【03 ショタヌキの生活】
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・【03 ショタヌキの生活】
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家では割と落ち着いている感じで(他人行儀というヤツかもしれない)面倒事を起こさなかった。
一人でお風呂には普通に入るし、歯磨きとかも全然今、私の目の前でしている。
そもそも道具の類をあまり持っていなくて、祖父の買い置きの歯ブラシを使っている。マジで育児放棄おつ、じゃぁないんだよ。
私は祖母のベッドで、ショタヌキは祖父の布団で寝ることにした。
勿論同じ寝室で。祖父のように玄関で寝させることはしなかった。あれはアホ過ぎるから。
ショタヌキ、何か寝言でも言うかなとちょっと期待していたわけだけども、私は結構早めに寝てしまい、全然分からなかった。
この地域ではあやかしは普通に存在するものなので、恐怖心のようなものは一切無かった。
手汗かいてるあやかしに何かできるはずないだろ、って感じだ。
そう、ショタヌキは何もできなかった。
一睡もしていなかったのだ。
「卯愛さん、ダメかもしれない」
と真顔で言ったショタヌキに、内心爆笑しつつ、
「今日はカフェで私の仕事ぶりを見ているだけでいいから。まずは研修期間ってヤツね」
ショタヌキはコクンと頷いて、ふらふらしながら、洗面台へ向かっている。
歯を磨くということはこっぴどく言われているようだった。ちゃんとしたショタ特有の行動だ。
ショタヌキが歯磨きの準備を終えたら、私も歯を磨こうと思っているのに、ショタヌキはそのまま洗面台の前で歯磨きをし始めて、そういうところだぞ、とは思ってしまった。
自分中心のショタだと思いながら、私は朝ご飯の準備を始めた。
まあ喋らなければ、呼気のクサさを制すことができるからなぁ、ふぁぁ~、あひっ! あくびクサっ!
その時だった。
「うわぁぁああああああああああああああ!」
という叫び声が聞こえてきて、私のクサあくびが一気に充満っ? と思い、洗面台に駆けつけると、ショタヌキが口から泡を出して立って気絶、まさか私の呼気、ここまでとは、と思っていると、
「人間界の歯磨き粉の泡すごい……」
とショタヌキが言って、やれやれ、向こうは塩かな? と思った。というか昨日の夜、は、確かにコイツ、歯磨き粉使っていなかったような。
私はショタヌキへ、
「祥太くん、歯磨き粉を付け過ぎちゃダメだよ」
と言うと、ショタヌキはちょっと怪訝な顔をしながら、
「分かりました」
と答えて、まあ物分かりな台詞と表情が合っていないなんて、と思ってから、ティッシュを持ってきてあげようと、自分の部屋に戻った時に、私の呼気がクサいのでは? と思い、今度は無言でティッシュで服や床を拭いてあげると、笑顔で、
「ありがとうございます!」
と言った時に、私の呼気よ、と思ったところで、呼吸のことを呼気と自分で思ったこと初めてだったなと思った。
ショタヌキの歯磨きが終わり、私もすぐさま洗面台で歯磨きを開始。
ショタヌキは自分の服についた歯磨き粉をティッシュでずっとごしごししているが、当然取れるはずもなく。
さてと、そろそろ喋っていい呼気になっただろうから私は、
「あとで上着脱いで、水で洗うから。あっ、でも替えの服が」
と言ったところでショタヌキが妙に自信満々に、
「大丈夫です! 僕の道具一式は今日の朝にあやかし宅配によってこの家に届けられます!」
「そういうことは早く言いなさい!」
とつい私は怒号を飛ばしてしまい、ショタヌキはすぐにぶるぶると震えだした。
いやでも! 人が来るということじゃん! 早く歯磨きを終わらせて、化粧しないと! せめて! ベースメイクだけは!
朝ご飯の準備している場合じゃないじゃん! 化粧水くらいは最低でも塗っておかないと! と思ったその時だった。
ゴトン。
何このチャカが机に置かれたような音は。
ショタヌキの反乱? とか思いながらも、おそるおそる後ろを振り返ると、なんとそこには段ボールが置かれていて、ショタヌキがまだ震えながら、
「届き、まし、た……」
と言ってきて、えっ? あやかし宅配ってこんなニンテンドーダイレクトよりも直接なの? 直床段ボール(ちょくゆかだんぼーる)?
私は歯磨きを終えて、歯磨き粉の泡を吐いたところですぐにショタヌキへ、
「そうやって届くタイプなのっ?」
と聞くと、ショタヌキはコクンと頷いたところで、なぁ~んだ、と思った。
「ゴメン、ゴメン、さっきは大きな声を出して。化粧しないといけないと思って焦っただけだから」
とちゃんと理由を述べてあげると、ショタヌキはホッと一息ついてから、
「そういうことでしたかぁ、でも、卯愛さんは化粧しなくても綺麗です」
何そのショタ力。
ショタのショタたるゆえんじゃぁないんだよ。
するとボソッとショタヌキが、
「お母さんより全然っ」
と吐き捨てるように言って、ショタヌキのくせにママ派じゃないのかよ、とは思った。まあママの代わりをさせられるのは嫌だから有難いけども。
ショタヌキの闇を見たところで、まあまずはやっぱり朝ご飯だと思って、目玉焼きを焼くことにした。
歯磨き粉がついた服を洗うのはまあ後でいいや、食事スタートが一番だろ。食事は正義。食事はご機嫌メーターの一位。ご機嫌メーターとは?
いやそんないらない自問自答は本当にいらない。台所に立って、冷蔵庫から卵を二個取って、と。
ショタヌキは適当にテーブル(イス)に座るだろと思っていると、何故かショタヌキは左腕で右腕の手首を掴んで、棚の前で佇んでいるだけ。
陰キャの初顔合わせかよ。何故かイスに座らず立って憂いを帯びているヤツかよ。
「座っていいよ」
と私が普通に声を掛けると、
「すみません」
と言いながらイスに座ったみたいだ。イスを引く音とか聞こえたたし、多分そうだろう。
目玉焼きを二個同時にフライパンで焼いているため、白身がくっついてしまったが、まあ最初だし、ショタヌキのほうに白身多めにしてやろう。
パンはオーブンで焼いてあげようか、いやあのカリカリが苦手という子もいるから、まずはそのまま出して、どっちかどうか聞くか。
冷蔵庫の中の洗ってボウルに入れているレタスをそのまま出しでいいかな、箸とか使えるのか? 二人で箸つつくの大丈夫か? 私は別にどっちでもいいほうだけども。まあいいか。全部聞けばいい。ちょうど日本語喋っているし。
「ヘイ、おあがりごんすなぁ」
とつい一人でいる時に言う独り言をショタヌキに向かって放ってしまい、恥ずかしい。私の目玉焼きが震えてらぁ。
ショタヌキも人見知りマックスで「あ、ども」と小声で私から目を背けてしまい、思い切りツッコんくれよ、せめて、と思った。
私は何事も無かったように、
「レタスとかボウルのままで大丈夫?」
と言いながら冷蔵庫からボウルを取り出すと、ショタヌキは、
「はい」
と最低限のことしか言わず、何か、こう、そっちも雰囲気作りしてくれてもいいのでは? と夫婦時代の言葉が頭に浮かんだ。
いやいや、ショタヌキにイライラしてもしょうがない、向こうは四十五年生きているジジイではないんだ。
「箸は使える?」
「……はい」
と間をとってから俯いたショタヌキ。
「フォークもあるけども」
と私が言ってみると、
「お願いしま」
と”す”は声が先細り過ぎて聞こえなかった。
じゃあフォークしか使えないんじゃんと同時に、カフェでの包丁は夢のまた夢だなとも思った。
箸でかき混ぜるとかも難しいっぽい。ということは盛り付けもできないってことじゃん。フォークぶっ刺し盛り付けなんて無いもんな。
「箸も使えるといいけども、あやかしの世界には無いっぽい?」
と自分で言っていて、カフェに来るあやかしっぽい人(いつもの和装のお客さんなど)が普通に箸を使っているところを思い出す。
するとショタヌキが、
「ゴメンなさい……」
と重い空気を醸し出し始めて、カモシダシ・セブンじゃん、とまたしても思った。
全然お笑い芸人さんのカモシダ・セブンのこと知らないけども、語感でしか知らない状態で使っているけども。アベンジャーズ見てないでアベンジャーズかよって思うほうだけども。
何か、でもさ、箸とかそういう教育は事前にしておけよ、コイツに何の仕事ができるんだよ、まあいいか。
「とりあえずフォークもいいけども、箸も近くに置いてチャレンジしてね」
という私の言葉は空を切った。私はこの距離で無視されることが大嫌いなので、
「あぁ」
と爆発直前の声を発してしまった。
とりあえず全ての食べ物をテーブルの上に置いて、食事がスタートした。ご機嫌メーターとは? マジで。
こんな気分の悪い食事は久しぶりだと思っていると、ショタヌキが箸を持っては離してを繰り返していて、こっちに見せつけているのか、もはや見せしめだなと思ったその時に気付いた。
「箸の基本的な持ち方を知らないわけね」
「……はい……」
私は深呼吸してから、
「ゴメン、そういうことに気付かなかった」
と言いつつも、じゃあ言ってくれよとも思うけども、まあそれが人見知りというヤツなのだろう。
「じゃあとにかく朝から仕込みとかもあるし、フォークでご飯食べて、早くカフェに行こうかっ」
「すみません……」
なんて重苦しいタヌキなんだ、タヌキってもっとフッ軽では? キンタマ揺らして踊るだけでは?
クソぅ、難易度高過ぎる、今までの人生相談とは比べ物にならないぞ。これじゃぁ生き方相談だもんなぁ。
朝ご飯が終わり、上着を脱いでもらって、このショタヌキが昨日まで着ていた服は私の洗濯物と一緒に洗うことにして、段ボールの中を見ると、道具一式とか言っていたくせに服しかなくて、いや、服に包まれるように何かある……いいや、知っている、これは、ニンテンドースイッチだ……でも本体だけでドッグが無い。
「祥太くん、ニンテンドースイッチだけでドッグが無いけども」
と私が言うと、ショタヌキは愕然とした表情をしてから、ゆっくりと膝から崩れ落ち、
「お母さんに任すといっつもこうだ……」
と、そのままおでこを床にべったりつけた。
目の前にはタヌキの耳がついたファンシーなモップみたいなモノが床上にある。
いやでも、
「私は私で、ニンテンドースイッチのドッグを持ってるからさ、充電はできるよ」
するとショタヌキは目を輝かせながら顔をあげて、
「卯愛さん……」
とまるでロマンスが始まるように瞳をハートマークにしていた。
ショタヌキ、否、少年だよ、コイツはただの人間の少年だよ、ニンテンドースイッチに全BETしているだけのさぁ。
「私はフル充電してあるから、今日の仕事中は祥太くんのヤツを充電しながら行こうか」
「ありがとうございます!」
と立ち上がり、朝ご飯作ったことにもそのくらいの反応があればな、と思った。
大体の準備を終わらせて、一緒にカフェへ向かって歩き出した。




