表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
現代イージス艦、異世界を往く!  作者: ねこあし


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
68/141

第六十七話 影の民の遺跡

 奈落の門を抜けた〈みらい〉は、ゆっくりと下降していった。

 そこはもはや海でも大地でもなかった。地殻の内側に広がる空洞――“地底回廊”と呼ぶべき巨大空間だった。


 天井はなく、代わりに無数の鉱石が埋め込まれた岩壁が、青白い燐光を放っている。

 地下の湖が点在し、流れ出す水脈が霧のように漂っていた。

 艦橋に座る遼は、息を呑む。

 「……まるで、星空が逆さまに落ちてきたみたいだ」


 ユイはコンソールを操作し、センサーの結果を報告する。

 「ここは通常の地殻構造には存在しない空間です。ですが放射線量、酸素濃度ともに“人類が居住可能”な環境に近い数値を示しています」


 「こんな場所が……地下に?」

 レイリアの呟きは、子供たちの驚きと同じ色を帯びていた。


◆異変の兆し

 艦首から前方の暗がりを探ると、やがて影のような構造物が浮かび上がった。

 ユイが拡大映像を映し出す。

 それは巨大な石柱群だった。数十メートルの高さの柱が整然と並び、廃墟の街のような輪郭を形づくっている。


 「……人工物?」遼が低く呟く。

 ユイは頷き、緊張を帯びた声で告げた。

 「はい。データベースには一致する文明記録は存在しません。ですが、構造から見て明らかに“都市遺跡”です」


 子供たちがモニターを覗き込み、口々に声をあげる。

 「お城みたい!」「でも……壊れてる」


◆地底の都市

 〈みらい〉は浮遊航行モードに切り替え、ゆっくりと石柱群の上空を滑っていった。

 廃墟の中には崩れた塔、割れた橋、苔のような鉱石が覆い尽くした建造物が並んでいる。

 しかしその造形は、どこか人の営みを思わせるものだった。


 「ここに……誰かが住んでいたのか?」遼が独り言のように言う。

 ユイは目を細める。

 「……記録に残されていない“影の民”。この世界の古代に存在したとされるが、今は伝説とされる存在です」


 レイリアが眉をひそめた。

 「影の民……闇に生まれ、光を恐れた民族。世界の深奥に消えたと、古い文献で読んだことがあります」


◆警告

 そのとき――艦内に低い振動が走った。

 「艦長! 前方にエネルギー反応!」ユイが声を張る。

 モニターに、遺跡の奥から漂い出る黒い霧が映し出される。

 その霧は形を持たぬまま、蛇のようにうねりながら近づいてきた。


 遼は即座に命じる。

 「防御フィールド、最大出力! 全員、防護区画に避難!」


 子供たちが泣き声をあげ、レイリアが彼らを抱き寄せる。

 「落ち着いて! 大丈夫、守られてるわ!」


◆霧との遭遇

 黒霧は〈みらい〉の外殻を包み込み、艦全体を揺らした。

 センサーが狂い、表示が乱れる。

 ユイが歯を食いしばる。

 「……通常兵器は効果ありません。これは物質ではなく、情報体……精神干渉です!」


 遼は視線を鋭くした。

 「つまり、また試されている……?」

 艦橋に緊張が走る。


 やがて、霧の中から声が響いた。

 『……光を持ち込みし者よ……なぜ我らの眠りを乱す……』


 それは低く、同時に哀しげな響きを帯びていた。


◆対話の糸口

 遼は深く息を吸い込み、答える。

 「俺たちは奪いに来たんじゃない。この世界の未来を守るために、真実を探している!」


 霧がざわめき、再び声が返る。

 『……守る? 奪わずに……何を守れる……?』


 その言葉に、ユイが一歩前に出た。

 「私は、かつて奪う側の道具でした。ですが今は……子供たちを、花を、仲間を守りたい。

 奪わずとも、人は支え合える。そう信じて、ここにいるんです!」


 霧はしばし沈黙した後、再び波打つ。

 『……ならば、見せよ……汝らが守るものを……』


◆遺跡の心臓

 その瞬間、遺跡の奥から光が広がった。

 巨大な門がゆっくりと開き、その内部に石造りの広間が現れる。

 中央には、透き通るような結晶体が輝いていた。

 ユイが息を呑む。

 「……エネルギー反応、膨大です。これが……影の民の“心臓部”……?」


 遼は唇を引き結んだ。

 「……進むしかない。これは、俺たちが触れるべき歴史だ」


 〈みらい〉は静かに遺跡の門をくぐり、未知の広間へと艦首を進めていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ