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04


可愛いクマちゃんを抱っこして、カズの家にあった客用布団(何か新しいけど使ってるのこれ?)で寝た。因みにカズの家は2DK、ひとり暮らしには贅沢な間取りだ。カズがベッドで寝ているので、私はベッドの横の床に布団とマットを重ねて寝床を作成した。ちなみにクマちゃんの着ぐるみパジャマは理解を得られなかった、何故。

私は十一時過ぎには布団に入ったけど、カズはまだ起きていた。どうも一時過ぎまで起きている癖が付いているらしい、アンビリーバボー。

ベッドの横のスタンドの電気はカズが作業をするために点いていて、ぼんやりと暖温色の、薄暗い部屋で私は瞼を閉じた。

目が覚めた、因みにまだ真夜中。

やはり朝までぐっすり快眠、とは行かないらしい。布団からもぞもぞ出て、クマちゃんと一緒にキッチンまで水を飲みに行く。

私のアパートは畳だけど、カズの家はフローリングだ、ぺったらぺったら廊下を歩いて途中でトイレに寄って寝室に戻った。寝室のスタンドは消されていて、じゃあもう一時過ぎは過ぎてるんだな、とぼんやり考えながら布団に戻る。

私はアパートで寝るときは電気代を考えて電気を点けない、一応苦学生なのだ、幼馴染はブルジョアだけど。だから一晩中電気なんて付けていられない、豆電点けれたらいいけど、実は我が城の照明には豆電が付いていないので仕方ない。

まあ、要約すると。暗い、眠い、けど怖い、である。眠いけど眠れない、これは何て拷問だっ。腕に抱いたクマちゃんをぎゅうぎゅう抱いて気を逸らす、カズが私を呼ぶ理由がわかった、確かに抱き締めるのって結構落ち着くもんだ。落ち着きたいってことはじゃあやっぱカズはあの時情緒不安定なんだな、不安定になるくらいならあんなコトしなきゃいーのにね、クマちゃんもそう思う?

沈黙を保つクマちゃん、当たり前だがぬいぐるみって喋れないよね。あはは。

クマちゃんの胸、丁度返り血の辺りに顔をグリグリしてみる、ここだけフェルトで出来てるからちょっとチクチクする、痒い。

ぐりぐりぐりぐり、かゆいよこれぐりぐりするの向いてないよ抱き枕なのに、欠陥品めっ。でもクマちゃん可愛いよグロカッコ可愛いよ、抱き枕として欠陥品でもクマちゃんの魅力が失せるわけじゃないから、そんなつもりで言ったんじゃないの、欠陥品って。

「ぅー・・・っ」

怖いから考え事をして、考え事をしたら眠いけど寝れない、どーしよこの悪循環。せっかくカズの家にお泊りなのに、安全なのに安心出来ないよ、ぐっすり眠れると思ったのに。

「かずのうそつきやろうめ」

「何でそうなる」

「・・・あれ?」

「夜中にいきなり唸り始めて、嘘つき呼ばわりしてんじゃねえよ、しず」

カズは起きてました、え、いつから?結構はっきりした声なので、寝言じゃないと思われます隊長。隊長って誰だよ。

クマちゃんを抱いてむくりと躰を起こすと、丁度ベッドの上が見える、結構高さあるのに座高の高い日本人体型ってこういう時便利ねおほほ、ちくしょう。

顔のあるあたりをぼんやり見たら、見えなかった、カズの顔が消失したとか怪奇現象じゃない、ただカズが顔を片手で覆っていて、目元を擦っているようだったからまあ顔全部は見えなかったよ、うん。

「カズ、起きてたの?」

「つか、起きた。トイレのドア、開け閉めの音でか過ぎんだよ」

「ごめん」

「便所まで連れてくとか、どんだけ好きなんだよその熊」

「え、大好きだよ?」

クマちゃんをトイレに連れて行ったことに突っ込まれた、思うんだけど、カズはこのグロカッコ可愛いクマちゃんの一体何処がそんなに気に入らないんだろうか。

「しず・・・寝れねえのか」

「んーん、寝るよ」

「んなら物音立てんなよ、朝までスパッと寝ろ」

「ん」

朝までスパッと、何かちょっとかっこいい。あれ、かっこいい寝方って何だろうか。私は寝ている自分を観察したことなんて無いから、自分がかっこ良く寝ているかどうかなんて知らない。ああでも、お間抜けな顔はしていると、高校生の時修学旅行で言われたなあ。

「しず」

「ん?」

「その熊離したら、ここ、入れてやる」

「えー」

「怖くて寝れねえのにその熊はいいのかよ」

「だってグロカッコ可愛いもん」

「・・・とにかく熊置け、さっさとしろ」

はあい。

クマちゃんごめんね、決して浮気じゃないから誤解しないでね、抱き枕として欠陥品でもグロカッコ可愛さは変わらないし今も変わらずあいらぶゆーだからね。でもやっぱり抱き締めるより抱っこされてた方が安心感も違うよね、人肌の温もりのほうが今の私には必要なの、ごめんね。

もそもそベットに潜り込んで、ずりずりとカズに接近すると、長い腕がヒョイッと私を抱き込んだ。えへへ、えへへ、やっぱカズは違うねえ。さっきは痒くて断念した、ぐりぐりぐりぐり、ああ痒くない、だってフェルトじゃないし。そうしたらカズが、擽ったい、大人しくしろ、って。長い腕が、動けなくなるくらいがっちり、きっちり私を閉じ込めた。

私より体温の高いカズ、ぬくぬくと伝わる体温があんしん、あんしん。ああやっぱりいけない、今日やられたうめぼしのトラウマだ、目が熱いよカズ、カズの虐待ばかやろー。

寝る前にまた少しだけめそめそして、私は朝までぐっすり寝た。

やっぱりスパッとは無理だったっぽい。



何だこのハイペース・・・。

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