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ショタヌキとのカフェは今日も思考する  作者: 伊藤テル


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【18 吉四六と上級キツネ】

・【18 吉四六と上級キツネ】


 その答えはすぐに分かった。

 今度は上級キツネが攻めてきたからだ。吉四六の親戚らしい。

 今回はお客さんが出払った、閉店直後にやって来た。

 そういう配慮は本当に有難いけども。竜神はカス気質が高い。

 またしてもトラップマニア撃退で名が勝手にあがった私を負かせば、自分の名があがるというカスの連鎖によるものだった。

 気付いた時には、血生臭い、獣の死体がカフェの床に転がっていた。

 イノシシというかハクビシンというか、そっち系の獣で、肌が既にただれていて、正直吐き気を催した。

「カフェは衛生法! 誰!」

 と叫んだところで、吉四六が叫んだ。

「この幻術は! 上級キツネです!」

 幻術、吉四六から聞いたことがある。

 あまりにも本物かと思う香りを使って、その場に無いモノを見せてくるというヤツだ。

 つまり!

「祥太くん! テントになって! 前の! 秋バーベキューで使った換気扇付きのテント!」

「分かった!」

 すぐにショタヌキは換気扇付きのテントに変化して、私と怜那と吉四六はそのテントの中に入った。

 テントのサイズは何だか意外と大きくなってしまっていて、天井につきそうというかついていて、かつ、先っちょが天井の板の隙間に刺さっている感じだった。大丈夫? 天井もショタヌキも。

 ショタヌキは自らの意志で換気扇を回しているようで、テントの中は血生臭い匂いも一切しなくなり、一応は対策完了となった。

 私は溜息をつきながら、

「突然だったね」

 と言ったところで吉四六が冒頭の話をしてくれた。

 最後に吉四六が本当に申し訳無さそうに、

「すみません……本当にあやかしは脳筋が多いんです……」

「ううん、だから吉四六のせいじゃないじゃない」

「でも俺がここにいるせいかも……」

 と言ったところで怜那も胸が痛んだような面持ちをした。

 私は大きく息を吸い込んで、声を荒らげた。

「そんなこと言うな! 怜那も吉四六も勿論祥太くんもいたければいていいの! カフェってそういうところだから! ちなみに私はいてほしいと思っている!」

 すると怜那が涙を浮かべながら、

「卯愛さぁん……」

 吉四六は強く頷き、

「有難うございます。絶対にこの状況を抜け出しましょう」

 と言ったところで、急に暴風が吹き荒れ始めて、何かカフェの中のモノが飛んでいるような音がしている。

「何これ! ヤバイ!」

 と叫んでしまうと、吉四六が、

「風のチカラでゴリ押ししてきたかもしれません!」

 怜那は頭を抑えながら、

「何それぇ! 匂いによる幻術だけじゃないのぉっ?」

 フライパンやら鍋やらがガラガラ音を立てて、花瓶は割れたような音がした。待って、祖父の花瓶なのに。安いヤツでありますように(多分安いヤツなので安心だけども)。

 風はびゅーびゅー吹いているけども、ショタヌキも踏ん張ってくれているのか、天井に刺さっていたおかげなのか、吹き飛ばされずに今は済んでいるけども、いずれは、って感じだ。

 私は吉四六へ、

「この上級キツネの居場所って分かる?」

「風を起こすには場所を目視していないといけないので、裏口のドアを開けてそこから風を吹き込んでいる可能性が高いです」

「じゃあそっちに吉四六の風で私の声を乗せて、私の台詞を聞こえさせることってできる?」

 ちょっとした沈黙のあとに吉四六はこう言った。

「できます。やってやります」

 多分……技術的にはまだ難しいといった感じだったけども、ここで限界突破してやるといった感じだった。

 確かに不規則に舞っているだろう風に私の声を乗せるなんて高等技術だと思う。雑に風を起こすよりも難しいだろう。

 でも吉四六はやると言ってくれた。じゃあ私はそれを信じるだけだ。

 怜那は何を言うのか、しんと黙ってこちらを伺っている。

 私は呼吸を整えて叫んだ。

「幻使えるのに! 直接的な暴風って! めっちゃダサいね!」

 何かすげぇデカい声が出たので、もしかしたら風に声を乗せなくても聞こえたかも。いいや吉四六のチカラがしっかりこもっていたんだ。

 即座に知らんジジイの声で、

「うらぁぁあああああああああああああああああああああああああ!」

 と聞こえてきて、テントが開いた、瞬間に怜那が熱湯ビームをそいつの顔めがけて発射した。

「あぁぁぁぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁああああああああああああああああああああああああああ!」

 と、うらぁぁの続きみたいにそのまま叫んだ、上級キツネと思われるジジイ。ジジイじゃなくて結構普通のお兄さんだった。

 これで勝ちだなと思ったその時だった。

 上級キツネはそのまま仰け反るように倒れたわけだけども、ソイツにマウントポジションをとって、吉四六が思い切り殴り始めたのだ!

「ストップ! ストップ! 吉四六!」

 私は吉四六の腰に飛びついて、そのまま引っ張り込んだが、力が強い。

 すると即座に怜那が吉四六の顔に多分冷水を掛けて、吉四六は止まった(飛び散ってきた水が冷たかったので)。

 怜那が顔を真っ赤にして怒鳴った。

「カスに成り下がるな! 吉四六!」

 我に返った吉四六はマウントポジションのままだけども、肩を落として、反省しているような顔をした。

 まあマウントポジションのまま、相手に威圧や固定をさせておくのは正しい方法だと思いながら、

「吉四六、殴らなくていいから。もう吉四六の、私たちの勝ちだから」

 吉四六は少し悔しそうな顔になり、

「卯愛さんに……こんな連中ばっかりと思われたくなくて……」

 怜那が吉四六の肩を強く掴みながら、

「で、こんな連中に成り下がったらダメじゃん! いつもの冷静な吉四六でいなよ!」

「ゴメン、怜那……」

 また正論を言われた面持ちになり、静かになった吉四六。

 さて、このカスニキをどうするか。

 カスニキってヤニカスとも響き似てるなぁ、と思いつつ、

「意味無い争いおもんない! 料理対決にしろ!」

 と私がそのカスニキに対して言うと、

「でも……吉四六や怜那、ショタヌキのチカラで勝っただけだろ……」

 とカスみたいなことを上乗せしてきて、カス煮込みうどんかよ、と思った。

 すると吉四六が、

「違う。俺らだけじゃ何もできない。卯愛さんが的確な指示をしてくれるからだ」

 カスニキは唇を噛むように、

「何の術も持たない低種族なのに……」

「それも違う。人間はみんなを包み込むような優しいチカラを持っている。俺も怜那も祥太だって、卯愛さんに救われているんだ」

 ここで怜那が割って入るように、

「で、トラップマニアの時にちゃんと卯愛さんに救われたあやかし連中、気持ちはどうぅっ?」

 と煽るように笑った。

 カスニキは何も発さなくなった。

 吉四六が溜息をついてから、

「今から俺は阿紀良あきらさん呼びますから」

 と言うと、カスニキが急に手足をバタバタし始めたけども、胴体はしっかり吉四六が抑えている。

「やめろ! 阿紀良を呼ぶな!」

 何か、相当な手練れなのかな? その人、というかあやかし、あれかな、ショタヌキの母親の時にいた警察官かな?

 その後、ショタヌキも元に戻って、ぺたんと床にお尻をついて休み、怜那はイスに着いていたのでコーヒーを出して、私もイスに座って待っていると、なんと、いつもの和装のお客さんがやってきたのだ。

 カスニキはこの世の終わりみたいな顔をしていて、一体何なんだと思うと、和装のお客さんがカスニキに向かって手をかざして、

「こういうヤツは地獄巡りでもしていればいい」

 と言った刹那、そのカスニキは口から泡を吹いて、ガクンと脱力した。

「じゃあ運びますね、吉四六も怜那も一緒に帰りましょうか」

 和装のお客さんはそう言って、カスニキを担いだ。

 私は疑問として、

「和装のお客さんは、何なんですか?」

 と、和田アキ子の何をしてはるかたなんですか? ばりに聞くと、

 和装のお客さんは優しく微笑みながら、

「内緒です」

 と人差し指を唇に当てて、そう言って、二度と振り返ることは無かった(次の日、普通にお客さんとして来ていた)。

 吉四六と怜那は私に会釈して、帰っていった(勿論次の日、普通に来た)。

 私はショタヌキへ、

「あの和装のお客さん、阿紀良さんって言うらしいんだけども、どういう人か分かる?」

「分かんない。僕」

 と若干ヨダレを垂らしそうな勢いでそう言ったので、疲れてんだな、と思って一緒に手を繋いで帰った。


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