↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
真夜とトーラス  作者: 白糸モモ
3章 バーム食う編
41/41

38話 バームクーヘンの箱

 真昼は日奈を家から連れ出した。それから日奈の手を握りながら、ただ歩いていく。

 日奈は真昼に手を引かれながら、ただ見つめるだけだ。すべては真昼に委ねればいい、そう思いながら。

 

「ねぇ、日奈ちゃん。どこ行きたい?」

「真昼さんが、決めて」

「うーん。それじゃ、答えになってないよ」


 日奈は虚ろな目をして、ただ真昼に手を引かれるだけだった。

 そんな日奈の顔を真昼は見ないまま、笑顔を絶やさない。


「そーだねー。海とか見たいね」

「こんな時間、暗くて何も見えないよ」

「じゃあ私の家行く?」

「え?」


 日奈は思わず驚いた。

 真昼の家に行くということは、真昼の妹、つまりは真夜がいるということだった。

 日奈はさっき真夜と一言も離さずに去ってしまったから、余計会うのが気まずいと思っていた。


「真昼さんの家って、真夜ちゃんがいるから」

「うん? 真夜ちゃんと何かあったの?」

「いや、何でもない……」

「まあ、私は真夜と今会うの、気まずいんだけどね」

「え、真昼さんも……」

「うん。日奈連れ出すと真夜の前で宣言しちゃって。そんでもって家に置いていっちゃって」

「何やってるんですか」


 日奈はジト目で言った。


「でもね。日奈ちゃんも連れてこれたし、これで目的達成! ってことで、各々気まずいかもだけど、これからは三人一緒ってことでここは丸く収めましょ」

「いいのかな……」


 日奈は少し疑問に思いつつも真昼について行くことにした。


*


「あれ、真夜ちゃん、いない……」


 真昼は玄関のドアを開き、靴がないことを確認してから、そう呟いた。

 日奈はそれを聞き、少しホッとした自分、そんなホッとする自分に対しての嫌悪感が押し寄せた。

 自分はなんて最低な人間なんだと。

 そして真夜と会えなかったということ、それだけでさらに会うのが億劫になりつつあった。

 そんな感情に渦巻いてしまった日奈は、いつの間にか涙が頬を伝った。

 

「日奈ちゃん。大丈夫?」


 真昼はそう言いながら、日奈の頭を撫でた。


「大丈夫だから。日奈は何も考えなくていい……。あ、そうだ! 冷蔵庫に美味しいバームクーヘンあるからさ、一緒に食べよ!」

「うん……」


 日奈は涙を拭って、頷いた。


 真昼に案内されて、日奈はリビングのソファーに座った。

 日奈は真昼から渡されたバームクーヘンをモゴモゴと頬張っていた。

 そんな中、真昼は台所の戸棚からガサゴソと何か箱らしきものを取り出して、日奈の目の前にある机に置いた。


「真昼さん。これは……」

「これはね、開けてみる?」

「うん」


 日奈は箱を開けてみることにした。

 

「これって……」


 日奈は箱から手紙を取り出した。

 それから差出人の名前を読み上げた。


「七せま夜……」

「うん。これは、その……。妹のなんだよ」

「真夜ちゃんの……」

「うん。読んでみる?」

「いいの?」

「うん。いいよ」


 日奈は手紙を開いて黙読した。

 それから少し微笑んだ。


「真夜ちゃんって、元々海外住みだったんだ」

「そうだったのよ。真夜ちゃんと昔は離れ離れで、そうこの手紙が届いたのは、ちょうど日奈ちゃんと初めて会った頃」

「確かあれは……」


 日奈は言いかけながら、過去に思いを馳せていた。

 それは初めて真昼と会った日のことを。

 真昼はあの日、家から逃げ出して、日奈の実家にたどり着いたと。


「私は日奈ちゃんと会えて本当に嬉しい。だからさ日奈が幸せになる手伝いを私はしなくてはならない。そして日奈ちゃんに真夜ちゃんのことを、妹のことを託したいって思っているの」

「えっ、それってどういうこと?」

「私は最初から日奈ちゃんを拉致したり、監禁したりする気はなかった。ただ、日奈ちゃんにはほら、家族と一緒に暮らすことに抵抗があるんじゃいかなって」


 真昼が言う通り、日奈はあの家に帰ることが気まずくて居心地が悪かった。

 だからこそ、あのとき真昼が連れ出そうとしたとき、最初は驚いた。

 それでも真昼の言葉を聞き、すべて委ねてしまえばいいだなんて思ってしまっていった。

 そう、ほかのことがどうでもいいかのように。


「真昼さん。その、本当は私を連れ出して何をするつもりだったんですか?」

「えっと私はー」


 真昼は日奈に微笑みながら言った。


「私、言ったよね。今日は日奈ちゃんのこと、買うって」

「そんなことだけで」

「うん。そんなことだけで。それでいて、日奈ちゃんに対しての気持ちは変わらないよ。私は、日奈ちゃんのことが好き」

「えっ……」


 日奈は驚いていた。


「嘘じゃないよ。なんなら、今、ここで証明でもしてみる?」


 真昼はそう言いながら、日奈の顔に近づく。

 日奈は目を閉じた。


「なーんてね」


 真昼はそう言いながら、クスッと笑った。

 日奈はからかわれたと気づき、顔を赤くして恥ずかしそうに見つめた。


「か、からかわないでください……。ほんと、うにされるかと思っちゃって……」

「初心だねぇ~。日奈ちゃん」

「ば、ばかぁー!!」


 日奈は顔を赤くしたまま、叫んだ。


「ねぇ、日奈ちゃん」

「なんですか。もう」

「好き、ちゅ」


 真昼は日奈の頬にキスをした。

 日奈はポカーンとして、それからすぐにキスをされた頬を撫でた。


「へ、へ」

「動揺しすぎだって。私だって昔、真夜にやったことあるって、これくらい」

「そ、それでも、だ、だめでしゅ」


 日奈は動揺しながら舌を噛んだ。

 そんな日奈を見て真昼は微笑んでいた。


「ねぇ、やっぱ、今から海、見に行かない?」


 真昼はそう提案してきたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。