表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
真夜とトーラス  作者: 白糸モモ
2章ドーナツ・ロンド編
24/30

22話 ドーナツ好きのロンド

 駅前にある何の変哲もない、ただのドーナツ屋。

 そんなドーナツ屋を訝しそうに眺める少女が一人。

 少女の名は日奈。フードを深々と被る少女。

 日奈は目を細めながら、疑い深く、ドーナツ屋のガラス越しにいる誰かを見ていた。

 なぜそんな風に日奈が見ていたのか。それはガラス越しにいる少女が気になったからだ。

 ガラス越しに黒ニット帽の制服を着た金髪少女が一人。なぜか室内でサングラスをかけていた。

 そんな少女はドーナツを一齧りすると、少し嫌そうな顔をした。


「くそ、まじぃ」


 なんでそんなこと言うの、と日奈は首を傾げた。それからあれは真夜?と疑った。

 確かに真夜は金髪といった特徴的な容姿をしていて、それにその横顔は正しく、日奈が知っているはずの真夜?だった。

 

 金髪少女は日奈を凝視した。

 日奈はドキッと肩をピクつかせた。それから後ずさりし、逃げようとしていた。

 

「待ってよ!」


 金髪の少女は逃げようとする日奈を呼び止めた。


「ひぃぃ……」


 日奈は思わず弱気な声を出した。

 金髪少女はドーナツ屋を出て、こっちに向かってきた。

 そして日奈の前で立ち止まった。


「なんで逃げようするの、日奈?」

「いや、べ、別に。邪魔しちゃ、悪いって思って」


 日奈はそれっぽい理由をだらだらと話し始めた。

 金髪少女はやれやれと呆れた様子で見つつ、


「私のこと、分かる?」

「真夜、のふりをしている?」

「んー。どっちがいい? いや、この場合は、日奈ちゃんだったらどっちがいい?」

「どういう意味?」


 日奈は首を傾げた。

 そんな日奈を見て、金髪少女は笑った。


「今日は真夜ってことでいいんじゃない?」

「あの、その真昼さん、ですよね」

「知っていたんなら、言いなさい」

「いや、その、真昼さんもそういう趣味ってことで……」

「んー。ま、いっか!」


 真昼はなぜか納得したかのように答えた。



 日奈と真昼はドーナツ屋にある二人用テーブル席に座った。

 真昼はテーブルに並べられたドーナツを吟味していた。

 日奈は不思議そうに聞いていた。


「何かドーナツにおかしなことでも?」

「んー。ドーナツってなんで穴が開いているのかなって? 考えてみたんだけど」

「それはドーナツ全体に熱が入る様に、ドーナツを開発した人がそうしたんだと思います」

「ドーナツに詳しいんだね。日奈ちゃんってやっぱりドーナツが好きなの?」

「まあ、嫌いじゃないです。好きでもないです」

「んー。つまりは普通ってこと?」

「まあ、そんなところですね。甘いの本当は好きじゃないので」

「え、以外! 日奈ちゃんは甘いのが好きだとてっきり勘違いしていたよ。なんというか今の日奈ちゃんみたいに?」

「何が言いたいんです?」


 日奈の表情が少し曇った。


「まあまあ落ち着いて。でも、それは事実でしょ。もめ事が嫌いだからって、過去から逃げて、親から逃げて。そんなの甘すぎるね」

「私は逃げていません!」

「いや、逃げてる。だから今の生活をしている。でも、いつか壊れるよ。高校生ごときが、そんな大人の真似事なんて馬鹿げている」

「真昼さん、なんでそんなこと言うの」

「いや、日奈ちゃんのことを思っての言葉だよ。君はさっさと実家に帰りなよ。君が傷つくことになる」

「それって前にも言ってましたよね。私がいつ、どのように傷つくんですか」

「そうねー」


 真昼は少し考え込むように天井を仰ぎ、それからコーヒーを一口飲んだ。


「ま! 良いんじゃない!」

「え?」

「今のままでもいいってこと」

「真昼さんはどっちなんですか。私に帰ってほしいのか、それともこのままでいいのか。はっきり言ってください」

「それは酷いよ。私に日奈ちゃんの人生をゆだねるようで。もし何かあったら、私が悪いみたいじゃない。まあ私はあくまで助言ってところだよ」

「分かりました。変な質問してしまって、すみません」

「いいよ! でもまあ、この状況の日奈ちゃん見ていると青春だねって思わせてくれるよ。オーディエンス視点からすれば面白いよ」

「私のことからかっています?」

「うん」

「正直ですね……」


 日奈は呆れて、さっきまでの怒りの熱も冷めつつあった。

 

「ねえ、日奈ちゃん。今日この後暇?」

「まあ、一応、バイトまで時間は少しありますけど」

「そう」


 真昼はバッグから財布を取り出した。それから財布からいくつか万札を取り出してテーブルに置いた。

 そこで真昼は不敵な笑みを眺めながらこう言った。


「今日一日、これで日奈ちゃん買える?」

「や、やめてください。こんなところでそんな大金。それに私は売り物じゃないので」

「あー。言い方間違えたね。じゃあこう言うよ」


 真昼は日奈の耳元に近づき、囁くような声色で、


「私とデートしよう」


 日奈は一気に顔を赤くした。


「え、ちょっと」

「ふふ。日奈ちゃん可愛い」

「や、やめてください」

「でも、私は本気だよ」

「それってどういう意味ですか……」

「うーん。日奈ちゃんの想像にお任せします」


 日奈は一瞬、想像しそうになりつつ、すぐにその邪念を振り払った。

 それから真昼は日奈を連れ出し、ドーナツ屋を出たのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ