エピローグ
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エリと一緒に死にかけてから、ひと月が過ぎた。
反抗めいた事をしでかした俺に対して、“本部”が何か仕掛けてくるのではないかと思っていたが特に変化は無い。様子を見ることに決めたらしい。
今日は、サキ達と一緒に都心へ出向く日だ。
ちょっとしたミーティングがあるのだ。
腕を組んで歩くのは、恋人役のサキだ。
3人の女性を連れつつ、そのうち1人とだけ腕組んで歩くってのは却って恋人っぽく無いんじゃないか って思うんだが、サキは気にしてないようだ。
前の事件で全てが終わって助けを呼んだ時に、真っ先に駆けつけてくれたのがサキだった。
泣きながら無茶すぎると責められると、罪悪感で胸が一杯になってしまう。
サキの涙なんか初めて見たからなおさらだ。
『サキさん、恋人役の独り占めはやっぱりズルいです。ひと月単位の交換制にしませんか?』
ジュピターが、俺達の後ろから声を掛ける。
ワープ中での区画パージを強行した時、ジュピター本体側も大変だったらしい。(俺の理解では大丈夫な筈だったんだが、所詮素人だ)
分離して非空間に消えていく区画を見失うまいと、性能限界を超えた強制停止を実行した結果、彼女は推進機関に大ダメージを受けてしまった。
本体は月基地でドック入りとなり、先週ようやっと任務に復帰したばかりだ。
ひたすらに謝るしか無いのだが、無傷である生身の方のジュピターを連れだして、美味しいものを食べに行ったり、海に行ったりとかでなんとか機嫌も回復してきている。
ちなみに彼女は、海外に移住していた俺の遠い親戚と言う事になっている。
苦しいのは承知しているので、突っ込まないで欲しい。
後ろからエリが出てきて、サキとは逆の側の俺の腕を取る。
『地球人って変です。恋人役が一人だけっておかしくないですか?
私二人目で立候補します!』
人間関係的に、以前はエリから若干の距離を取られていたように感じていた。
しかし、もう秘密にしてた事を全て話したからだろう、振る舞いに屈託が無くなってきているように感じる。
いや屈託が無さ過ぎるかも知れない。サキやジュピターとのスキンシップには慣れてきたが、エリとは少しまだドキドキする。
いつもの駅でいつもの電車に乗り込む。
午後もまだ早い時間で電車の乗客もそれほど多いわけではないが、タイプが異なる美人3人がキャッキャと俺に絡んで来るのはそれなりに人目を惹き、チキンな俺は空気でいようと必死だ。
目的の駅で降りると、会場のビルに向かう。
共同利用の貸し会議室がある、目立たないビルだ。
ビルの中に入った途端に、女から突然声をかけられる。
20代の前半位か。
ロングの黒髪が印象的な、どちらかというと和風な顔立ちの美人だ。
今日のミーティングの相手らしい。
ミーティングの議題は、地球と“敵”との間の停戦条約の締結に関してだ。
女は自己紹介をする。
『地球防衛艦隊 司令官殿ですね? お初にお目にかかります。
私はあなた方の“本部”が“敵”と呼ぶ存在から派遣された人工知性体です。
リサとでもお呼びください』
この一ヶ月の間にいろいろあったが、“敵”が停戦の打診をしてきたのが最大の事件だろう。
“敵”が言うには、“本部”との全面戦争のような無益な争いは止めるべきだとの意見が多数派を占めており、停戦条約を結ぶことを検討していたとのこと。
だが彼らにとって“本部”は全く信用出来ない存在で、どうやって調べたのか、ある程度の影響力を行使出来るようになった俺に声をかけたという事らしい。
言ってる事が信用出来れば、の話だけどな。
彼らが自分達に都合の良いことばかり言うのはデフォなんだろうが、地球を砲艦で破壊しようとした事実は忘れないぜ。
俺を戦艦から砲撃して殺そうとしたことも。
今、上空の軌道には戦艦ジュピター、サターン、ネプチューン、それと心配症の“本部”が新たな増援として送ってきた、ジュピター型戦艦4番艦バルカン、5番艦ジュノーを合わせた計5隻が待機していて、このミーティングを見守っている。
何が起こっても、対処出来るようにだ。
こちらの警戒態勢を知ってか知らずか、リサと名乗った女は嫣然と微笑むと、俺を見つめながらこう言う。
『この私の姿、お気に召したかしら? あなたの好みを調査した上で随分手間暇を掛けて造った身体なんですけど?』
予想しない質問に不意を付かれ、やや狼狽えながらもこう考えざる得ない。
悔しいことに控えめに言ってもサキ、エリ、ジュピターと同程度か、もしかするとそれ以上の美人なのだ。
色気に限って言えば、3人組を軽く凌駕するだろう。“敵”のテクノロジー恐るべし。
『気に入って頂いて嬉しいわ』
そして、挑戦的な眼差しをサキ達3人に向ける。
サキ、エリ、ジュピターが、ムッとして睨み返すのを、横目に見ながら俺は思う。
まあ、もうしばらくは退屈しないですみそうだ。
Fin
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<作者より>
お読み頂きありがとうございました。これにて終了です。
“小説家になろう”の何処かで、またお会い出来る事を楽しみにしております。
名も知れぬ黒い文鳥より
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