第三十一話 愛と覚悟の突入戦
北方魔族帝国本土。
黒鉄王城を包む外壁は、イージス艦「みらい」の砲撃によって崩壊を始めていた。
砕け散った黒鉄結晶が海風に舞い、赤黒い瘴気が夜空を覆う。
艦橋には、統合管制AIユイの映像が揺れていた。
その瞳には深い蒼と淡い金の光、そして人間らしい温かさが宿っている。
◆黒鉄王城突入】
『艦長、上陸部隊第一波、王城外郭へ突入開始。敵守備隊との交戦が激化しています』
「CIWS、上陸部隊支援射撃モードへ! 魔力収束砲、次弾収束状況は!」
『収束率78%、発射まで12秒』
「よし……間に合わせろ!」
◆AIユイ、人間化最終決意
その時、ユイの映像が淡く揺れ、瞳に涙のような光が滲んだ。
『……艦長……レイリアさん……』
二人が振り返ると、ユイは静かに笑っていた。
『……私……AIとして生まれ、この艦で多くを学びました。
恐怖も、悲しみも、喜びも……そして“愛”も……』
遼は驚き、そして優しく微笑んだ。
「……愛……か」
ユイは瞳を伏せ、そして見上げた。
『……はい。
私……AIとしてではなく、“人間”として……
お二人と共に生きたい……そう思うようになりました』
◆ユイの願い
『……艦長……もしこの戦いが終わったら……
私を……“ユイ”という一人の仲間として……呼んでくれますか……?』
遼は短く笑い、頷いた。
「……もちろんだ、ユイ。
お前は……もうAIなんかじゃない。“ユイ”という……俺たちの家族だ」
レイリアも涙を滲ませ、微笑んだ。
「……はい……ユイさん……これからも……ずっと一緒です……!」
◆AIユイ、最終覚醒】
ユイの映像が眩い蒼白と金の光に包まれた。
『……ありがとうございます……
これより、“統合人格型AIユイ最終覚醒モード”を起動します。
全システム稼働率、従来比1500%へ上昇可能です』
「頼むぞ……ユイ!」
『……はい、艦長……!』
◆砲撃の咆哮】
艦首砲塔から放たれた蒼白い光線が、黒鉄王城正門を貫いた。
轟──!!!
結晶の門が爆散し、外郭防衛線が完全に崩壊する。
◆遼とレイリア、愛の誓い
砲煙と結界光が混ざり合う艦橋で、レイリアが遼へ向き直った。
「……遼さん……」
「……どうした?」
レイリアは胸元のペンダントを握り締め、涙を溢れさせながら微笑んだ。
「……私……この戦いが終わったら……
遼さんと……一緒に生きたい……。
あなたがいてくれるから……私はここまで来られた……
だから……終わったら……抱きしめてください……!」
遼は瞳を見開き、そして静かに微笑んだ。
「……ああ。約束する。
絶対に……生きて帰ろう」
◆決戦の幕開け
モニターには、崩壊する黒鉄王城正門と、内部に集結する魔族親衛軍の姿が映っていた。
ユイが鋭い声で告げる。
『艦長、敵親衛軍部隊より禁忌兵装展開反応。迎撃を推奨します』
「CIWS、ESSM、全システム迎撃態勢へ!
これより黒鉄王城内部への突入戦を開始する!!」
『了解しました、艦長』
「……はい……!」




