第18話 これは物語でしかなかった。
*
血が、私の上に。
生ぬるい、赤い、黒い。
「い、いや!!」
ボロボロの服で、血を拭う。
「ねぇ、僕は君の殺し方を知ってるんだ。縄を使うんでしょ?
あの時みたいに。」
「あの時?」
素っ頓狂な声を出す。
「あの時みたいに、僕を殺せよ!」
目の前にいる人物は、血だらけの手で私に掴みかかる。
やめて、そんな汚い手で私に触れないで。
言いたいのに口から声が出ない。
「あ”っ、あがっ…!」
どうやら、首を絞められているようだった。
息ができない。
私は何度こいつに首を絞められるのだろうか。
こいつは私のことをわかっていないし、そしてこの世界も。
なんでだろうか。
私は、本当になんで生きているんだろうか。
この狭くて、広い画面の中には、何が詰まってるんだろうか。
意識が薄れていく気がする。
気がするだけだった。
早く、早く、殺してくれ。
もう、悩むのは嫌なんだ。
こいつの思想を具現化するのは疲れたんだ。
殺せるのなら、殺したいんだ。
「ああああぁ…僕を苦しませないでよ!!!」
それは、無理なんだよね。
だって、私は君の…。
そいつが、手を離した隙に微笑みながら、呟く。
「脳みそであり、心臓なんだもの。」
「えっ?」
目の下にはクマがあり、やせ細った身体、病原体に抗えない体内。
不健康な食生活。
「作家様の身体って、本当にすごいね。」
それは、彼にしかないものかもしれないが。
「ねぇ、早く、終わりの幕を下ろしてよ。」
「これは…これは…。あぁ?ああああぁ。」
自身の髪の毛を掴み、明らかに動揺していた。
「君の脳内物語に私たちを巻き込まないでよ…。」
不安定な感情に戸惑いながら、私は”彼ら”に告げる。
「さぁ、不安定な彼に災難を。それはきっともう既に解決されたものだから。」
ねぇ、早く、起きてあげて。
君を待ってる人がいるんだ。
ずっと、君が待ち望んでいた人が。
「君がずっと怨んで、好いていた母親が。」
*
「もう、嫌だ…。俺は間違ってないはずなんだ…!」
そう思ったのは、失敗続きだったあの日。
お気に入りのカップを落として、散りばめられた不安を覗き見た時の感覚。
ふと、一番大きなかけらを拾った時だ。
「血が…。」
指先からぷくりと血が出ていた。
「血がぁ、血、ああぁぁ。」
不安定だった精神は、血を見るだけで揺らいでいた。
「ヒィ…!」
視界が揺らいで、バランス悪く手を滑らせた。
その手は、ガラス片の海へ投げ打った。
ガラス片の海は瞬く間に赤く染まった。
その時の僕は精神が不安定になっていたのだろう。
痛い痛いとのたまい、口からは唾液をこぼした。
本当に僕はおかしかった。
ふと楽になりたいと強く望んでしまったのだ。
「ふぅ、ふぅ…」
呼吸が荒くなった。
手に持っていた破片を強く腕に刺した。
僕の。




