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5-6

「大丈夫、かしら」

 心配に満ちたセティの声が、背後で響く。

「ヴァリスとジェイなら、大丈夫さ」

 海を見つめたまま、ハルはそう、吐き捨てた。

 そう、ヴァリスとジェイは大丈夫だ。波に攫われる直前に、水中で呼吸できる魔法を掛けたから。問題は、ティアだ。ティアには、そのような魔法は掛けてない。自分が何もできないほど、辛いことはない。じりじりとした感情が、ハルの心を支配していた。

 と。

 目の前の波が、大きく膨らむ。

「ハル!」

 セティが叫ぶ前に、ハルは後ろに飛び下がった。……慣れない砂に足を取られ、無様に尻餅をついてしまったが。

 被ってしまった海水を、首を振って髪から落とす。やっと見えるようになったハルの瞳が、捉えたのは。

「ジェイ! ヴァリス!」

 波打ち際で、二つの巨体が呻いている。だが、ティアは? 戸惑うハルの横で、もう一度波が膨らんだ。

 次の瞬間。波と共に、小柄な影がハルの両腕に落ちる。ティアだ。それが分かるより先に、ハルの身体はもう一度、砂浜に尻餅をついていた。

「ティア! ティア!」

 ぐったりとハルにもたれかかるティアの身体を、強く揺さぶる。すぐにティアは、目を開いた。

 だが。

「ティア?」

 開かれたティアの瞳の色に、戸惑う。紫水晶のような瞳は、しかし、全ての光を虚ろに弾いていた。

〈……ハル?〉

 ハルに触れていた左手が、悪戯に宙を泳ぐ。ティアのその仕草だけで、ハルは、ティアの視力が失われていることに気付いた。

〈そんな……〉

 運命は、確実にティアを蝕んでいる。

 ハルはそっと、ティアの冷たい身体を抱きしめた。

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