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エピローグ

 静かな朝だった。

 焼け焦げた匂いだけが鼻に残り、他には何もない。

「ゼノ様が言っていた、村を作るというのには程遠いですね」

 背中を伸ばしながら、顔中泥まみれのゼノにルミエが言う。

「うん。でも絶対やり遂げてみせるよ。誰も失わないために」

「お父様。口ばかりでなく手も動かしてください」

 その背後からアイリスが声をかけるが、その声には力がこもっていなかった。

「アイリス! 何度も言ってるだろ?」

 ゼノが慌ててアイリスの方へ駆け寄る。

「君は足じゃなくてタイヤなんだから、このデコボコしてて欠片だらけの場所は歩けないんだよ」

「不可解です。お父様が私の足を元通りに治してくれたはずです」

「だからぁー! まだ部品が足りないんだって!」

「お父様は、私よりも家を治す方を優先し、私よりも他の家族を治すことを優先しています。順番が可笑しいと私は思うのですが?」

「いや……アイリス? それはさ、その時の成り行きとかあるじゃん?」

「成り行き任せは非効率です。説明にもなっていません」

「まーたやってるよ。アイリスのヤキモチ」

 ルミエの隣でミラーが笑う。

「最近のアイリスちゃんは、ゼノ様を独占しようとする気持ちが芽生えていますね」

 ルミエが微笑むと、アッシュが大きく咳払いした。

「わ。やば」

 ミラーとルミエが耳を塞いだ瞬間――

「いつまで遊んどるんだ貴様ら!」

 アッシュの怒号と共に、ゼノとアイリスの動きが止まった。

 まるで、強いモンスターの咆哮にでもあったかのように。


「相変わらずですね」

 白い羽が数枚、声と共に落ちてくる。

「セラ!」

 ゼノが目を輝かせる。

「だいぶ良くなったみたいだね!」

「こちらは体を治して頂いたお礼でございます」

 セラが深々とお辞儀をして、ネジや木の板などを渡してくる。

「鑑定士様の村。できるのを心より待ち望んでおります」

「セラも一緒に住もうよ!」

「私は持ち主に逆らいましたが、まだ私の持ち主はあの愚王なので」

 ペコリと頭を下げて、セラは飛び立ってしまった。

「ふん。あやつも相変わらずではないか」

 アッシュがゼノの隣にくる。

「セラはもう平気そうですね」


「おぉーい! こっちを手伝わぬか!」

 ノワールがやや遠くから声をかける。

「ちょっとノワール! なんでまた自分を使って解体しようとしているの!」

「誇り高き魔剣に不可能はない!」

「さっきから切らずに叩き壊してるだけだけどね」

 ピクトがケラケラ笑い、その隣ではシャルロットが腹を抱えて爆笑していた。

 ノワールの刀身には、何度も切ろうと試したのであろう、木の破片が付着していた。

 ノワールが切ろうとしていた、燃えてしまった木の板は粉々に叩き壊されていた。


 みんなのことを見て、ゼノが微笑む。

 その手には、ピクトが普通のカメラ機能として現像してくれた家族写真が握られていた。

 中には、ミルクもルルもいた。

「一度見た物をあたしは絶対に忘れないんだ!」

 そう言って落ち込むゼノに、無理やり家族写真を渡してきたのは数日前のことだ。

 ピクトは頭でイメージした映像を写真として残せるらしい。


 もう大丈夫。


 僕はみんなに心を治してもらったから――

【読者の皆様へ】

ここまでお読みいただきありがとうございます!

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