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5-5

「……待たせたな」

 水が動く気配に、はっと顔を上げる。

「もう、笛は良いぞ」

 海神サイモナートが帰ってきたのだ。

「おかげで、うまく片付いた。礼を言う」

「いえ」

 頭を下げる気配に、慌てて首を横に振る。これくらい、ティアには何ともないことだ。

「では、悪いがこれも、預かってくれ」

 今まで空っぽだった目の中に、何か異物が入るのを感じる。痛くないのは、サイモナートが気を遣ってくれているのだろう。少しの緊張に震えながら、ティアはそんなことを考えていた。

「では、浜辺へ戻ろうか。仲間達が心配しているぞ」

 サイモナートの言葉に、はっとする。ヴァリスかジェイかハルが、『悪意』に捕まっていたのだろうか?

「大丈夫だ」

 ティアの疑問に、サイモナートが答える。

「仲間達は皆、浜辺で待っている」

「はい」

 待っているのなら、帰らなくてはならない。

 ティアはにこりと笑うと、サイモナートが起こした強い波に身を任せた。

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