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Lamia?  作者: mo56
第1章 放浪にて
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89話 休日の日常④

 井出と柳沢はしばらく適当な軽食をとって、川越を待っていると、午後一時を回ったあたりで、店内の賑わいも冷めてきたファミレスの入口に、見慣れた人物が立っているのが目に入った。

 

 背が高く、体格もガッチリしている男だ。

 小林も筋肉質な体をしているが、その男は小林よりも筋肉が洗練されているといえばいいのか、学生の小林とはまた違う筋肉の付き方をしている。

 店内の中だというのに、フードを深く被り、表情などはここからではよく見えない。だが、その独特の容姿で二人は彼が川越であるということがすぐにわかった。

 先ほど井出が入店した時と同じように、柳沢が入口に突っ立っている川越と思わしき男に手を振ると、男は何名なのか聞こうと男に慌てて寄ってきた店員には目もくれずに井出が座っているボックス席まで歩いてきた。

 店員はひどく戸惑っていたが、その無礼な男が井出の座っているボックス席に座るのを見ると、納得した表情をして、他の仕事をしようと、店の奥に消えていった。


 「どうも。」


 川越は何とか聞き取れそうな声でそれだけ言うと、柳沢の隣に腰掛け、腕を伸ばしてメニュー表を取り、静かに開いて、すぐに店員を呼ぶメニューの置かれた前にあるボタンを押し、店員が慌てた調子でボックス席に来ると、珈琲とサンドイッチとまた小さな声で告げると、背もたれにゆったりと背中を押し付け、くつろぎ始めた。

 それでもフードを取ることはなく、井出の位置からは川越の顔の大半はフードに隠れてよく見えなかった。

 しかし、見慣れた川越の動きに井出と柳沢は特に気にする様子もなく、頼んだ飲み物を少し啜った。


 川越は前からこんな感じだと井出は覚えている。

 3年前に巫女攫いの団員を集めて、田中に金を出資してもらいOFF会をしたことがあったが、その時も川越も今のように無礼で勝手であった。

 しかし、当時の井出も現在の井出も川越の態度に眉を寄せた事はない。

 勿論、柳沢を含む他の団員も同じで、特に柳沢と川越は何があったかは知らないがウマが合ったらしく、いつもOFF会などの時は二人で行動している。

 団員の中で比較的なお喋りな柳沢と無口な川越が何故、仲がいいかは知らないが、それを気にする暇など与えないほどに、他の団員も川越や柳沢に負けず劣らず個性的なのだ。


 しばらくして川越が注文した、珈琲とサンドイッチがきて、川越が湯気が立っている熱そうな珈琲を全く冷まそうともせずに飲み始めると、そろそろいいだろうと井出は話を切り出すことにした。


 「まぁ・・・とりあえず、川越も来たことだし、何をすればいいか話すか。」


 井出は柳沢と川越の二人を静かに見ながら、啜っていた珈琲カップを置いた。

 それを見て柳沢も飲んでいた炭酸飲料が注いであるコップを置き、井出を見るが、川越は珈琲を啜りながら耳を傾けた。


 「昨晩にメールでバストロクに集まってくれと書いたが、具体的に何をすればいいかは話してなかったな。」

 「そうっすね。」

 「まぁなんだ・・・解散する前も俺たちがやったことは大体荒事というか、物騒なことばかりだったが、今回もそれだ。」

 「やっぱりすか。けど、俺はそっちのほうがいいっすね。・・・川越もそっちのほうがいいよな?」


 柳沢が横の川越を見ながら言うと、川越は珈琲を啜りながら小さく頷いた。


 「それで、何をすればいいんです?」

 「あぁ、まず俺達がバストロクに着いたら、合流して欲しい。」

 「団長、まだバストロクに着いてなかったんですか?」

 「色々あってな。それよりもお前らが早すぎるんだよ。昨晩連絡したばかりなのによ。一体どの辺りにいたんだ?」


 確かに井出の方から団員達に、バストロクに集まれと連絡はしたが幾らなんでも早すぎる気がした。

 井出達が出発した北の森からバストロクまでは数日掛かって、やっと手前まで来たのだが、柳沢と川越は一体どこにいたのだろう。

 団員が集まるまでに、バストロクに真っ先に到着しておいて、ユエを護送する依頼をさっさと終わらせ、集まるまで報酬で少しゆっくりしておきたかったのだが、柳沢達のせいで少し予定が狂わされてしまった。


 「俺はバストロクから少し離れた村に住んでるんすよ。だから、すぐ行けたんです。川越は・・・お前どこにいたんだ?」

 「近く。」

 「・・・だそうで、団長。」

 

 井出はそれを聞いて、ふと柳沢のキャラがバストロクの近くに住んでいると言う事が気になった。

 川越については、深く聞いても絶対に答えないだろう。


 「近くに住んでるって、何してるんだ?」

 「えぇまぁ・・・巫女攫い解散しちまってから特にしたい事がなかったもんで、かといって引退するのもアレですから、しばらく『Lamia?』の中一通り歩き回ってたんですよ。川越もたまについてきてくれたんですけどね。」

 「あぁ」

 「まぁ、とにかく今年の初め辺りに大体全部回り終わったんで、本格的に暇になっちまって、適当にその村の酒場の用心棒になって落ち着いたんすよ。」


 そう柳沢は適当な言葉を繋げて色々と、その村で落ち着くまでの過程を話してくれた。

 バストロクもプレイヤー人口が多いので、治安が悪いのだが、その村も平和とはお世辞にも言える場所ではないらしく、酒場での仕事には事欠かなかったそうだ。

 酔っ払ったロールプレイで絡んでくる面倒なキャラを、切り捨てる事はしょっちゅうだそうだ。

 他にも喧嘩を始めて、他の客に迷惑を掛ける連中の仲裁とかをやっていたらしい。しかし、彼の場合、仲介という言葉は得物を用いた酷く乱暴なモノだった。

 そのおかげで最近はめっきり村に乱暴なプレイヤーが減り、治安がよくなったそうだが、酷く胡散臭い話である。

 巫女攫いで集まっているときは、むしろ柳沢が一番酔って絡んでくる奴のように面倒臭い奴だったのだが、1・2年で人と言うのはそこそこ変わってしまうものなのかと井出は少しだけ疑問に思った。


 


 

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