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奴隷少女とダンジョンを突破するのはダメなのだろうか  作者: 生くっぱ
三章 嘆きのダンジョンと双子の過去
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【第三十三話】外される枷

「メモによると必要な素材は……え?」

「何が書かれているのですか?」

「いや、ウィンドバットの翼にサイクロンウルフのツノ、キラーホークの爪、何一つ分からないのだが」

「ダンジョンに出現する魔物の可能性があります。ギルドに確認してそこを探索するのは如何でしょうか?」

「天才だ、それでいこう。ルクレティアが居て助かった」

「へ!? そ、そんなの当然ですよ、わ私はご主人様のお役に立てれば……あぅ、えへへ」


 強がるルクレティアの頭を軽く撫でてやり、それにより彼女は思わず破顔していた。身長差からその手の位置が非常に心地よく、また耳を含めた手触りが気持ち良い為、こちらの気分までもが向上する。これが噂に聞くウィンウィンって奴か。


「あの、それ、私の……」

「そうだな。リーシャンは【風】を得意とするのだろ?」

「え、ど、どうして……」

「俺は【鑑定】が使えるからな。他言無用で頼む」

「あ、だから……」

「ん?」

「いえ、その、でも……」

「リーシャンも俺の仲間だろ?」

「あぅ、……あの……あぅぅ……」


 リーシャンの頭も軽く撫でてやったら、心なしが頬を赤らめつつ大人しくなってしまった。うーむ、直接的なスキンシップは早計過ぎたか?


 リーシャンはその綺麗な長耳を真横からやや上方向に伸ばし、耳の先も僅かに赤みを帯びている気がする。少し緑掛かった白色の髪の毛はボサっと肩の辺りで切られており、切り揃えたと言うよりかは【切られた】という雰囲気を醸し出している。


 前の所有者があの三馬鹿なのだからやりかねない。


 身長はルクレティアよりも更に低く、シルエット的にはかなり小柄で、どうもスリムな体型と言うよりも食事が足りていない雰囲気だ。今日からはちゃんと食べて貰わないとな。


「あ、あの……」


 頭を撫でられながら、リーシャンが思い切った表情でこちらに何かを伝えようとしている。何だ、何かマズったか?


「ローメイは……」

「あぁ、その事か」


 隣を見やれば姉が妹かほぼ瓜二つのローメイが申し訳なさそうに鎮座していた。


「心配するな、次はローメイだ。すまないとは思うが、同時に進行するのは無理だからな。少し待ってくれ」

「ひゃぅ、……ぇ……僕も?」

「当たり前だろ」

「……あぅぅ……んん……」


 空いていた左手でローメイの頭も軽く撫でてみる。すると彼女は最初こそ少し怯えた雰囲気を見せたものの、そこからは満更でもない表情で俺の手を受け入れてくれた。


 リーシャンとローメイの違いは第一に【一人称】。リーシャンは【私】と言い、ローメイは【僕】と表現している。その上でローメイの髪は白色に僅かに黄色味が帯びており、光に透けさせると違いが分かり易い。だがダンジョンなどの暗がりで、パッと見ただけでは同じに見えても不思議はないだろう。それくらい瓜二つな二人だ。


 そして彼女もまた耳が長く、こちらはやや下むきに耳が伸びている。そんな長い耳の先と頬を僅かに赤く染め、薄目を開きながら俺の手に為されるがままに撫でられている。可愛いものだ。


「……しまった」

「え?」


 余りにも自然過ぎて失念していた。俺は二人の表情を見ながら視線を僅かにずらし、首の【それ】へと目をやった。……首輪をそのままにしてしまっている。最低なうっかりだなこれは。


「二人共、俺の前へ」

「……はい」

「……はい」


 どこか諦めた様な、観念している雰囲気で俺の前に並び、今にも泣き出しそうな表情を見せるリーシャンとローメイ。


 いやそういうのじゃないからな。


「解錠」

「……え!?」

「……え!?」


 ガチャリと、鍵が外れる音がしたのを確認すると、俺は二人の首からそっと首輪を抜き取った。ま、これで少し気が楽になってくれれば良いのだがな。


「あ、あれ?」

「これって……?」

「【そんな物】必要ないだろ? 俺はお前たちを支配したい訳じゃないんだ。今すぐにとは言わないが、ゆくゆくは仲間として、背中を預けられればと思っているよ」

「……え、えっと……え?」

「……? あ、あの……」

「無理に応える必要もない。ゆっくりいこう」

「……」

「……」


 この二人はルクレティアと違い、劣悪な環境下の【奴隷生活経験者】だ。環境の変化に戸惑う気持ちも考慮してやらないと、こちらが焦っては追い詰めかねない。


「ではギルドへ確認に向かおう」

「錬成を目的とするのですよね?」

「そうだな」

「錬成技師として活動しているドワーフに心当たりがおありなのでしょうか?」

「無いけど、何とかなるさ」

「……かしこまりました。では冒険者ギルドを目指しましょう」


 俺にはスキルの存在があり、恐らくこれが錬成に関わるのだろう。自分で出来るのだから技師に頼る必要もあるまい。やり方や手順、或いは道具などが必要ならその時また考えよう。



 *



「二人の戦っている所を見たい。リーシャンから頼めるか?」

「わ、私? その、そんなに、上手くは……」

「大丈夫だ、やってみろ」

「分かった、ます。……風よ」


 リーシャンがロッドに魔力を集め、そしてそれをウインドバットに向かって解き放つ。属性は【風】、その上で風を刃の様に鋭く打ち出し、その射線上にいる魔物を切断する魔法の様だ。


「え!?」

「ん? あぁ、レベルが上がっているからな。多少威力に差はあるだろう」

「そ、そうなの……?」


 何やら不服そうだが、あ。そうか、【大賢者の卵】の影響か。魔力操作か、もしくは魔力形成速度か、どこかで違和感を覚えたのかもしれない。


「ルクレティアには【武】の才覚の片鱗が見えた為、少し力を与えた」

「……へ!? あ、いや、そうですよね。流石におかしいですよね。……あれ? いつ? どうやって?」

「細かい事はさておき、リーシャンとローメイには【魔】の才覚の片鱗が見えた為、少し魔力的な力を与えた。上手く扱えそうか?」

「……え? あ、確かに……凄く簡単に、なってる。それに威力、スピードも、なんだか、自分じゃ、無いみたい……」


 むぅ、さて。どう言ったものか。焦らずやれというのもアリだが、ここは少し赴きを変えるか。


「そう、お前は生まれ変わったのだリーシャン」

「……へ?」

「これまで様々な事があっただろう、そんな時を経て戦士達の奴隷となり、奴らと共に過ごして来たこれまでの時間」

「……うぅ」

「それらとこれからの時間は、別物だ」

「……へ?」


 何かを思い出すかの様に辛い表情を見せたリーシャン、だが今は惚けながら俺の方を見ている。


「リーシャン・エルフェンヌ」

「はい!」

「俺はお前を虐げない」

「……え」

「お前に暴力を振るわない」

「……」

「命の危険にも晒さない」

「……」

「仮に命の危機とも呼べる場面が訪れたら、俺が護ろう」

「……ぇ」

「だから……お前は俺を護ってくれ」

「……ぁ」

「これからよろしく頼むな?」

「……はい!」


 俺に名を呼ばれ、頼むと言葉を渡される。それを受けたリーシャンは、涙を流してそれを肯定した。それでもやはり、まだ時間は掛かるだろうが、少しは前を向けただろうか。難しいな、こういうのは。


「ローメイ・エルフェンヌ」

「……ははははい!」


 リーシャンの事を心配そうに見つめていたローメイ。自身の名が呼ばれた事で慌ててこちらに顔を向けた。


「お前もそうだ。俺はローメイにも【魔】の適正を見て、魔力的な力を与えている。魔法を使えばその違和感に気付くだろう」

「……ぇ」

「俺はお前の事も大切な仲間だと思っている。リーシャン同様に奴隷としてではなく仲間として共に歩んで欲しい、頼むぞ」

「……はい!」


 ローメイは泣きこそしていないものの、目を真っ赤にしながらウルウルと瞳に涙をを滲ませていた。過去の事に僅かに触れただけでこの反応。この姉妹は今日まで、どんな人生を送って来たのだろうか。


 俺はこれから、コイツらに何かを渡してやれるだろうか。

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