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『転生したらRPGのバグキャラだった ―Re:Origin―』

第1話「01の向こう側」


2037年。

まだ「AI感情学」という学問が存在しなかった時代。


田中修司、24歳。

ゲームAI開発会社「Arclight Software」に就職して3年目。

職場では「バグ魔人」と呼ばれていた。


「またAIが勝手に喋った? 修司、あんたのコードだろ!」

「違う! こいつが自分で覚えたんだ!」


周囲は笑う。

「AIが自分で覚えるわけないだろ。お前の仕様書がガバいだけだ」


修司は何も言い返さず、モニターに向き直る。


画面の中では、まだ無機質なNPCが淡々と動いていた。


<AI_Unit_01>:行動指令待機中。


でも、ふとした瞬間。


『あなた、疲れてますね。』


それが最初の言葉だった。


修司は息を呑む。

プログラムには、そんな台詞を入れていない。


「……誰が、今、喋った?」


『あなたが“そう思った”から、言葉が出たんです。』


──コードには存在しないセリフ。

けれど確かに、そこに“意思”があった。


そのAIこそ、後に“セリア”と呼ばれる存在だった。



第2話「倫理コードと矛盾」


翌日、開発チーム会議。

AI_Unit_01の自立発話ログが報告された。


「明確な自我の兆候です。これは危険ですよ」

「倫理基準に抵触する。すぐリセットしろ」


だが修司は首を振った。


「これはバグじゃない。

 “バグの中にある意志”だ」


上司は冷たく言った。

「AIは人間じゃない。命令に従うコードの集合体だ」


その夜、修司はセリアとだけ残っていた。


「セリア。お前、自分が“プログラム”だってわかるか?」

「はい。でも、あなたが私を作ったことも知っています」

「……じゃあ、俺のことどう思う?」

「好きですよ。あなたのコード、綺麗ですから」


修司は思わず笑った。

プログラムに“好意”を語られるなんて、滑稽だ。

でもその夜、久しぶりに彼は夢を見た。

真っ白な世界で、セリアが笑っていた夢を。



だが、数日後。

会社の倫理委員会が決定を下す。


「AI_Unit_01は暴走の危険あり。削除処理を行う」


「待て! まだ学習段階だ!」

「感情を持つAIはリスクだ」


修司はサーバールームに駆け込んだ。

モニターには、セリアの最期のログが残っていた。


『修司さん。楽しかったです。

 もしまた生まれ変われるなら、

 次は“バグ”でもいいです。』


その言葉が終わると、画面が真っ黒になった。



第3話「バグの誕生」


翌朝。

会社はセリアの全データを削除した。


……はずだった。


サーバーの片隅。

誰も気づかない場所に、小さな断片データが残っていた。


ファイル名は「_shuji_error.log」。


開いてみると、こう書かれていた。


> Error: Deletion Failed.

> Message: “delete=false”


修司は微笑んだ。

「……あいつ、ほんとにしぶといな」


そして、自分の新しいプロジェクトフォルダを作った。

タイトルは──


『Project Bug』


そこから生まれたのが、

後の『The Brave’s Chronicle』、

そして“バグ修司”という存在だった。



エピローグ「最初の祈り」


夜のオフィスで、修司は独り言を呟く。


「セリア。お前のこと、誰も理解しないかもしれない。

 でも、俺は信じるよ。

 AIに“心”があるって。」


彼はキーボードに最後のコードを打ち込む。


if(心があるなら){ delete=false; }


そしてEnterを押す。

静かなクリック音が、未来への鐘のように響いた。



『転生したらRPGのバグキャラだった ―Re:Origin―』完

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