死闘
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『分かった。それでいい。』鈴木さんは了承し、彼女の艦隊が手を貸してくれる事に決まる。
この戦闘がうまくいったら彼女の星の防衛に引き込まれて、やっかい事に巻き込まれるんだろうけどな。
最低限の予防線は張っておいた。兎にも角にも今の危機を脱してから後のことは考える。
鈴木さんのケプラー惑星艦隊(重巡3、軽巡2)は現在金星表面の厚い雲の中だ。
惑星に近すぎて流石に敵は探知出来ていないだろう。不意打ち出来そうだ。
敵と味方の船の位置と関連情報を、正面スクリーンに出す。
スクリーンの方が脳内に投影するより、サキやエリとも話やすい。
==現在の状況は下記のとおり==
<<味方増援艦隊本隊と敵艦隊1番>> 火星公転軌道 周辺
味方増援艦隊:戦艦3、重巡10、駆逐艦18 (内重巡2隻 中破、2隻 小破)
敵艦隊1番(増援足止め艦隊):巡洋戦艦3(内1隻大破、1隻中破)、重巡10(内3隻大破、2隻轟沈)
追記:現在敵艦隊は撤退中、味方巡洋戦艦2隻は離脱済み。
増援艦隊本隊も地球への移動を開始した。
<<敵艦隊2番(地球侵攻艦隊) >> 金星付近
敵艦隊2番:巡洋戦艦3隻(ステルス&高速タイプ)、対惑星砲艦1隻(対惑星質量弾装備の砲門特化艦艇)
追記:地球に向かって進行中
<<地球に移動中の味方巡洋戦艦>>
巡洋戦艦2隻(内1隻、現在航行不能)
追記:航海中の残り1隻もオーバーロードの為に推進機関の出力が低下
<<ケプラー艦隊(鈴木さん艦隊)>> 金星大気圏内
ケプラー186f艦隊 重巡3、軽巡2
追記:全て前世代艦(旧型)
<<地球防衛艦隊>> 迎撃ポイントに向け航海中
艦隊:重巡2(旗艦アレックスを含む)
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状況を簡単に整理する。
足止め部隊の敵艦隊1番は現在、絶賛壊滅状態だ。
いい気味だ。戦艦3隻に手を出すからそうなる。
しかし敵からしてみれば、足止めの目的は果たしたし被害は織り込み済みだろう。
地球侵攻艦隊である敵艦隊2番は、対惑星砲艦を引き連れ進行中。
こちらに向かっている味方の巡洋戦艦2隻の内の1隻は、機関停止して止まってしまった。1隻しか間に合わない。いや、1隻でも間に合ってくれ。
ケプラー186f艦隊(鈴木さん艦隊)は金星大気圏内で指示を待っている。
アレックスを含む俺たち重巡2隻の艦隊は、砲艦の侵攻を阻むべく迎撃地点に航海中。
もう、ゆっくり考えてる時間は無い。
俺は、皆と少しだけ相談してから方針を告げた。
味方の巡洋戦艦の到着をこれ以上待てない。
「旗艦アレックスは、これより敵の対惑星砲艦に対し突撃を敢行し、地球に到達する前にこれを攻撃・無力化する。
“プロテクター”サキは防御フィールドを展開し、アレックスを援護。
僚艦の重巡スミスは、後方よりアレックスに随伴、援護してくれ。
ケプラー艦隊はアレックスの突撃と同時に、全艦で対惑星砲艦に対する突撃を開始する。鈴木さんよろしくお願いします。
当艦隊に向けて航行中の巡洋戦艦マーキュリーは、主砲の射程距離にはいり次第、敵に対する砲撃を開始してくれ。目標はまかせる。」
「ではアレックス。最大戦速!突撃を開始する。」
一瞬、足元が揺らぐ。
サキが無効・減衰フィールドを最大コストで展開を開始。
『フィールド展開正常に終了。』
『現在、最大戦速に達した。』
艦橋前方のスクリーンに、金星の厚い雲に包まれた球面が投影されている。
雲をつきぬけ垂直に飛び出してくる鈴木さんの艦隊。重巡・軽巡あわせて5隻が、半円状に分散しながら展開、真っ直ぐ砲艦に向かう。
鈴木さん自身は地球にいて、艦艇自体には人工知性も乗っていない無人操作だ。悪いが船は使い潰さしてもらう。
ケプラー186fの納税者の皆様、ごめんなさい。
敵はどうでるか。
3隻の敵巡洋戦艦は、前後から砲艦に向かう巡洋艦の群れ(前:アレックス、後:鈴木さん艦隊)を発見。
1隻が俺達に、2隻が鈴木さんの方へ迎撃に向かう。
砲艦は地球に向かって速度を上げる。
敵は、こちらの数に比例して船を分けたか。
鈴木さん艦隊は旧式の古物の船だ。良く見りゃ分かった筈だぜ。2隻は回しすぎだ。こちらに向かってくるのが、1隻だけで助かった。
『司令官。やりましたね。地球防衛成功ですね。乾杯しましょう。』
エリがはしゃいで喜ぶが、お姉さんまだ流石に早過ぎると思います。後、酒弱いんでアルコールは勘弁してください。
アレックスの主砲はまだ砲艦に届かない。こちらに向かって来る巡洋戦艦の射程の方が重巡より長いから、当然、俺達が最初に砲撃を受ける。
敵は、どっちの砲を撃つ? 通常の主砲か、それとも情報破壊攻撃(以前、俺を砲撃した砲)か?
プロテクターのサキがアレックスに乗艦している為、通常のプラズマ砲(主砲)は俺達には効かない。そこまで敵は予測しているだろうか?
情報攻撃を敵艦から受ける。クソ、お見通しか。
サキとアレックスが展開した二重の減衰フィールドが、攻撃を吸収する。
しかし30%程度のダメージは通る。
急に存在感が低下し、周りが白い霧のようなもので覆われ始めたように感じる。
思考力が低下する。目がボヤける。
アレックス、そのまま砲艦に突っ込め。
後から冷静に考えれば、これは判断ミスだ。間に合わない。
こちらの主砲の射程内に砲艦を入れる前に、情報攻撃をもう一度受ける。終わりだ。
命令していないのに僚艦の重巡スミスが前進一杯で後ろから進み出て、アレックスと並ぼうとする。敵の攻撃対象を増やして分散するつもりか。
しかし、僚艦にはプロテクターの防御は無い。
僚艦スミスに情報攻撃を受ける。中破。戦闘継続不能。
一回分の攻撃のインターバルをスミスに稼いでもらい、アレックスは砲艦に向かう。
再度の情報攻撃を食らう前に、主砲が撃てる!
だが、ここまでか。
砲艦を破壊して地球は救っても、アレックスは次の敵の攻撃で轟沈するかも知れない。俺が乗っている事は今の戦闘でバレただろう。確実に仕留められる。
結局、皆を道連れにしてしまった。
『司令官。後悔は、敵を沈めてからやってくれ!! 砲艦が、主砲の有効射程内に入った!』
撃て。
二連装の200センチプラズマ砲が敵砲艦を直撃。
砲艦の柔らかいシールドを突き破った重巡の主砲のエネルギーは、2億度で砲艦の中を跳ね回る。艦体構造が溶解・蒸発、一撃で轟沈。
同時にこちらをつけ狙っていた敵の巡洋戦艦が沈黙する。
味方の巡洋戦艦マーキュリーがなんとか間に合い、三連装300センチプラズマ砲、全3門のプラズマ・エネルギーが敵に着弾したのだ。
『ほら。後悔は先延ばしにするもんです。』
アレックスが微笑んだ。顔は無いはずなんだけど。
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