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Lamia?  作者: mo56
第1章 放浪にて
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86話 休日の日常①

 酒場はしばらく二人の寂しい静寂に満たされていた。

 それは仲介屋や刺客達の死体が消滅してもなお続き、ラヒムはなにか話そうしたのだが、重い沈黙が二人を包み込み、自然と口を閉ざさせたのである。

 そして、気まずかったので、二人はそそくさと酒場を後にし、その晩はラヒムから先にログアウトした。

 翌日のログインは休日なので、きっと昼間にログイン出来るとユエに告げて、ラヒムは馬車の御者台に座り込み、暗い周りの風景と同化するかのようにログアウトした。


 パソコンの画面を小林はゆっくりと閉じると、彼はそのまま心地よい戦闘の興奮を冷ましながら、布団に潜り込んだ。

 寝る前に携帯電話の画面を開いて、時計をちらっと見た。

 時刻はまだ深夜を回っておらず、明日の朝までたっぷり眠ることができそうだと思った。

 

 そして、小林が目を覚ます頃には日は既に高く昇っていたようで、カーテンから指す光が小林の目を強く刺激した。

 いつもなら自分が寝坊すると、祖父が起こしに来てくれるのだが、まだ眠い眼をこすっていると、今日は確か朝早くから釣りに行くのだと、昨日祖父が言っていたのを思い出した。

 一体自分は何時間寝ていたのだろうと、小林は枕元に置いてあった携帯電話を慣れた手つきで開いた。

 最近は皆、流行がどうのこうので、大きい画面を無防備に常に晒している機種を好んでいるようだが、生憎小林は流行に疎い人間であり、また高価な最新機種を買い与えてもらえるほど家が裕福というわけでもない。

 それに小林は今の携帯電話で十分満足しているので、買い換えるつもりなど毛ほどもなかった。

 携帯の画面に表示された時計の針は午前9時を指していて、小林は大分寝坊してしまったと少し後悔しながらも、布団を片付けた。


 小林は布団を片付けると、これから何をしようかと頭をひねった。

 朝食を抜かすと脳に悪いとは、テレビでも学校でも時に言われるが、今は特に腹が空腹を訴えていないので、すぐに食べなくてもいいだろう。

 祖父以外の家族も今日は確か何かの用事で出かけていたはずだと、小林はカーテンを開けながら思い出した。

 例え休日でもこんな時間に起きようものなら、母親が怒鳴って部屋に入ってくる筈だ。


 特に何かする気も起きない小林はとりあえず、ノートパソコンの置かれた小さいテーブルの横に置いてある学習机の椅子に腰掛け、どうしようかと考えながら、部屋を特に意味はないが見回してみた。

 自分の後ろにある、ミニテーブルの上に画面を伏せたノートパソコンが置かれていて、そのミニテーブルの横に今、自分が腰掛けているよく片付けられた学習机がある。

 学習机の上には課題のノートと筆記用具が置かれ、その横に綺麗に教科書が並べられている。

 綺麗に見えると言えば聞こえはいいのだが、実際のところ滅多に使わない為に教科書の上には大量の埃が被っていて、カーテンの隙間から差し込む光に照らされるとよくわかった。

 机の上に乱雑に置かれたノートは確か数学の課題であったはずだが、小林がノートを眺めると、開かれているページは空欄だらけで、全く課題を進めていないのが、改めてよくわかる。

 普段なら課題は放課後にでも終わらせてしまうのだが、昨日はつい忘れてしまっていた。

 昨晩はユエに早めにログインすると言っていたが、課題を終わらせるとなると少し遅くなりそうだ。


 そのあとしばらく小林は頭を何度かひねりながらも、課題を適当に済ました。

 元々そこまで頭が悪いわけではないが、課題とテストとは違う難しさがあると小林は思う。

 例えばテストというものは、教室において時間制限があり、その時間内に必死になって頭を働かせて問題を解くのだが、課題というものはテストと比べれば時間制限や締切に若干余裕がある。

 きっとそのせいで、まだやらなくても大丈夫だと怠惰な頭が認識し、つい課題を終わらせるのを先送りにしてしまうのだ。

 しかし、それではいけないと真面目に取り組もうか、それとも怠けてしまおうかと悩んでいるうちに、時間がどんどん過ぎていってしまうものだと、小林は机に数分間齧り付きながら考えてた。

 だが、しばらくして、そもそもこんなどうでもいい事を考えている時点で、己は課題を進めようとしていないのだと気付き、渋々机に向かった。


 課題は2時間ほど掛けて、ようやく終わりが見えてきた。

 初めのうちは数学だけならほんの数十分で終わると気楽に考えていたが、起きたばかりの脳に数学の課題は複雑すぎた。

 目から入ってくる数学の記号や数字が脳内で理解されることはなく、ただ無意味に頭の中を駆け巡るだけで、それだけでも無駄な時間を費やしてしまった。

 結局、先程は朝食はいらないと思っていたのだが、小林は仕方なく部屋を出て、階段を下り、誰もいない台所で適当に昨晩の夕食の残りを摘むと、また自室の学習机へ戻ってきた。

 頭に栄養が巡りだして初めて問題が一問解けたのが10時頃で、全て終わったのが11時半だった。

 中途半端な時間だったために、朝食なのかそれとも昼食なのか、よくわからないような時間に胃に食べ物を入れたので、さほど腹は空いていなかった。


 そして、やっと課題が終わったので、小林は椅子から腰を上げた。

 面倒事を終わらせたあとにゲームをするのは気分がいいもので、パソコンが置かれたミニテーブルの前に座ると、ノートパソコンの画面を立ち上げて、電源を起動しゲームを始めることにした。

 パソコンの画面が暗闇から色がつくまで少々時間がかかるので、小林はその間、窓の外に目を向けたが、外は全くいい天気なのに自分は何故部屋の中でこれからパソコンと睨み合いを始めてしまうのかと、少しだけ小林は自己嫌悪に陥った。

 部活に入っていた時は、きっと今頃学校の道場にて汗を流していたことだろう。部活に入っていない長谷川にはわからないだろうが、当時は嫌々ながらもやっていた辛い練習が、部活を辞めた途端に懐かしく感じてしまう。

 そんな図々しいとも取れるようなことを考えていると、ふと小林は思い出したかのようにズボンのポケットから携帯を取り出し、メールの作成画面を開いた。

 昨晩はログインしてこなかったが、今日はどうなのだろうと井出に確認をしたかった。

 あの人のバイトがいつ休みなのかは知らないが、とりあえず確認しておく必要がある。

 また意気揚々とログインしてから肩透かしを喰らうのは勘弁してほしい。

 しかし、ログインできるかのメールを打ち込んでいる際に、小林はゲーム内にて同行している連中のメールアドレスを、井出以外知らないことに気づき、せめて明日の学校では米山のメールアドレスも知っておいたほうがいいと思った。

 


 

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