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私の____な日常  作者: 百合烏賊
17/20

第17話 夢に落ちていく。

血液表現注意です。

*

「あの子は、とってもいい子だわ」

「いいえ。あの子は、いい子に見せたいだけだわ」

そう言うあいつの声は、嫌いだ。

「空っぽの死体ね」

あいつは、僕をそう例えた。

(そうだ、僕は死体だ。)

ならば、動いてはいけない。

立ち止まって、座り込む。

時間は流れていく。

顔を隠して、うずくまったまま。

影が僕の前に来た。

あいつだろうか。

それとも、救いだろうか。

「大丈夫?」

来たのは、救いだった。

同時に、あいつだった。

「あ…あああ…」

僕が”可哀想”だということをあいつは、

母親は理解していた。

僕は、その”可哀想”が嫌いだった。

「い、や…ごめんなさい!ごめんなさい…!」

母親の口から、出るのは懺悔の言葉ばかり。

僕は、母親に触れようとした。

手を伸ばす。

消える。

母親が、消えた。

「お母さん?」

初めて、口に出す言葉だった。

「お母さん、どこ?」

口からは、疑問ばかり出る。

それは一瞬だった。

母親は僕を視界に入れると、微笑んだのだ。

そして、口を開こうとした。

だが、口からは呼吸を求める音しかしない。

僕は、涙を流した。

生まれて初めて泣いた時のような気分。

解放された嬉しさではない、もう少しあそこにいたかったという悲しみからの涙。

あれが母親の愛だったのだ。

僕を見て、嬉しそうに微笑む母親の表情が脳裏に焼きつく。

「ア”ァ”ァ”ァァぁ”」

声が掠れてきた。

僕には、愛が足りない。

母親がいないから。

あの時きた救いが持ってきたのは、穏やかな日常ではなく。

「縄だった。」

母親が死んだのは、彼女のせいだ。

彼女が持ってきたのは、縄だった。

母を殺し、僕を悲しみに縛り付ける縄。

あの日から、僕の中で彼女は、

地獄から救ってくれた恩人であり、自分の母を殺した憎い存在となった。



*

「だって、いつまでも終わりの幕が降ろされていないから。」

彼女は、酷く悲しそうにそう呟いた。

やめてくれ。

母親と同じ目で僕を見ないでくれ。

憎しみと悲しみが入り混じり、胸にモヤモヤとした何かを残す。

「岸辺哀歌、私の名前だよ。」

「愛莉なんて、偽の名前で私を呼ばないでね。」

そんなこと、僕はずっと前から知っていたんだ。

僕と同じ存在であったことも、僕と同じ、大事な人を亡くした人。

(違う、彼女は彼女の意思で殺した。)

「憎悪と愛を示すのは感情ではなく、人間である。」

聞こえた?と彼女は微笑んだ。

先ほどから、話が変わりすぎだ。

ガラス片を強く握りすぎたのだろうか。

僕の手は、ジンジンと痛む。

脳みそもガンガンと痛む。

「もう、やめてくれよ…。」

彼女の襟をつかむ。

「僕は疲れたんだ。早く、彼らと同じように終わらせてくれ。」

「まだだよ、終わりの幕は降りてないの。」

先ほどから、何を言っているのだろうか。

「まだ。私たちには、まだ夢がある。」

夢とは何だろうか。

「まどろむ暇がないくらいに、あの画面を悲しませないようにするために。」

パッと手を離す。

それは、彼女に恐れたからだろうか。

いや、違う。

ガラス片からは、血がポタリと落ちた。

それは、じわりと地面に滲む。

今の自身の温度すらわからない。

その一連の流れに義視感を覚える。

前にもあった?

いや、なかった。

僕は何を血迷ったのか、血の流れる手を彼女の真上に置いた。

ぽたりぽたり、頬に、髪に、肌にに血が落ちる。

「ひっ…!」

予想通りだった。

彼女の瞳には、畏怖が浮かび上がる。

それをずっと眺める。

僕の胸は、少し傷つき果てていく。





これは、全部。

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