EP 7
包丁突き立て命乞い!ネタキャベツの爆弾ゴシップと下着ずらしの豆畑
失恋ハニーかぼちゃの暴走を『農家のおばちゃん軍団包囲網』と絶品クリームシチューで完全鎮圧した、まさにその日の夕暮れ時。
ポポロ村の怪奇農作物収穫祭は、終盤戦にして最大の『人間関係破綻クライシス』に直面していた。
「お、おい誰か助けてくれぇぇぇっ! 中央第一圃場が修羅場だぁぁあ!!」
「包丁を向けたらあいつら、村中の恥ずかしい秘密を拡声器以上の音量で暴露し始めやがった! あちこちで夫婦喧嘩と殴り合いが起きて流血沙汰寸前だぁッ!!」
またしても自警団詰所に転がり込んできた農協役員の悲鳴に、俺――佐藤悠人は、天を仰いで深々とため息を吐き出した。
「……おいおい、今度は何だ。キャバクラ、汚職、ナルシストの次は、週刊誌の記者ごっこか?」
「ゆ、悠人くん……中央第一圃場って、確か『ネタキャベツ』と『ダイズラ豆』を混植してる畑だよね……?」
キャルルが純白の長い兎耳をピクピクと震わせ、不安そうに俺のエプロンの裾を掴んでくる。
「ああ。外葉が新聞紙のように折り重なって結球し、収穫用の包丁を突き立てられると『命乞い』のために近隣のゴシップを暴露する三面記事野菜『ネタキャベツ』。そして、莢が弾ける風圧で周囲の人間のカツラや下着をスポンとズラす悪魔の穀物『ダイズラ豆』だ。……嫌な予感しかしない組み合わせだな」
「ふん、たかがキャベツの戯言ではないか!」
ガシャァン! と四本の蹄を踏み鳴らし、白銀の胸当てを揺らしながら前に進み出たのは、ケンタウロス族のリーダー・マンミアだった。
「武人たる者、身に覚えのないゴシップなど恐るるに足りん! 自警団リーダーとして、私がそのふざけた葉物野菜を一刀両断に収穫してくれよう!」
「へへっ、俺様も行くぜ! 誰のどんなスキャンダルが飛び出すか、ちょっと面白そうじゃねぇか!」
「俺も俺も〜! 他人の恥ずかしい暴露話とか、酒の肴に最高じゃん!」
鼻の下を伸ばすイグニスとフェイト。
こいつらは完全に忘れている。自分たちがこの村で一、二を争う『爆弾級の恥部』を抱えているという事実を。
「……知らねえぞ、後悔しても」
俺は頭痛をこらえながら、新聞ハリセンを腰に差し、自警団の面々と共に中央第一圃場へと急行した。
村の中央第一圃場。
そこは、文字通りの地獄絵図と化していた。
夕日に照らされた広大な畑一面に、丸々と太った巨大なキャベツが数千個、不気味に葉を擦り合わせながら鎮座している。
畑のあちこちで、収穫包丁を構えた農家のおじさんたちを取り囲み、キャベツたちが口々に甲高い人語で絶叫していた。
『待ってくれ! 切らないで! 切るなら代わりに特ダネをやる! そこの田中のおやっさん、先週の火曜日、タローソンの裏で若いエルフの店員さんに「これ僕の魔導通信石の番号ね」ってメモ渡して即座にゴミ箱へ捨てられてたぞぉぉおッ!!』
「な、何でお前がそれを知ってんだぁぁああっ!?」
『隣の鈴木の兄ちゃん! お前、先月買った最新型魔導トラクターの頭金、本当は競馬でスッたのを「新車購入の初期不良補償」って女房に嘘ついてるだろぉぉおッ!!』
「ぎゃあああああっ! 母ちゃん、違うんだ! 今のキャベツのデマだぁぁあ!!」
「鈴木ぃぃぃッ! てめぇ今夜は生米すら食わせねぇからなぁぁああっ!!」
あぜ道の至る所で、夫婦の怒号と農家同士の取っ組み合いが勃発している。
包丁を突き立てられるたび、ネタキャベツは保身のために周囲の人間関係を爆破する特級ゴシップを乱射。
しかもタチの悪いことに、暴露されたネタの衝撃度が高ければ高いほど、キャベツ自身の葉の糖度と旨味アミノ酸が跳ね上がるという悪魔の生態を持っていた。
「ひ、酷い……! 畑全体がドロ沼の告発合戦になってるよぉ!」
キャルルが兎耳を伏せてドン引きする。
「ええい、見苦しいぞ百姓ども! 国家の公僕たる自警団の清廉潔白さを見せてくれる!」
マンミアが堂々と歩み出た。
腰の収穫用短剣をシャキンと抜き放ち、畑のど真ん中に居座る、ひときわ巨大な『大玉ネタキャベツ』の根元へと切っ先を突きつける!
「観念しろ怪奇野菜! 貴様の命乞いなど、高潔なる元・騎士団長の私には一ミリも通じ――」
『ぎゃあああっ! 待った! タイム! 命乞いする! 特大スクープを吐くから刃物をどけてくれぇぇえッ!!』
大玉ネタキャベツが葉を震わせて絶叫した。
『そこのケンタウロスのマンミア団長! 昨日の深夜二時、公邸の自室で魔導通信石を使って、帝国通販の「絶対にフラれない愛されモテ香水」と「ケンタウロス女性のための奥手脱出恋愛ポエム集」をまとめ買いしてただろぉぉぉおおッッ!!!!』
「「「「ぶっっっ!!!!」」」」
その場にいた全員の喉が鳴った。
ピキリ……ッ。
マンミアの動きが、完全に石化した。
手にした短剣がカタカタと激しく震え、引き締まった美しい顔面が、頭頂部から首筋に至るまで一瞬で沸騰したトマトのように真っ赤に染まり上がる。
「な……ななな……何故それを……!? し、深夜二時に、シークレットモードで注文したはずなのに……!!」
『土の中の光ファイバー根っこ通信網を舐めるなァッ! しかも注文の備考欄に「家族にバレないよう無地のダンボールでお願いします」って書いたのに、タローマンの配送伝票にバッチリ「モテ香水」ってデカデカと印字されて明日届くぞぉぉおおッ!!』
「うわあああああああああああっっっ!!!!」
ドッッッゴォォォォォンッッッ!!!!
マンミアが絶叫しながら大地を踏み抜き、クレーターを穿った。
二十五歳未婚の乙女心が、全村民の前で無惨に解体・開帳された瞬間である!
「だ、団長、落ち着けって! 通販くらい誰だって――」
イグニスが慌てて宥めようと足を踏み出した、その瞬間だった。
足元の別のネタキャベツが、ニヤリと葉を歪めて叫んだ!
『おいおい、見栄っ張りトカゲのイグニス! お前も他人の心配してる場合かよォッ! お前が毎月実家の竜人の里に送ってる「魔導合成写真」の最新作、タイトルが「帝都の最上階スイートで全大陸の美女たちに囲まれる俺様」ってファイル名になってるぞ! しかも右端に写ってる美女、タローマートの総菜コーナーのおばちゃんの写真を反転コピペしただけじゃねぇかァッ!!』
「ぎゃあああああああああっっ!?!?!?」
イグニスが白目を剥いてその場に卒倒した。
手取り十四万のテント暮らしが必死に守り続けていた「英雄のプライド」が、粉々にミンチにされた瞬間だった。
「あっひゃっひゃっひゃ! イグニス、お前バカすぎるだろ! おばちゃんのコピペって――」
腹を抱えて大爆笑するフェイト。
だが、あぜ道のキャベツが冷ややかに銃口――ならぬ葉先をフェイトに向けた。
『笑ってんじゃねえぞギャンブルクズ! お前、ゴルド商会に隠れて別の闇金業者から「リボ払い枠あと五万円」を内緒で借りて、昨夜のオンラインガチャで全額ドブに捨てただろ! 明日の正午が返済期限だぞ!』
「うぐふぇっ……!?」
フェイトの喉から変なカエルを潰したような悲鳴が漏れ、その場に膝から崩れ落ちた。
自警団の威信、完全崩壊。
もはや畑は、恥辱と絶望の公開処刑場と化していた。
「も、もうやめてぇぇぇっ! みんなの心をズタズタにするなんて、野菜として間違ってるよぉ!」
キャルルが涙目で両手を広げ、キャベツたちの前へと立ちはだかった。
だが、畑の中心にいた一番巨大なボスキャベツが、ギラリと狡猾に目を光らせたのである。
『ケケケッ! 甘いぜキャルル村長! お前が一番ヤバい爆弾を抱えてるのを、土の中の俺たち全員が知ってんだよォッ!!』
「え……? わ、私……?」
『お前なぁ! 昨日の夜、悠人が洗濯して物干し竿に干してあった「悠人のエプロン」をこっそり部屋に持ち込んで、ぎゅーって抱きしめながら「悠人くんの匂いがする……♡ 悠人くん、私の心音を聞いて……♡」って頬ずりしてスースー深呼吸してたのを、窓の外の雑草がバッチリ目撃してんだよォォォオオオッッ!!!!』
「「「「なっっっっっっっっっ!!!!????」」」」
時が、止まった。
畑にいた農家も、自警団も、そして俺自身も、雷撃を食らったかのように静止した。
キャルルの全身から、ボボボボボッ! と音を立てて湯気が噴き上がる。
純白の兎耳が、怒りと羞恥のあまりバチバチと静電気のプラズマを帯び始めた。
ルビーの瞳から光が完全に蒸発し、深紅の殺戮の光が宿る。
「……あ……あ……」
「キャ、キャルル……? お前、俺のエプロンを……?」
「ち、違うの悠人くん! これは、その、柔軟剤の効き目を村長として品質検査していただけでぇぇぇええっ!!」
狂乱したキャルルが腰のホルスターから、超硬質ミスリル製のダブルトンファーを抜き放った!
通常時百二十馬力の筋力が、羞恥心によって満月クラスの一万馬力へと強制オーバーヒートを起こしている!
「口封じだぁぁぁぁああああっっ!! この畑のキャベツを、根っこごと分子レベルでミンチに粉砕してやるぅぅぅうううッッ!!!!」
カチャリ! ガシャァァァンッ!
同時に、正気を失ったマンミアがパイルバンカー『アグニ』の蒸気を噴射させ、イグニスが両拳に火炎を灯し、フェイトがミスリル大剣を逆上して振りかざした!
「我がモテ香水の秘密を知る者は生かしておけんッ!」
「合成写真のデータを消去してやるぜぇぇえ!」
「借金の秘密を墓場まで持っていけぇぇえ!」
自警団の総戦力による、全農地消滅クラスの過剰武力行使!
――だが、本当のカタストロフィは、この瞬間に幕を開けた。
四人が踏み込んだ足元――ネタキャベツの畝のすぐ隣に植えられていた、『ダイズラ豆』の畑だった。
四人の凄まじい闘気と殺気に刺激され、完熟していた巨大な豆の莢が一斉にピキピキと音を立てたのだ。
――パァァァァァァァァンッッッ!!!!
数千個のダイズラ豆の莢が、連鎖爆発を起こした!
大気中に放出されたのは、収穫者をからかうための最凶の空間ズレ魔法衝撃波!
ストーーンッッッ!!!!
「「「「ふぇっ……!?!?!?」」」」
次の瞬間、畑にいた全員――自警団も、農家のおじさんたちも、全員のベルトとゴム紐が一瞬で強制解除された。
ズボンが、スカートが、スパッツが、そして――下着が。
寸分の狂いもなく、全員の足首へと綺麗にずり落ちたのである。
夕暮れの涼やかな風が、畑を吹き抜けた。
白日の下に晒されたのは――。
キャルルの可愛らしい苺柄のパンツ。
マンミアの厳重なミスリル製馬用ふんどし。
イグニスの穴の空いたトランクス。
フェイトの派手なヒョウ柄ブリーフ。
そして、農家のおじさんたちの頭から斜め四十一度にズレた、無数のカツラ。
「「「「ぎゃあああああああああああああっっっ!!!!????」」」」
成層圏を突き破るような、阿鼻叫喚の絶叫が畑に木霊した。
「み、見ないでぇぇぇええっ! 悠人くん、見ちゃダメぇぇぇえええっ!!」
キャルルが顔面から火を噴きながら、ずり落ちたスカートを必死に手で引き上げる。
「無礼者ぉぉぉおっ! 私の処女の下半身がぁぁぁああっ!!」
マンミアがパイルバンカーを投げ捨てて前脚をバタつかせる。
名誉毀損、プライバシー侵害、そして集団公然わいせつ未遂の地獄絵図。
このまま放置すれば、ポポロ村の尊厳と治安は永遠に回復不能の深淵へと叩き落とされる!
――現場の混乱を正気とツッコミでねじ伏せるのが、危機管理室長の職務だ!
「……テメェら、全員まとめていい加減にしろッッ!!!!」
俺はエプロンのポケットから、布ガムテープでガチガチに補強した我が魂の相棒を、電光石火の速さで引き抜いた!
唸れ、理不尽と狂気を粉砕する唯一無二の絶対権能――!
『常識人のハリセン(コンプライアンス・ブレイカー)』!!
俺は疾風の如く畑を駆け抜け、神速の連続スイングを一閃した!
まず一撃目! 他人の痴情をバラして大笑いしていたボスネタキャベツの頭頂部へ!
「――他人のプライベートを暴いて命乞いするな! 名誉毀損罪、侮辱罪、および個人情報保護法違反だッッ!!」
――パァァァァァァァァンッッッ!!!!
『ぎゃふんっ!?』
快音が轟き、ネタキャベツの口から噴き出ていたゴシップマナが一瞬で完全に封殺された!
さらに二撃目! 空間ズレ魔法を撒き散らしていたダイズラ豆の親株へ、下からの鋭利な切り上げツッコミ!
「――そして豆! 公道に面した農地で集団ストリップを誘発させるな! 公然わいせつ幇助および風俗営業法違反だ莢を閉じろッッ!!!!」
――ドパァァァァァァァァンッッッ!!!!
大気を引き裂く乾いた快音が炸裂した瞬間、ダイズラ豆の放出していた空間ズレの余波が瞬時に霧散した!
殺傷力ゼロ。理不尽なスキル、暴走する因果律を強制キャンセルする絶対の言霊打撃!
そしてトドメに、俺は手元のハリセンを翻し、パニックで発狂していた自警団の面々の脳天へ、目にも留まらぬ四連撃を叩き込んだ!
「全員、慌てて重火器を抜く前に、まずズボンを履けぇぇぇえええッッ!!!!」
――パパパパァァァァァンッッッ!!!!
「「「「あぎゃうんっ!?!?」」」」
快音が四重に木霊し、キャルルたちの過熱していた脳のシナプスが強制的に正常値へと引き戻された。
四人はハッと我に返り、猛スピードでズボンと下着を引き上げてベルトを締め直した。
静寂が、夕暮れの第一圃場に戻ってきた。
畑には、ハリセンで口を塞がれた大人しいキャベツの山と、正座して涙目で項垂れる自警団の面々。
「うぅ……悠人くん……見なかったことにしてぇ……」
「私のモテ香水は……ただの学術的好奇心だぞ……」
「合成写真は……消します……」
「ガチャは……もう二度と引きません……」
完全に魂が抜け落ちた問題児たち。
俺は深くため息をつき、ハリセンを腰に戻すと、足元のボスネタキャベツを抱え上げた。
見ると、数々の爆弾ゴシップを命がけで暴露した反動により、キャベツの葉は極限まで締まり、黄金色の糖度エキスがジュワジュワと表面に滲み出していた。
過去最高クラスの超高濃度アミノ酸と糖度を宿した、奇跡の極上キャベツの完成である。
「……ふん。これだけ美味そうに仕上がったんだ、無駄にはできんな。――おい自警団、収穫作業を完了させるぞ! このネタキャベツ、俺の手料理で最高の味に成仏させてやる!」
一時間後、村長公邸の大厨房。
俺はエプロンをキュッと締め直し、大鍋の前に立った。
「暴露された恥ずかしい記憶は、温かくてジューシーな肉の旨味で完全に洗い流してやる」
まずは、ネタキャベツの下処理だ。
芯をくり抜き、熱湯で丸ごとサッと茹で上げる。
氷水に取って粗熱を取れば、驚くほどしなやかで破れにくい、エメラルドグリーンの極上キャベツシートが出来上がる。
合わせるタネを作る。
ポポロ山麓のシープピッグの粗挽き肉に、粗みじんに刻んだ極厚『肉椎茸』、そして賢者モードの純白『たまんネギ』。
米麦草のパン粉、朝採り有精卵、岩塩、ナツメグ、粗挽き黒胡椒を加え、粘りが出るまで手早く練り上げる。
「キャベツの葉を広げ、タネを贅沢に乗せて、空気が入らないようキッチリと巻き込む!」
大きな俵型に巻いたロールキャベツを、大鍋の底へ隙間なくぎっしりと並べる。
そこへ注ぎ込むのは、清流のピラダイのアラと鶏ガラ、そして清流沿いの『醤油草』から取った黄金色の合わせ和風コンソメスープ。
隙間に、短冊切りの自家製ベーコンと、乱切りにした『人参マンドラ』を散らす。
落とし蓋をして、弱火でコトコトと煮込むこと四十分。
ネタキャベツの葉がトロットロの半透明になり、スープの旨味を芯まで吸い込み、逆にキャベツ自身の爆発的な甘みがスープ全体へと溶け出していく。
深皿にスープごと盛り付け、天頂部にすりおろしたての生姜草をほんの少し添えた。
――完成。佐藤悠人特製、『極上ネタキャベツとシープピッグのトロとろ和風ロールキャベツ』だ。
「お待たせ。冷めないうちに胃袋へ流し込め」
「「「「う、うわぁぁぁぁぁぁぁあっ……!!」」」」
テーブルを囲んだ全員の目が、爛々と輝いた。
キャルルが震える手でスプーンを手に取り、透き通るようなロールキャベツへと入刀する。
スッ……ジュワァァァァッッ!!
信じられないほど柔らかい。
力を入れる必要すらなくスプーンが通り、中から黄金色の肉汁がスープの海へと溢れ出した。
キャルルがフーフーと息を吹きかけ、一口頬張る。
「はふっ……ん……っ♡」
その瞬間、キャルルの全身の力がフニャリと抜けた。
ルビーの瞳がトロンと蕩け、兎耳が幸せそうにとろりと垂れ下がる。
「んんん〜〜〜〜っっっ♡♡ おいひい……! キャベツが……キャベツが歯がいらないくらいトロットロにとろけていくよぉ……! すっごく甘いのに、お肉のジューシーな旨味とお出汁の優しい塩気が染み込んでて……あぁっ、恥ずかしい記憶が全部吹き飛んじゃうぅぅう……!」
「う、美味い……! 何だこのキャベツの甘みは……!」
マンミアもまた、大ぶりのロールキャベツを口いっぱいに頬張り、感涙に咽び泣いた。
「コンソメのコクと、肉椎茸の芳醇な香気……! 煮込まれたキャベツの繊維一本一本から、大地の滋養が溢れ出してくる……! あぁ、モテ香水など買わずとも、この料理を食っていれば私の魂は満たされるぞ悠人……!!」
「うめぇぇぇええっ! スープが五臓六腑に染み渡るぜ! 飯が進む! サンライスおかわりくれぇぇえ!!」
イグニスもフェイトも、どんぶりを抱えてガツガツと平らげている。
わずか十分足らずで大鍋は空っぽになり、自警団の面々は満腹感と幸福感に包まれ、畳の上にゴロリと転がった。
「ふぅ……ええ商材になったわ」
ニャングルがキセルを燻らせ、満足そうに算盤を弾く。
「収穫したネタキャベツ、ルナミス新聞社に『情報源兼特級食材』として全量高値で買い取らせたったわ! また金貨数千枚の純利益や!」
ダイニングルームに、温かな笑い声が満ちていく。
どんなに狂った怪奇農作物だろうと、適切なツッコミと絶品の賄い飯があれば、すべてはポポロ村の豊かな日常へと昇華されるのだ。
常識人管理人のエプロン姿の奮闘は、今日も村の平和と胃袋を完璧に守り抜いていた。
読んでいただきありがとうございます。
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