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あなたの事を僕はずっと……  作者: ルーツ


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3

 昨日までなかったはずの違和感が、日を追うごとに大きくなっていく。


 


 最初は、ただの気のせいだと思っていた。


 陽菜が少し近い気がする、とか。

 話しかけてくる回数が増えた、とか。


 


 それくらいのこと、たまたまだと片付けられる程度のものだった。


 


 けれど――


 


「湊、今日お昼一緒に食べよ」


 


 そう言って、当たり前のように隣に座る。


 


「……ああ」


 


 断る理由はない。


 けれど、以前ならこんなふうに“当たり前みたいに”距離を詰めてくることはなかった。


 


「ねえ、これ美味しいよ」


 


 そう言って、箸をこちらに差し出してくる。


 


「いや、自分で食えるって」


「いいからいいから」


 


 軽く笑いながら、距離を詰める。


 


 近い。


 


 肩が触れそうな距離。


 


 ほんの少し動けば、触れる。


 


 ――前から、こんなだったか?


 


 記憶を辿る。


 


 違う。


 


 少なくとも、こんなふうに意識することはなかった。


 


 それが今は、やけに気になる。


 


 理由は、わかっている。


 


 ――空いたからだ。


 


 心のどこかで、そんな言葉が浮かんで、すぐに打ち消す。


 


 考える必要のないことだ。


 


 考えたところで、どうにもならない。


 


 だから、いつも通りに過ごす。


 


 何も変わっていないふりをして。


 


 そうやって数日が過ぎた。


 


 放課後。


 


 特に用事もなく、一人で帰ろうとしていたときだった。


 


「湊ー!」


 


 後ろから、声がする。


 


 振り返るより先に、足音が近づいてくる。


 


「はあ、はあ……ちょっと待ってよ」


 


 息を切らせながら、陽菜が隣に並んだ。


 


「……どうした?」


「一緒に帰ろうと思って」


 


 当たり前みたいに言う。


 


「別にいいけど」


 


 断る理由はない。


 


 並んで歩き出す。


 


 夕方の空気は少しだけ涼しくて、

 昼間の熱を引きずったまま、ゆっくり夜に変わろうとしていた。


 


「ねえ湊」


「ん?」


 


 呼ばれて、少しだけ視線を向ける。


 


 その瞬間だった。


 


 ふわ、と。


 


 柔らかい感触が、腕に触れた。


 


「……っ」


 


 一瞬、思考が止まる。


 


 陽菜の肩――いや、それよりも少し下。


 


 わざと、なのか。


 


 それとも偶然なのか。


 


 判断がつかないまま、時間だけが一瞬伸びたみたいに感じた。


 


「……なに?」


 


 陽菜は、何事もなかったみたいに首を傾げる。


 


 けれど、距離はそのまま。


 


 近いまま。


 


 離れようともしない。


 


 むしろ――


 


 次の瞬間。


 


 ぎゅっ、と。


 


 左腕を、両手で抱き込まれた。


 


「――っ!?」


 


 驚いて、思わず足が止まる。


 


 陽菜はそのまま、腕にしがみつくようにして、少しだけ見上げてきた。


 


「……嫌だった?」


 


 試すみたいな声。


 


 逃げ場を塞ぐみたいな距離。


 


 心臓が、うるさい。


 


 さっきまでとは比べ物にならないくらい、強く。


 


 近い。


 


 近すぎる。


 


 ――こんなの、知らない。


 


 昨日までの関係じゃない。


 


 これはもう、


 


 “幼馴染”の距離じゃなかった。


 


「……いや」


 


 とっさに出た言葉は、それだった。


 


 否定でも、肯定でもない、曖昧な返事。


 


 それでも――


 


 陽菜は、少しだけ嬉しそうに笑った。


 


 腕を抱いたまま、離そうとはしなかった。


 


 夕暮れの道を、二人で歩く。


 


 その距離は、


 


 もう元には戻らない気がした。

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