52.白馬の王子様
ロンは建物から出ると悪天候の中走って崖の方へと向かったのだ。
そして、崖へ到着するとロンは声を出した。
「ブリアーーーー!!ブリアーー!どこだーーー!」
ロンが大きな声でそう叫んだのだった。
「ブリアーーー!!どこだーー!」
ロンはひたすら大声でブリアの名を呼んだ。
「ロン様…?」
すると、崖の下の方から確かにブリアがロンの名を言う声が聞こえてきたのだ。
「ブリア?ブリアなのか?どこにいるのだ。」
ロンはブリアの声を確認すると崖下に向かい話しかけた。
「はい。ブリアでございます。ロン様なぜここへ?」
ブリアは驚きながらも返事をした。
「はぁ…ブリア…無事な様だな…良かった…ひとまずロープを下へ垂らすからそのロープを身体に巻き付けろ。私が上からロープで引っ張りあげてやるから。」
ロンはブリアの無事を確認するとそう言い、ロープをブリアの声のする方へと垂らしたのだ。
ロンが垂らしてくれたロープがブリアの所まで降りてきたのだ。
ブリアはそのロープを上手く体へと巻き付けた。
仔犬はそのまま胸元へ入れることにした。
「ロン様、ロープを体に巻き付けました。わたくしもロープを掴みなるべく登るようにしますので地面の状態があまり良くはないですがロープを引き上げて下さってもよろいしですか?」
ブリアが下からロンへと尋ねた。
「あぁ。構わない。私はロープを引き上げるからブリアは自分が登り易いように登ってきてくれ。」
ロンはブリアへと言った。
「畏まりました。では、お願い致します。」
ブリアがそう言うとにロンは雨に打たれながらも思い切りローンを引き上げ始めた。
ブリアもブリアでロープを掴み崖をしっかり足に力を入れて登ろうとしていたのだった。
ブリアは雨に打たれながら胸元に入れた仔犬が潰れない様に気をつけながら泥濘んだ崖を足を取られないよう慎重に登った。
ブリアはどうにか登りきったのだった。
「ブリア!大丈夫か?怪我は?ひとまずこちらへきて座れ。」
ロンが登ってきたブリアにそう言うと手を貸してブリアを近くの木の下へと誘導した。
「ロン様!何故ここへ?そんなに濡れて汚れてしまわれて…体調でも崩されたらどうなさるのですか…」
ブリアがロンの姿を見て心配そうに言った。
「私は大丈夫だ。それよりブリアは大丈夫なのか?どこか怪我は?」
ロンは自分の事よりブリアを心配し尋ねた。
「あっ、わたくしですか?わたくしは大丈夫でございます。落ちた時に多少擦りむいたり、背中を売ったくらいですから。落ちた場所が幸いにも木の上だったものでこの程度で済みました。」
ブリアは苦笑いしながら応えた。
「怪我をしたのならば大丈夫ではないじゃないか…どうしてこの様な危ない場所へ来たのだ!」
ロンは少し強い口調でブリアへ言った。
その時、「クゥ〜ン……」という鳴き声が聞こえた。
「あらっ。苦しかったかしら?ごめんね。でも、雨が降ってるからもう少しだけここへ入っていてね。」
ブリアは自分の胸元に入れていた仔犬が鳴いているのに気づき胸元から仔犬の頭を出して言った。
「クゥ〜ン…クゥ〜ン」と仔犬はブリアの胸元に顔をすりすりと擦りつけ気持ちよさそうにしていた。
「仔犬……?」
ロンがブリアの胸元から顔を出した仔犬を見て驚いて呟いた。
「驚かせてしまい申し訳ありません…実は…ここへ来たのは犬の鳴き声が聞こえたからなのです。この仔犬が崖下の木の上に登ったものの、そのまま降りれなくなってしまったみたいでして…それで崖上から助けようとしたのですがわたくしも落ちてしまったのです…お兄様方に手伝って頂こうと思い呼びに向かおうと思った時に落ちてしまって…」
ブリアがロンへここに来た経緯の説明をした。
「そうだったのか…しかし…運動神経がいいブリアが誤って落ちてしまうなど…とにかく無事で良かった…ブリアが行方不明だと聞いたときは肝が冷えたぞ…ローランド達もとても心配しているぞ。スリム男爵家のご令息がこちらの方へ向かっていたと教えてくれたのでここへ直様来ることが出来たのだ。こんなに濡れてしまって…体調を崩しては大変だ…」
ロンはとても心配そうな顔でブリアへ言った。
「そうでしたのね…また、わたくしのせいで皆様にご心配をおかけしてしまったのですね…申し訳ないですわ…」
ブリアはしょんぼりとして言った。
「仔犬を助ける為にというのがブリアらしいけどな。それに、崖から落ちたというのに泣くどころか冷静なところがまたさすがというところだな…」
ロンはふふっと少し微笑みながら言った。
「今回は、さすがにわたくしにもどうにもならないなと思ってたのですよ?ですから、誰かがわたくしの居ないことに気づいて来てくれることを信じて大人しく待とうと思いましたの。木の下がどのような感じかがあまりよくわかりませんでしたし木の上ではあまり動かない方が体力も消耗しませんので。」
ブリア困り顔で応えた。
「ふふふ…それにしても…」
ブリアが急に笑いだした。
「何がおかしいのだ?」
ロンは急に笑いだしたブリアを不思議に思い尋ねた。
「ふふ…急に笑ってしまい申し訳ありません…幼い頃に本を読んだ時の事を思い出しましまの。」
ブリアは、何か思い出したかの様に微笑みながら応えた。
「本?」
ロンが首を傾げながら尋ねた。
「はい。幼い頃に御伽話の本を読んでいたのですが、そのお話はお姫様のピンチに白馬に乗った王子様が助けに来て、その後二人は幸せな結婚をして幸せに暮らすというお話だったのです。その時は、わたくしにもわたくしがピンチになった時には素敵な王子様が助けに来てくれるのかしらと思っていたのです。成長するにつれてその様な事はすっかり忘れていたのですけど、先程ロン様にピンチなところを助けて頂いた時に思い出したのです。わたくしはお姫様ではありませんが本当の王子様が助けに来てくださいましたわ。」
ブリアはクスクスと笑いながらロンに話をした。
「ぷっ…ハハハハハ…ブリアでもそのその様に乙女の様な事を思っていた時があったのだな…今のブリアからは全く想像が出来ないな。」
ロンはブリアの話を聞き思わず大笑いをしたのだった。
そんなロンの笑った顔に、ブリアは思わずドキっとしてしまったのだった。
「わっ…笑うなんて酷いですわ。わたくしは今でも乙女の心をきちんと持ってますわ。」
ブリアはぷくっと頬を膨らませてロンに言った。
「そうなのか?大の大人の男を目の前に怯まず立ち向かう者がか?」
ロンはクスクスと笑いながら言った。
「それとこれとは、また別のお話ですわ。」
ブリアはふんっと様な顔で言い返した。
「ハハ…本当にブリアと話していると、先程までピンチだったとは思えなくなるな。」
ロンはまだクスクスと笑いながら言った。
「やはり…ロン様はその様に普通に笑われている時が一番いいですわね。きっと皆様も今のロン様をご覧になったら驚かれますわね。あっ…雨が上がってきましたわ…これで建物まで戻れそうですわね。ロン様、戻りましょう。」
ブリアは先程までの頬を膨らませていた顔から笑顔になりロンへ言った。
「この様にご令嬢の前で、自然にいられるのはブリアだけだ…」
ロンはボソリと小さな声で呟いた…
「はい?何かおっしゃいましたか?」
ブリアがロンが何か言った様だが聞こえなかったので尋ねた。
「いや…何でもない…皆も心配しているだろうし早く戻ろう…」
ロンがそう言った。
「??はい。」
ブリアは不思議に思ったが早く戻るのが先だと思い返事をしたのだった。
(それにしても、さっきは思わずロン様の笑顔にドキっとしちゃったわ…あんなにも子供の様に笑うんだもん…やっぱりイケメンの笑顔は破壊力凄いわ…)
ブリアはそんな事を思いながら歩いていたのだった…




