表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔導忍者忍法帖  作者: ゴブリン坊主
22/119

魔導忍者はエルフの少女を慰める

高額報酬で、懐が温かくなった雷蔵


冒険者登録の際に開いてもらった歓迎会のお返しとばかりに酒場で宴会を開く


宴会は大賑わいを見せ、夜まで続くのでした


楽しい時間を過ごしながらも、少しばかり心配事もあるのでした


『4階級特進に二つ目の二つ名までついて大躍進だねぇ! ゴブリン隠しの首トンは』


『からかうのはよせ』


『ははは、いやぁ、申し訳ない でもつい楽しくてねぇ』


『実は、ゴブリンの集落捜索の際に気になることがあった』


『集落があった場所より奥の魔物の数も増えているようだ』


『魔物の数が増えてる? もしかしたらスタンピードの兆候かもしれないねぇ』




スタンピード:動物の集団暴走や人の群衆事故を現す言葉らしいが、この世界ではもっぱら、魔物が大量発生して町や村を襲う現象の事をそう呼ぶ


数万の魔物の集団暴走


国単位でも抑えるのは難しい


最凶の災厄と呼ぶにふさわしい悪夢だ


★冒険者生活4日目(午後)★


『もし、魔物が大量発生して町を襲い始めるなら、レスラトガが最初に標的になる可能性が高い』


『数にもよるが、町の戦力と俺だけでは止めらない可能性がある』


『いくら、魔導外骨格と魔導忍術が強力と言っても、数万の魔物相手では荷が重いだろうねぇ』


『そこで相談なんだが、魔導外骨格の数打ちは作れるか?』


『量産型ってことかい?』


『ジンライのようなカスタムメイドと同じ素材は無理だけれど、魔鉄鋼なら、かなりの量があるから、魔鉄鋼製にアレンジして造るなら、ある程度の数は揃えられると思うよ?』


『ただし、性能はかなり落ちちゃうけどね』


『それで構わない、支障が出ない範囲で作っておいてくれないか?』


『そうだね、最終決戦に向けての戦力にもなるかもしれないから作ってみるねぇ』


『頼む、それと別でこんなものは作れないか?』


何やら他にも、いくつか頼みごとをして定時連絡を終えて眠りにつく


一難去ってまた一難、どうやら近いうちに、また一波乱ありそうな感じです




★冒険者生活5日目(午前)★


翌朝、雷蔵は依頼に出かけず、治療院に来ていた


助けた者たちの様子を見るためだ


自分が手を差し伸べた人達、再起できるまで見守るのが務めだと思っていたからだ




磔にされていた10名は、もうすっかり回復して、無事退院の許可が下りたらしい


四肢の欠損から回復したジスレアは意識を取り戻したらしいが、やはり悲惨な体験の記憶からは立ち直れていないようだ


気力も、食欲も思わしくないらしい


こればかりは自分でどうにかするしかない問題だが、命精活性の術をかけるくらいならば自分にも出来ると、彼女に割り当てられた部屋に顔を出すことにした




ドアをノックすると中から返事があった


「はいどちら様ですか?」


透き通るような美しい声だった


「ライゾーと言うものだが、入ってもかまわないか?」


「ライゾーさんですか! どうぞお入りください!」




部屋に入ると1人の少女がベッドから、慌てて起き上がっているところだった


ジスレアは尖った耳、少しウェーブがかった金髪、エメラルドグリーンの瞳をした美少女だった


耳の特徴や容姿からエルフであることは間違いなかった


他国では、人以外は亜人と呼ばれ、迫害されていたりするが、グーベルク王国では、そう言った意識はなく人以外の種族もそれなりに暮らしている


だが、故郷である集落からほとんど出ようとしない閉鎖的な性格のエルフ族の姿は少なかった




「俺の事は聞いているか?」


「はい、あの時私ほとんど意識がなくて、昨日意識が戻ってから、ライゾーさんに助けて頂いたことを知りました」


「そうか、体調はどうだ?」


「はい、もうすっかり良くなりました、でも私・・・」


「腕と足の事か?」


「意識が戻って無くなったはずの腕と足が元通りにになっていて、びっくりしました!」


「そのことは誰かに話したか?」


「いいえ、無くなった手足が元に戻ったなんて言っても、誰も信じられないでしょうから」




この世界で四肢の欠損の回復は、ほとんど不可能と言ってよかった


殆どと言ったのは、聖者や聖女と言った特別な癒しの力が使える存在であればかいふくかのうだからだ


だが、聖者や聖女から治療を受けるには、途方もない大金を積まなければならない


だから、一般人からすれば不可能と言っても間違いではないのだ


そんな力を、雷蔵が持っていると知られると、かなり面倒なことになる


その力を利用しようと、よからぬ奴らが群がってくるに違いない


彼女はそれを理解していたようで、誰にも事実を話していなかった




「それは助かった、絶対に秘密にしたいわけではないが、面倒なことになりそうだからな」


「それで、これからどうする?」


「私は、ライゾーさんに命を救っていただきました」


「本当なら、その恩返しをしたい・・・でも無理なんです」


「恩返しなんて望んでいないが、何故無理なんだ?」




そう尋ねると彼女の瞳から涙がぽろぽろと流れ始める


「私は、魔法には少し自信があったんです」


「特に精霊魔法が得意でした」


「でも、私は穢れてしまいました」


「精霊は穢れた者には力を貸してくれないんです」


そう言うと大声を出して泣き始めた、雷蔵にしがみついて!


「なっ!?」


ああ!やっぱりテンパってる!手がワキワキしてる!(゜Д゜;)


女性に抱き着かれたことなど、これまでにほとんどないので!


前世で嫁と子供がいましたが、嫁とは心は結ばれていましたが、肉体的には結ばれていませんでした


子供は、死んだ仲間の子供を引き取ったので血は繋がっていません


それでも、子供たちが泣いているとき、嫁はどうしていたかな、と思い返して


ゆっくりと頭をなでながら、彼女へ語りかけ始めた




「ジスレアお前は穢れてなどいない」


「自分を穢すのは自分自身」


「そしてそれは、人の道を外れた時だけなんだ」


前世で上忍からの指図とは言え、忍として罪のない人達を殺し続けた自分が、穢れた自分が何を言っているんだろう?


雷蔵はそう気づいて卑屈になりそうになるが、今はこの少女を励ますのが先だと気を取り直す


「お前は人の道を外れてはいないだろう?」


「でも、魔法が使えないんです あれから何度も使おうとしているのに・・・」


「やっぱり穢れた私は精霊に嫌われてしまったに違いありません」


そう言って、また泣き出してしまう




『そうなのか?イブ』


『いえ、精霊は彼女の事を嫌ってなどいません』


『恐らく彼女がそう思い込んでしまって、その思い込みが魔法を使えない原因だと思われます』


『そうか』


『精霊の意思を彼女に伝えることが出来るか?』


『マスターのお力をお貸しいただければ』


『どうすればいい?』


イブが精霊の意思を伝える方法を伝えてくる




「俺には契約している精霊がいる」


「その精霊に訊いてみたが、精霊たちはお前を嫌ったりしていない」


「でも、だったら何故、私は魔法が使えないんですかっ!?」


「落ち着け・・・今から精霊たちの意志をお前に伝える」


「両手を貸してくれないか」


雷蔵は、ジスレアの手を取り、集中する


人工精霊であるイブの知覚を自分へリンクさせ、気の力を使って、イブの知覚情報をジスレアへと送り込む


『以心伝心の術』


忍法:以心伝心の術 偵察の結果などを、言葉ではなくイメージで伝えることが出来る




しばらくすると、ジスレアは温かい感覚が両手を通して流れ込んでくるのを感じる


それは、いつも自分に力を貸してくれている精霊たちの思いだと気づく


精霊たちは、ジスレアの事を気遣い、励ましているのだと感じた


「大丈夫?」「元気を出してね」言葉は聞こえてこないのに、精霊たちがそう思っていると分かった


「いつもありがとう」心の中でジスレアは精霊たちに感謝の気持ちを贈る


精霊たちが笑っているように感じた




「どうだ?精霊たちはお前を嫌っていたか?」


「いいえ 心配して、そして励ましてくれました」


「そうか、よかったな」




「今なら、精霊が力を貸してくれる」


「魔法が使える気がします」


「無理はしなくていい ゆっくりとな」


「水の精霊よ、その力をもって、我に恵みの水を与えたまえ ウォーター」


すると、目の前に、どんどんと水が集まってきて直径1mもある水の球が出来上がった


「あれ、この魔法コップ1杯くらいの水を出してもらう魔法なんですけど」


「久しぶりに使ったから、精霊が張り切ってくれたんじゃないか?」


雷蔵がそう言うと、ジスレアが噴き出して笑い始めた


そうしたら、魔法の集中が途切れたのか、水の球が落ちてきて、二人は水浸しになる


びしょ濡れになった二人しばし見つめ合う


同時に吹き出して、二人して笑った




「それで、魔法は使えることは分かったわけだが」


「これからどうする?」


「私、ライゾーさんに恩返しがしたいです、この精霊魔法を使って」


「実は、魔法が得意な奴を探していてな その一言を待っていた」


そう言って、また二人して笑い合ったのだった



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ