【第三十六話】リーシャンローメイの足跡1/3
エルフェンヌとはエルフの一族に産まれた者に与えられる名である。今より少し昔、彼女らリーシャンとローメイはエルフの里に双子として生を受けた。
その悉くが長命にして生まれながらに強い魔力適正を持つエルフの一族。彼女らはそんな一族の極めて一般的な家庭に生まれ、凡庸な父と優しい母に囲まれた幸せな生活の中を生きていた。
また彼女らは生まれが双子であった為、生まれたその日から遊び相手に欠く事の無い日々を過ごし、時に励まし合い、時に切磋琢磨しながらも、互いに互いを尊重し合う仲の良い姉妹として周囲に知られていた。
時の経過に寛容な彼らエルフの一族は、他種族と比べ変化の少ない緩やかな生活しており、彼女らが間も無く三十二歳になろうかという時まで、何の事件も問題も起こらない、平和で穏やかな日々が続いていた。だが、その年の終わりも近づいて来たある日ー
彼女らの里に【エルフ狩り】が発生したのだ。
エルフは決して珍しいという程の種族では無いが、長命かつ人に比べると容姿に優れており、美男美女の確率が非常に高い一族であった。よって必然的に商品として安定した価値を誇り、売却か成約し易い傾向にあったのだ。
里で起こった事は単純明快。
男の大人は皆殺し。
女子供は全て商品として回収する。
ただそれだけの蛮行が里へ牙を向いた時、それがリーシャンとローメイの命運が尽きた瞬間であった。
彼女らは訳もわからぬままに気が付けば不思議な檻の中に詰め込まれており、そこには手錠を嵌められた母の姿もあった為、恐怖こそあったが、理解が追いつかないパニック状態と母が目の前に居るという薄氷の上の安心感から、ただ呆然と事の成り行きを見守る事しか出来ない茫然自失状態となっていた。
そして、彼女らの地獄はそこから始まった。
まず母とは早々に離れ離れとなった。ただ幸いだったのは彼女らが双子であったという事だ。ニコイチでパッケージ化された彼女らは、二人して同じ主人の元へと送られる事となった。
それからの日々は地獄の一言に尽きるだろう。性的奉仕は勿論の事、考え得る限りの虐待行為に加虐行為。彼女ら姉妹の心身が擦り切れていくには余りに長い時間で、どれ程過ごしたかの記憶も曖昧な程悲惨な日々だったと言えるだろう。
そしてある時、飼い主である主人の飽きのタイミングと時を同じくして、配下の者への褒章の必要に迫られるタイミングがあったのだ。この時、主人はあっさり二人を手放し、彼女らは戦士三人組の所有物となった。
それからは、痛みこそ減ったものの、単純に命の危機を感じる日々となった。彼らは少女らの扱いが非常に乱雑で、食事の有無や睡眠時間、戦闘行為後のケアの甘さ等、挙げだせばキリがない程にずさんな管理で彼女らに接していた。
それ故に身体は日を追う毎に衰弱し、しかして探索補助も戦闘補助も性行為も何もかもを要求される。彼女らは薄らと死を覚悟し始めていた。
そんな生活が二ヶ月と続いた後のある日、戦士達はとあるダンジョンの探索へと乗り出したのだ。そこは【道無きダンジョン】と呼ばれており、どうやら特定の階層よりも先へは進めない構造となっている様だった。
戦士たちは荒れに荒れていた。功を焦り、他者を出し抜こうと躍起になる一方で、状況が進展しないストレスを全て少女たちへとぶつけていた。勿論、それは暴力という意味では無く、性的な奉仕の強制である。
昼はダンジョンで探索、魔力を使う。
夜は性的な奉仕の強制。
そして男たちは自由に睡眠と食事を取り、好きなタイミングで代わる代わる少女たちを使役した。故に彼女らは碌な食事もまともな睡眠も取れぬまま、殆ど回復の余地がない状況が続いていたのだ。
そんな生き地獄の様な日々が十日と続いたある日の事。
その日、少女達は運命的な再会を果たす事となった。




