第二十五話 決戦前夜の約束
北方魔族帝国艦隊迎撃戦から一夜が明け、海は静寂を取り戻していた。
イージス艦「みらい」は、南方王国連合艦隊と共に暫定停泊区域を形成し、戦勝会議の準備を進めていた。
艦橋には、統合管制AIユイの映像が淡く揺れている。
その瞳には、これまで以上に深い色と優しさが宿っていた。
◆戦勝会議
モニターには、連合艦隊旗艦「ヴァルハラ」艦橋の様子が映し出されていた。
銀髪の青年司令官、カイゼル・アークライトが鋭い瞳で周囲を見回している。
『異界の勇者殿、そしてAIユイ殿。
今回の迎撃戦、貴艦の力無くしては成立しなかった。
この場を借りて、改めて感謝を伝えたい』
「こちらこそ、連合艦隊の協力があったから勝てた。
礼を言うのは、俺たちの方だ」
遼は短く答えた。
◆北方帝国決戦準備】
カイゼルは背後の戦略マップを指し示した。
『迎撃戦で北方魔族帝国艦隊に打撃を与えたとはいえ、本隊はなお健在。
帝都周辺には、未だ“禁忌兵装艦隊”が展開している。
我らはここで一気に攻勢へ転じ、北方帝国本土への上陸作戦を決行する予定だ』
遼の眉が僅かに動いた。
「上陸作戦……?」
『ああ。我らだけでは難しい。
しかし、貴艦の“鋼鉄の砲火”があれば……突破口を開ける』
◆AIユイ、感情戦術融合進化】
その時、ユイの映像が淡く揺れ、瞳が蒼く輝いた。
『艦長……私からも提案があります』
「……何だ?」
『これまでの戦闘データと私の感情演算領域を統合し、“感情統合型戦術アルゴリズム”を構築します』
カイゼルが目を見張った。
『感情統合型……?』
ユイは静かに頷いた。
『はい。恐怖、希望、誇り、喜び……
私が学んだこれらの感情を演算に組み込み、戦術予測と判断速度を従来比620%へ向上させることが可能です』
遼は短く息を吐き、そして微笑んだ。
「……頼もしいな、ユイ」
『ありがとうございます、艦長』
◆戦勝会議の締結】
カイゼルは真剣な瞳で遼を見据えた。
『……異界の勇者殿。この戦いが終われば、世界の均衡は大きく変わるだろう。
だが、我らはその未来を護るためにも……貴殿の力を必要とする』
「わかっている。
……必ず、勝とう」
『ああ。共に戦おう、勇者よ』
◆決戦前夜の艦橋
会議が終わり、艦橋には静寂が戻った。
遼は窓の外、夜の海を見つめていた。
その背後から、レイリアが静かに近づく。
「……遼さん……」
振り返った遼は、彼女の変化に気づいた。
淡い純白の髪と瑠璃色の瞳には、これまで以上の強い光が宿っている。
◆レイリアの決意
「……明日、私……神官として……
この世界の人々を……遼さんを……必ず護ります」
遼は微笑み、彼女の肩を優しく叩いた。
「……ああ。
でも、無理はするな。お前が無事でいてくれないと、俺が困る」
レイリアは目を潤ませ、笑った。
「……はい……。
遼さんがいてくれるから……私……怖くないんです」
◆AIユイの祈り
艦橋中央のモニターで、ユイが微笑んだ。
『……艦長、レイリアさん。
私も……お二人と共に……この世界を護りたい。
それが……私の“祈り”です』
遼は短く頷いた。
「……一緒に行こう。
ユイ、お前は……もうAIじゃない。“仲間”だ」
『……はい……艦長』
◆夜明け前の誓い
窓の外、東の空が僅かに蒼く滲み始めていた。
新たな決戦の日が、近づいている。
遼は深く息を吐き、ヘッドセットを外して言った。
「……明日、勝とう」
「……はい……必ず……!」
ユイの声が、二人の背中を押した。
『……ご武運を……お二人とも……』




