」
「我は何をすればいい!」
ノワールが張り切る。
「ノワールとアイリスには、家の中をもっと快適に住めるように変えていって欲しいんだ。掃除も頼むよ?」
「オレはオレは?」
ミラーがピョンピョン飛び跳ねる。
「ミラーは、家の修理に必要な材料を僕と一緒に取りに行ってほしい」
「よっしゃ! マスターと一緒だ!」
「それは認められません」
アイリスがズイっと前に進み出た。
「必要な材料はみんなで取りに行きましょう」
「それこそ時間の無駄になっちゃわない?」
「そうだよ。いっつも効率効率って言ってるんだから」
ニタニタミラーが言うと、今度はルミエが口を挟んだ。
「家族とは。みんなで一緒にいることだと思いますが?」
「我もみんなで行くのに賛成だ」
「ボクもちゃんとずっと持ってて欲しいなー」
シャルロットが寂しそうな表情をする。
「もぉー! 分かったよ。必要な物はみんなで探しに行こう! ミラー。廃材でも何でもいいから木の板ある程度あるかな?」
「ちぇ。見つけるからちゃんとご褒美ちょうだいよ?」
ミラーがプリプリしながら木の板の場所を映しだした。
●
「今までの功績を称え、貴殿ユミーを新たなギルド長へと任命する!」
大々的な任命式を終えた後、ユミーはただ1人大広間に内内に呼ばれた。
「新たなるギルド長よ。貴殿の任務は2つだけだ。1つ目は最重要任務にして早急に解決すべき事案、先日ダンジョンより入手した太古の遺産。あれの即起動と操作方法の解読だ」
国王の付き人が人差し指を立てる。
「そして2つ目」
中指を立てて数字の2を作る。
「新たなる太古の遺産の入手だ。これ以外のことは全て小事であると心得よ」
「は。お任せください」
「いいな? 肝に銘じておけ。結果が全てだ」
付き人は冷たく言い放ち、ユミーと呼ばれた新たなギルド長を下がらせた。
「国王様……どう思いますか?」
「長年見つからなかった太古の遺産が見つかり、今まで不要だと思われていた能力が重要視される時代が来るだろう」
国王は1息つく。
「我が国が太古の遺産を保有していることは他の国にも知られているはず。それを扱えないとなれば何の脅威にもならぬ。とにかく急がせよ。見つけただけでは意味がない!」
「あの忌々しい生意気な魔道具を使いますか?」
「殺戮天使か……」




