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真夜とトーラス  作者: 白糸モモ
2章ドーナツ・ロンド編
26/30

24話 日和

 時刻は6時ごろ。夕日が見える頃合。

 神社を出てからはキャナルシティという商業施設に入り、少し早めに夕食を取ることにした。そこでは5階まで上がり、一軒のラーメン屋に入ることにした。


 キャナルシティ5階にはラーメンスタジアムといった場所がある。ここでは様々なラーメン店が並んでおり、地元民、ラーメン好きに愛される場所である。昨年9月に一時休業になったが、4月からまたリニューアルオープンされるそうだ。また行きたいなあ。引っ越してから、なぜ福岡は再開する店が多いんだ……。


 日奈と真昼はラーメン屋の入口で食券機にてラーメンを選んでいた。


「んー。私はこれにしようかな?」


 真昼はそう言いながら、豚骨ラーメンとチャーハンセットを選ぶ。


「えっと、私は……」


 日奈は数分、食券機のタッチパネルをスクロールしながら悩み、醤油らーめんにした。


「日奈ちゃん。私、奢るよ」

「いや、良いですよ。私、払いますから」

「いいって。それに私言ったでしょ。今日一日、私が日奈ちゃん買うって」

「わ、私を買うって人前で言わないでください!」

「あはは。まあまあ。でも、私がお金入れるよ」

「はい……」


 日奈は言い返すのを諦めておとなしくなった。

 それを少し面白がりつつも真昼は食券機にお金を投入した。

 食券を取り出してからラーメン屋の店員に促され、二人は席に座った。

 

「いやー。ラーメンって久しぶりだよね、私。日奈ちゃんはよくラーメンとか行くの?」

「えっと、まあ、裕くんに誘われたら、行きます……」

「なるほどね。日奈ちゃんは裕くんのこと好きなんだねー」

「いや、ないです」

「ほお、否定が早い。そのこころは?」

「その、そもそも幼馴染って関係だけで良いんです。それに中学の時、私、裕くんのこと振ってますし」

「へー、裕くん、一回告ったんだ」

「ええ。あの時、私のことそう思っていたんだという衝撃はあったんですけど、それ以上になんというか、裕くんに対して恋愛感情になれないというか。私って、あまり人を好きになったことがないんですよね。あはは」


 日奈は自嘲的に笑っていい、それを真昼はどこか優しい目で見ていた。

 それから真昼から衝撃的な言葉が放たれる。


「今、フリーだったら、私と付き合ってみる?」

「え、え、真昼さん……?」


 日奈は動揺した。

 まさか自分みたいな人に付き合ってみるだなんて。確かに憧れの、意中相手ではあるけど。


「ま、ま、真昼さん? じょ、冗談が上手いですねー」

「冗談じゃないよ。私、日奈ちゃんのこと、好き」

「や、やめてくださいよ。それにここ店の中ですから」

「あはは。そうだねー」


 日奈はちょっと納得できずに、ずっと動揺していた。


 ラーメンを食べ終わり、店を出た二人。二人はしばらく途方もなく歩いていた。

 

「日奈ちゃん。さっきの告白。返事聞いても?」

「え、そ、その。わ、私が、つ、付き合うだなんて、なんというか」


 日奈は真昼から目線をそらし恥ずかしそうに言った。

 目線を逸らした先に、一台の黒塗りの高級車が止まっていた。

 車の後部座席から一人の和服を着た女性が出てくる。

 日奈はそれを見た瞬間、ゾッとした。


「あれ? あの人、どこかで……」


 真昼も女性の存在に気づいたわけか、そう呟いた。そして首を傾げた。

 和服を着た女性は日奈の方へと近づいてくる。

 日奈は思わず地面を見て目線を逸らし、それを見ないようにした。心の中では、どうしてという言葉が渦巻いていた。今すぐにも逃げ出したいと思うようになっていた。

 和服を着た女性は日奈の前で立ち止まった。


「あら、久しぶりね、日奈」

「はい。お母様」


 和服を着た女性の正体は日奈の母親だった。

 日奈の母は少し日奈のことを睨みつけるように


「最近、随分と成績落ちた見たいですわね」

「えっと、その、はい……」

「そう。それじゃ約束を守れなかったわけね」

「えっと、はい……」


 日奈は母親とある約束を交わしていた。

 それは日奈が今一人暮らしできるための条件であった。

 条件とは、学校で良い成績を取らず赤点を取ってしまった場合、一人暮らしをやめさせるというものだった。


「日奈。分かっているかしら」

「ええ、わ、私……」


 日奈は少し助けを求めるように真昼の方を見た。

 真昼は少しため息をつき、日奈の母の前に立ちはだかる。


「ん。あなたは。真昼?」


 日奈の母はさらに目細めて、真昼を見た。


「ええ、お久しぶりです、日和さん」

「ええ。それよりも何であなたが私の娘と一緒に?」

「えっと、それは、その。デートなんですよ。私たち付き合っているんですよ」

「は?」

「だから、そのつまりはですね。私たちの邪魔をしないで、さっさと帰ってほしいっていうか……、え、なんで……」


 日和は眼光をギラつかせて真昼の頬を叩いた。

 真昼は動揺し、叩かれた頬を撫でた。


「あなたね! あなたがいつも娘の邪魔をしているわけね! なんでいつもあなたは私の言うことが聞けないわけ!」

「えっと、その」


 日和の激昂に、真昼は言い返せなかった。


「日奈! 家に帰るわよ! こんな悪女と一緒に居たら日奈がダメになる!」


 日和は無理やり日奈の手を引っぱって連れて行こうとしていた。


「離して! ねぇ、お母様!」

「早くしなさい! ってなんで動かないかしら!」


 日奈はされるがままに手を引っ張られていた。

 そんな二人の様子を見た真昼は、日和の頬を叩いた。

 日和は叩かれたことに少し動揺するも、すぐに平然を装った。


「真昼。何のつもりですか?」


 日和は軽蔑の眼差しを送った。

 それに対して真昼はいたずらっぽく笑いながら、


「これは私なりの反抗ですよ。日奈ちゃん、逃げるよ!」

「え、真昼さん!?」


 日奈は動揺しつつも、真昼に引っ張られ、一緒に走った。


「ちょっと待ちなさい!」


 日和の声が遠くから聞こえた。

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