おっさん不思議体験記05話 番外編 トキさん昔を語る
おっさん不思議体験記05話 番外編 トキさん昔を語る
私が土地神だってバレちゃったからここで少し私の過去を語るわね
私は庄屋の家の10番目の娘として生まれたらしいの
10人いる子の中で10番目の娘だから十姫となずけられたわ
一応私は本妻の子ではあったらしいけど10人目ともなるとあまり甘やかされたりはしないのよ
そんなだから育てられはしたけど父親とか母親と一緒にいたって記憶はあまりないの
兄姉たちとはそこそこ遊んだりしていた記憶はあるけどそれも少ししか覚えていないわ
それに私は物心つく頃には人とは違うものが見えていたしね
人と違うものと言って何が違うのかと聞かれると困るけど当時の私はどうやら普通の人には見えていないものが見えていたみたいなの
私は見えるし話も出来ているのにその話している人が他の人には見えていないの
そんなだから家の者からはだんだんと気味悪がられたわ
私が10歳ぐらいの時かしら…国に飢饉が起きたわ
雨が降らず作物が育たなくなり井戸も枯れはじめ食料もなくなってきたの
そんな時だから土地神に『生贄』を出してどうにかしてもらおうと考える大人が出てきたわ
うちの親も同じ考えでだれを生贄にするか相談したわ
うちは庄屋で子供も多いし私は気味悪がられていたからちょうどよかったのね、私は生贄に出されたわ
でもね私は逆に喜んでいたのよ育ててくれてはいるけど愛情も感じない親にはこちらも何も感じない物なのよ…
だから生贄に出され死んでも良いしそのまま逃げて他で暮らすのも良いと考えていたわ
それにお話し出来てるみんなに見えない者の中には『こちらに来ればいいのに』と言ってくれる者もいたから…
そんなわけで土地神の生贄にされたんだけど土地神も
「お前など貰ってももう何もしてやれん」
といって私を家に帰したのよ
でもそれでは皆が納得しなくて私はもう一度生贄に出されたわ
でも土地神が言うのよ
「二度来られても同じだ
お前なんぞ貰っても自分にはもうこの地を救う神力がない、この地を守れん
守りたいのならお前が土地神になってこの地を救って見せろ
救えるだけの力をお前にくれてやる」
「なぜ土地神様は力がなくなったの?」
「それはお前たちのほうがわかるのではないか?土地神と言えどもできることできないものがある
それを見極めお前が皆に伝えてゆくのだ」
そういうと私の顔を両手で挟み土地神がおでこにおでこを当ててきたわ
ちから?というか何というのかわからないけれど何かが体に入ってくるのを感じたわ
「これでお前に土地神の力を移した、生きたまま土地神になったがいずれ肉体は滅び真の神になるだろう
私は輪廻にかえる、この地を救えるか見捨てるかはお前次第だ
精々がんばってみてくれ」
といって消えていったわ
私は生きたまま神になったことで不思議なことを起こせるようになったわ
雨を望めば雨を降らせ晴れを望めば晴れになった
でも正直こんな力貰って土地を救って見せろと言われても10歳ぐらいの小娘にできるわけないと思わない?
私はそのことを伝えに家に戻ったわ
不思議なことを起こせるようになったと伝えると両親はうってかわって私をかまうようになった
『今更遅いのよ』
私の心はまだ冷めていたわ
そして庄屋は家に私を祭る祠を作ったわ
その祠は寝食できるほど大きなものだったわ
今も残る祠はそれの名残ね
何度か建て直されているけれど大きさもあまり変わらないで同じ場所に立っているわ
祠が立ち信仰されはじめると力が増すらしくお供えが届くたびに力が上がる感じがしたわ
神様って信仰されて力が増すものなのね
でもあの土地神はなぜ力をなくしたのかしらね?信仰はされていたはずなのに…
数年たち私は一応成長し大人になっていたわ、同時に近所のお寺に鬼が住み始めたとかいう噂が流れ
討伐隊が組まれたわ
鬼はこちらに対して何もしてこないのだけど人々は鬼がいるというだけで怖がり討伐しようと考えたらしいわ
鬼はお寺に立てこもり人々が門を破ろうとしても破れずお寺はびくともしなかったらしいわ
「トキ様、あの鬼をどうにかしてくれませんか?怖くて外も歩けません」
土地神の私に何とかしてくれと頼みに来る人が何人もきたわ
私からすれば何もしない鬼を怖いから討伐してしまおうと思ってる人たちのほうが怖いけれど
『土地神なんだからどうにかしろ』
と言われたらどうにかしようと思ってしまうわ
しかたなくお寺に足を運びその鬼と話だけでもしてみようと思ったの
私は一人で鬼のいるお寺へ向かい会話を試みたわ
でも監視を付けられたようね
隠れて後をついてきてる者がいるわね…
「ここに居る鬼よ、私はここの土地神よ
少し話がしたいから中に入れてくれないかしら?」
門の外から声をかけてみたわ
すると中から
「土地神だと?なんでそんなものが話をしたいとか言ってくるのだ?土地神はそんなことまでするのか?
まぁよい話ぐらい聞いてやろう」
というと大門の横の小さい門が開いたわ
中に入ると赤い肌の6尺~7尺ぐらいある人のようなものが目に入ったわ、頭には確かに角があるこれが鬼なのね
「あなたがここの鬼なの?なぜこの地に来たの?確かにここは廃寺ではあるけども本堂もお墓もまだあるのだけれど…」
「矢継ぎ早に聞かれても困るが地獄を追い出されてな、行く場所がなくてここに滞在していたんだ
ちょうど住める小さい小屋もあって都合がよかったんだ、ここに居てはダメか?」
「私はいても良いと思うけど土地の人々が怖がるのよ
あなたは姿とか変えられる?少し作戦があるのよ…」
「できないことはないがどうするんだ?」
「作戦はこんな感じよ
あなたには死んだふりをしてもらい壺に肉体を封印という形をとるわ、壺は私の祠で管理
あなたは1週間ほど姿を見せないでいてもらって
その後変化の術でお寺の新任の和尚ということで庄屋に私とあいさつしに行く
そのままお寺に住むってことでどう?
ここの人たちなら簡単に騙せると思うわよ」
「そんな簡単に騙せるものなのか…しかし背に腹はかえられん討伐隊に再度来られても困るからな…」
「じゃ死んでね、あとは任せて」
「わかったそうしてくれ『ギャーくちおしやまさか倒されるとわ!』」
この鬼『大根すぎる!』まぁいいわ急いで実行しましょう
監視の者も断末魔は聞こえたでしょうから…
作戦実行後、案の定『庄屋』は騙されてくれたわ
これで鬼も私も目的は達成されたわ
この時の鬼が今の鬼さんね
色々あって私が鬼さんを救ってあげたけどこれでよくごまかせたなと今でも思うわ
鬼の一件から人々のお願いは増えてきたわ
自分で努力もしないでお願いするもの、簡単なことでもお願いしてきたり呪ってくれなんてものまであったわ
元の土地神が言っていたのはこういうことだったのね
出来る出来ないははっきり言ってあげないと人のためにならないのね、よくわかったわ
こんな大人たちばかり見ていると嫌になる
でも私の心を癒してくれるものもあるの、それは小さな子供たちだったわ
子供たちは祠の前で元気いっぱいに遊び、疲れて寝ちゃうほど動き回るのよ
それをみていると私の冷めた心の中に何か温かいものが芽生えてくるの…
その後数十年、私の親や周りの大人たちはみな亡くなったわ
私の周りには元土地神を信仰していた者もいなくなったわ
そのころになると私へのお願いはほとんどなくなり自分たちで何とかするように人々は努力するようになっていたわ
変われば変わるものよね
神に頼らなくても人間は生きていけるのよ
でも飢饉のときは最低限の手助けはしたわ、自分の子供みたいで助けたくなったの…
さらに数十年後私の肉体の終わりが来たわ、寿命ね
肉体から魂が抜けると自分も見えるのね
私の周りにはたくさんのお供えとたくさんの泣いて悲しむ人たちが見えたわ…
今までありがとう…
肉体が滅び人間の生を終えると地獄の閻魔大王の元に行くことになるわ
ここで閻魔大王は私を裁定するのだけど…
「トキよお前は生前神力を得、人々を導き神とあがめられた
よって極楽浄土行きとする」
なんて言ったのよ私は異議を申し立てたわ
「閻魔大王、私『極楽浄土』なんて行きたくないのよ
極楽なんて行っても面白くもないわ
それなら現世に戻って真の神になってやるわ
せっかく土地神の力を得たのだからそれを活かしてたのしく生きるわ」
極楽浄土なんてきっぱりお断りさせていただくわ
「極楽浄土は魂にとって一番の誉れなのだがな
極楽浄土を断る人間など今までいたことがない
さらに死んでここに来たのに神になって楽しく生きる?か
おもしろいことをいう、気に入った
トキは真の土地神となり現世に戻れ」
「ありがとう閻魔大王でも肉体はなくなるのよね?真の神ってどういうものなのかしら?
閻魔大王様教えてくださるかしら?」
「肉体はなくなるが霊体となり色々できるようにはなる
が、あまり詳しくは教えられん
知りたいと思うなら地獄の書物を読むとよい
お前は神なのだからここに居ても障害になることもない
神としての力の使い方も覚えていくがよいぞ」
「わかったわ、お言葉に甘えてここで神のことを詳しく調べてから現世に戻るわ」
「そうするがよいトキ」
しかし閻魔大王って見かけは普通の小さいおじさんなのね…
閻魔大王との話はまだあるけど話す機会があったら話すわ
現世の土地神に戻るときに十姫武蔵大奈良原地母神という恥ずかしい名前が付けられたわ
私の名の『十姫』と『武蔵大奈良原』は土地の名、『地母神』は女の神だからだそうよ
安直よね、だから好きになれないし恥ずかしいのよ…
それとなぜか現世に戻るときに10歳ぐらいの小娘になっていたわ
おばぁちゃんの姿よりは良いけど10歳の小娘じゃ色気でいうこと聞かすことはできないわね…
まぁこれはこれで動きやすくていいわ
あぁそうね追記として少しだけ…
黒猫ちゃんの主さんは私がむかし祠にいたときに話しかけてきた子供なの
その時は私のことも見えていたのに今は見えないみたいね
その後黒猫ちゃんとの縁があったみたいだから黒猫ちゃんを導いたの
黒猫ちゃんの主さんは元々霊感があるみたいなんだけど
『見えない見たくない』と強く思ってるらしくて
『見えても見えてない』と思うようになったみたいね
ネタ帳にはびっしり怪異ネタが書かれているから感覚は逆に鋭くなってるわね
ネタ帳は黒猫ちゃんが文字を読めるようになったら読んで話してくれるかもしれないわ
と、まぁ私の大まかな過去話はこんなものよ
これからも黒猫ちゃんの成長をこの目で見ていきたいわ
私の楽しみの一つなのよ
ふふふ♡
おっさん不思議体験記05話 番外編 トキさん昔を語る 終
トキさんの話はいつかいても面白い
でもこの話少しいろいろ詰めすぎました
楽しんでいただけるとよいのですが…
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