始まり42 『エスパー?』
「そういえばお姉ちゃんは何をしていたの?」
「ん?抜け穴製作かな。」
「抜け穴?」
「うん。ちょっとした工夫をしただけだけどね。」
「ふーん。」
特に抜け穴が何かとか聞いて来ない所がルナはいいね。
「おーねぇーちゃーん!」
ん?
「ぐふぅっ。」
何かが後ろから来たようだったので後ろを振り向いてみると、まあ、一人の少女が突っ込んで来たんですよ。
待ったって言ってんでしょうが、無視すんなやゴラァ!!!を食らったカ●ジョーさん張りの吹っ飛び方をしてしまった。
「あ、カナちゃん。」
いやいやいや、あ、カナちゃんじゃないですよファミールさん(ファミール様は堅苦しいし旅の仲間なんだから呼び捨てがいいと主張して来たが、流石にすぐに変えられるわけでもないのでできるだけ敬語を減らしていってファミールさんと呼ぶ事になった。)助けて下さいよ。地面と少女のサンドイッチって意外と痛いんですよ?少女の重さがありますし?
「ゴフッ。」
「今失礼なこと考えたでしょう。」
殴られた、というか貴方はあれですか?エスパーですか?
「ちなみに私は心を読む能力を持っている訳じゃないですからね。」
・・・本当かよ?
「そんな疑いまくってますっていう感じが全開の眼で見られても・・・。」
「あれ?顔に出てた?」
「出てましたね。」
ファミールさん、フォローを、SOSです。
「自力で何とかして下さいね。」
・・・エスパーですか?
「・・・言って置きますけどそんなに助けを求めた眼でこっちを見ていたら誰でも分かりますからね。」
・・・そういう事ですか。
少女を、いや、カナをと言うべきだろう。まあ、そこは置いておくとして・・・。
カナを無理やり引き剥がして降ろすと、なんかよく分からないけど抗議の眼で見られたのでとりあえず肩車をしてあげる事にした。
その時ルナが羨望の眼差しでカナを見ていたのは見なかった事にする。
ん?何で見なかった事にするかって?この後起こりうる事を察してくれ・・・。
「で、如何したの?カナちゃん。」
俺に肩車をされているのにカナちゃんと目線の高さがちょっとしか変わらない・・・。
最近心に突き刺さるものが多いな・・・。
「あのね、ルナお姉ちゃんが私の事置いて行っちゃったから追いかけて来たらお姉ちゃんが見えたんだ。だから飛び付いたの。」
何で飛び付いて来たのかはよく分からなかったが、ルナが置いてきてしまったという事は分かったので、ジト目を向けてみる。
「・・・ご、ごめんなさい。」
「大丈夫だよ!!」
おお、この子は俺達の良心になってくれそうだ。
・・・あれ?
「セインは?」
「先にお店に行ったよ!!」
「そう。ならいいか。」
忘れていた事をちょっと申し訳なく思いながらもセインが居るはずのお店に行くことにした。
・ ・ ・
「こんにちわー。」
「セイン!!本当によかったぁ。」
お店に入ってみると、誘拐されたのでは?と心配をしていたセインが武器屋の少年と感動の再会をしているところだった。
「こんにちわー。」
一応再度呼びかけてみる。
「い、いらっしゃいませ!!ってカナ!!」
「ただいまー、ガルク。」
肩車していたカナを降ろしてあげると、カナは少年(ガルクというらしい。今初めて知った・・・。)と感動の再会をはたした。
別に生き別れになっていたわけでも無いんだから感動とか無いし、いつでも会えていたんだから再開でも無くね?と思っても口に出さないのがいいだろう。しかしここにはエスパーが多いからばれているかもしれない・・・。
「冒険者さん。この二人を助けてくれて本当にありがとうございました!!」
「いえいえ。こっちとしてもセイン君とカナちゃんは必要なんですよ。」
「そうなんですか?」
「そういえば私達冒険者になったんだよー。」
いきなり何の脈絡も無いところから話を出来るのはある一種の才能ですよね、これは。
「そうなのか?」
「カナちゃんが言ってることは正しいよ。」
「何でカナやセインを冒険者に?」
「ま、色々あるって事で納得して下さい。」
「ん、そうですか・・・。」
あまり納得して無いようだが、しょうがない。今はこれで納得して貰うしかないんだから・・・。
「そういえば、ナイフは出来た?」
「出来ましたよ!!ちょっと待ってて下さい。」
おやっさーん。と言いながら奥に入っていくガルク少年。
すると、ガルク少年がナイフを持って帰ってきたのはいいのだが、後ろにいる人間が問題だった。
いくつもの刀傷があるごっついおっさんが出てきたのだ。
「お前があの二人を助けてくれた冒険者か?」
「そうです。」
この人といると、コンプレックスがさらに目立つ・・・。
「あの二人を助けてくれて本当に感謝する。」
「あ、あの、顔を上げてください。そんなにされると此方も話し辛いですし・・・。」
これは本音だ。
「そうか。では私たちの話を聞いてはくれないだろうか。」
「いえ、いいですけど。」
こうしてよく分からない内におっさんと話す事になった。