10. 対面 彩那と世理架
武蔵村山市北部の廃墟にて。
「驚いたね。こっちに来てたのかい、彩那ちゃん……だったかな?」
「はい……気になってましたけど、世理架さんでしたっけ?」
あまり会話をしていないため、彩那と世理架のやりとりの始まりは覚束ない様子である。
「しかし彩那ちゃん、佐渡島の事は良いのかい?」
「佐渡での復興については行政の方たちがやるべき事ですから。勿論、信者の方たちとは定期的に連絡をしますよ?」
「ふーん……」
興味ありげに世理架はそう反応すると、視線を漆紀に移して問う。
「漆紀君、これは真面目な質問だ。今の君からして、彩那ちゃんはどういう立ち位置、関係だと思う?」
「え? それは佐渡流竜理教のポストか? 人間関係について?」
「両方考慮してだよ。漆紀君、内心わかってるとは思うが……君が今後どうこう言おうが、彼女は君の身の周りに付いて来るよ」
世理架からそう断言され、漆紀は薄目をして嫌な表情を浮かべる。
「なんで? あれか、総本山で儀式とかしたから?」
「儀式? 彩那ちゃん、儀式って何をしたんだい? その辺は漆紀君から聞いてないが」
「ちょっと待ってください。世理架さん、でしたっけ。やけに事情通みたいですけど、あなた何者なんですか? 私は佐渡流竜理教司教家の子です。竜王様ならまだしも、部外者も良い所のあなたにあれこれ話すのは嫌です。素性を明かしてください、誰なんですか世理架さんは」
彩那が至極尤もな疑問をぶつけ、世理架は軽快に笑んで答える。
「わたしの素性を全て知りたいならわたしと結婚して」
「ふざけてないで答えてください」
「……わたしは昔、竜理教に入って魔法使いをやってた。それだけだ、何か?」
「世理架さん、儀式ってのは俺と竜蛇が一本の刀で首を軽く切る儀式だ」
「ちょっと竜王様! それ勝手に言っちゃダメですから!」
彩那がそう責めるが、それを言うなり世理架は「ああ」と頷く。
「なるほど、流血の儀か。てことは彩那ちゃんは竜王の力を少々、漆紀君は彩那ちゃんの力を……お互いに使えるわけだ。流血の儀は、そういうシェアリング効果があるからね。今の彩那ちゃんは、漆紀君にとっては力を共有する友達って関係だと思って良い」
「で、世理架さん。竜蛇はこの場に居て良いのか?」
「んー……まあ、良いとしよう。わたしの素性についてそれ以上あれこれ詮索しないなら」
彩那について世理架がそう結論づけるが、当の彩那自身は世理架が何者なのか気がかりなままの様子である。
「それより世理架さん、今日は何をやれば良いんだ?」
漆紀が鉄塊を握って右手に村雨を呼び出すと、世理架は「いつも通り」と答える。
「えー、もう構えとか持ち方は良いだろうよぉー!」
「まだまだだ! 何回か攻撃するとすぐ間違った構え方や持ち方になるじゃないか。刀は両手で握るが左手には力を入れない、これがまだ出来てないだろうが。こんなの序の口だぞ、いつか竜理教相手に戦うなら、まだまだ教えることが山ほどあるんだからな」
「世理架さん、竜王様に戦い方を教えてるのですか?」
「そうだよ。まだまだなってない、彼の父親の若い頃……全盛期にも届いてない。今は刀の話だけど、そのうち銃に体術に魔法、どんどん教えるからな!」
それを聞いて漆紀は苦い顔をするが、それほど様々な事を学ばなければ竜理教に押し入って宮田を殺す事など無理だとも理解できている。
「じゃあ、私は竜王様に大事ないか……今後はここで見守らせてもらいます」
「え?」
ひたすら漆紀の様子を見守ると保護者の様に言った彩那に対し世理架は変な声が出る。
「おいおいガチでストーカーかよ竜蛇。遅くなるから家に帰ってろよ」
漆紀はそう注意するが彩那は首を横に振る。
「そうかよ。見てても面白くねぇぞ」
漆紀はそう言うと、村雨を両手で構えた。
「じゃあ、いつも通り私に打ち込んで来るんだ。とにかく、構えや持ち方を崩さないようにな」
世理架が金剛杵を取り出してそう言うが、彩那が顔を青ざめて「待った待った!」と突っ込む。
「竜王様今から真剣で打ち込むつもりですか!?」
「世理架さんが真剣で良いって言うからな。因みに毎回やってるけど今まで世理架さんに1ミリでも切り付けることができなかった」
「漆紀君、自慢することじゃないぞそれは。ほら、さっさと打ってこい」
「たああぁぁ!」
「ちょっと竜王様!」
漆紀と世理架の打ち合いに対し、彩那は肝を冷やしつつも見守るほかなかった。
(真剣とか頭おかしいよ、世理架さん。ほんと、何者なんだろうこの人……真剣に動じないなんて)




