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第5鑑定 ギルト長からの命令

「おい小僧。確か名をゼノと言ったな?」

 アイリスから弁当を受け取ったゼノは、偶然にも自身を追放したギルド長と遭遇した。

「あ。はい……」

「我ながら非効率的なことと思っていたが、どうやらこの俺の才能が今回は役に立ったようだ」

 ギルド長は何やらわけのわからないことを言っている。

「ギルド長。今日もいつものお弁当ですか?」

「やぁエリス。君はいつもとてもいい仕事をしている。言葉は少ないしそれでいて最上の食糧を提供してくれる。このギルドに、いや王都にあるべき存在だ」

「ありがとうございます。ゼノに何か用ですか?」

 エリスがギルド長に弁当を渡した後に、ゼノに近寄る。



 ●


「何この女! マスターに近すぎない?」

 その様子を見てミラーがキーキー言う。

「だから言っておろうが。我がこの女子を斬ってくると!」

 ブンブン剣先をノワールが振り回す。

「それはお父様が最も悲しむ行為だと推測されます」

「なぜだ!」

「理由は開示されません。不明です」

「それが人間ってものなんだよー」

 ミラーがさも知ったかのように言う。

「私にはわかりますわ」

 ルミエがみんなにお茶を出しながら言う。

「我にも分かるように説明せい!」

「ゼノ様は私たちのことが大好きです。そしてその大好きな気持ちがこの人間様に対してもあるのです」

「つまりオレたちへの気持ちとこの女への気持ちは一緒ってこと?」

 ミラーがキーキー言う。

「ふん! 我はそんなことどうでもいいがな」

 そう言いながらブツブツ、そうか。我のことを好いているのか。などと呟いている。


 ●


「貴様の力は俺の記憶が間違いなければ履歴鑑定。道具の声を聞けるとかなんとか」

「あ。はい……」

「ふん! 相変わらず歯切れの悪い返事よ」

 ギルド長が軽蔑した目でゼノを見る。

「あの。用が済みましたら、他のお客様の迷惑になりますので」

「今すぐ城に来い」

 それだけ言うとギルド長はエリスの店を後にした。

「ゼノ?……」

「ぼ……僕には……待っている家族がいるから……」

「ゼノは立派になったね。みんなからどんなに罵られようとも毅然と自分の意思を押し通してた」

「僕はそんな……何も言えないだけで……」

「凄いなぁ。私はただお弁当を売ってるだけだったのに、ゼノはたくさんの魔道具を修理してその魔道具を家族にして、ちゃんと自分の道を突き進んでるんだもんね」

「え……エリス……ちょっと待って……僕は」

「私には分かってたよ。ゼノはこの王都に絶対に必要な力を持ってて、ゼノは誰よりも強いって」

 そう言うとエリスはにっこりと笑う。

「ゼノ。ここから逃げて。ここにいたらゼノは使われるだけ。そんなの私が許さない! 今まで散々ゼノのことバカにしておきながら必要になったら手のひらを返すように!」

 エリスはゼノを店から追い出し、そのまま王都から追い出した。



 ●


「何っっっなの! あの女!」

 いつも以上にミラーが甲高い声をあげる。

「斬るか?」

「それはダメだと何度言えば分かるのですか?」

 ルミエがノワールをペシリと叩く。

「不可解。先ほどからここのパーツが熱を帯びています」

 アイリスがここ。と言いながら左胸を指す。

「あらあら。それは大分負荷がかかっていますね。少しお休みになられては?」

 ルミエがいそいそと布団を敷き始めた。

「拒否。魔導人形は寝ない」

「んもう。そんなこと言わないでちゃんと休息を取ってください。ショートしてしまいますよ?」

「ショートは困るので少しだけシステムを軽くします」

「そんなことできるんだ? 魔導人形って便利だねー」

 ミラーがケタケタ言うと、アイリスはムッとして反論した。

「言いがかり。便利とはなんですか。私を道具のように言うのはやめてください」

「え?」

「……何でもありません。忘れてください」

「アイリスちゃんは人間様になりたいのね」

 そっとルミエがアイリスに毛布をかける。

「否定。魔導人形は魔導人形です。毛布も不要です。温度を感じないので」

「そういうことじゃないのよ? アイリスちゃん。人間様は寝る時に毛布を使うわ。寝る時に毛布を使えばゼノ様の気持ちが分かるのよ?」

「ほう? それならば我にも1つもうふとやらを寄こすがよい」

 ルミエの勘違い情報をノワールは鵜呑みにして、刀身を毛布でぐるぐる巻きにしていた。


 ●


「わっ。どうしたのノワール!」

 帰ってきたゼノの第一声がそれだ。

「どうもしておらん」

 恥ずかしながらそそくさと毛布を取るノワール。

「どこか痛むの?」

 ノワールを手に取り、まじまじと見る。

「どこも異変はなさそうだけど?」

「どこも異変はないだと? よく見ろこの節穴が!」

「え? ごめん。気づけてないところがあるんだね。あ! ここ。昨日よりも数ミリだけ薄くなってる。ここでしょ? ねぇ! 合ってる?」

「ふん! 正解を簡単に聞けると思ったら大間違いだ。自分で正解を導き出してこそ、誇り高き魔剣の我を扱えるようになるというものよ」

「そっかぁー。ノワールはここが痛かったんだね。ごめんよ気づいてあげれなくて」

 そう言いながらゼノがノワールの刃を触る。

「ついでにノワールの頭も直してやってくれよ」

 その様子を見て、ミラーがケタケタと笑う。

「やぁミラー。ちょっと見たいものがあるんだけどいいかな?」

「いいけど、なに?」

「えっと。王都にいるエリスって女の子」

「え?」

 その言葉を聞いた瞬間、アイリスが飛び起きた。

「まぁ」

 ガシャンという大きな音と共にルミエは湯呑を落とした。

「貴様!」

 ルミエはゼノを斬ろうとしてゼノに簡単に制止させられている。

「へっへー。ふーん。そっかそっかー。あの女ねー。ふーん。別にいいよ? でも何で?」

「え? だって気になるじゃん」


「ふっふっふ。我が誇り高き魔剣の錆としてやろうあの女子」

「僕はマスターの命令には逆らえない。マスターが見たいと思う物は何でも映す。でも……こんなのあんまりだよ!」

「ゼノ様。言葉の撤回を求めますわ」

「お父様は私たちを見捨てるのですか?」

「え? 待ってよ。見捨てないよ? 実は君たちには言ってなかったけど、王都で僕のことを心配してくれてる幼なじみがいるんだ。そして僕はその幼なじみの家で城に呼び出されたのにそれを無視して来ちゃったから、その後どうなったか気になって」



「なぁーんだよ! それを早くいいなよ!」

「前言を撤回します。そして謝罪します」

 ミラーが安堵の息を吐き、アイリスは頭を下げた。

「新しいお湯呑を探してきますね」

「ふん! 我はそんなことだろうと思っておったわい!」


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 ミラーがエリスを映すと、エリスが王都へと連行されているところだった。


「行かなきゃ!」


 ゼノが身支度をすると、他の魔道具たちが隣に立った。


「今度は私たちもいきます」

 アイリスが強く言い、家族全員で王都へと乗り込むことを決意した。

【読者の皆様へ】

ここまでお読みいただきありがとうございます!

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