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## 第一章 ## 「皇帝、会議中に迷子になる」



# 『寂しがり皇帝は、未来から来た彼女にだけは勝てない』


## 第一章


## 「皇帝、会議中に迷子になる」


---


大帝国アルヴェリア。


その中心にそびえる白亜の城は、誰もが恐れ、誰もが憧れる場所だった。


だが、その城の最上階で──今日も事件は起きていた。


「陛下がいない!!」


宰相の叫びが、大広間に響く。


重臣たちが一斉に立ち上がる。


「またか……!」


「今度はどこへ……!」


この国の皇帝・レオンは、歴史上もっとも優れた統治者になるはずの男だった。


だが同時に、歴史上もっとも“行方不明になる皇帝”でもあった。


その頃。


城の厨房。


レオンは真剣な顔でスープをかき混ぜていた。


「この塩加減……国の未来を左右する味がする」


隣で料理長が頭を抱える。


「左右しません!!ただの昼食です!!」


「愚かだな。食とは政治だ」


「その理論で厨房を占拠しないでください!!」


レオンは真面目だった。


いや、真面目すぎるがゆえに、どこかズレていた。


彼は民を愛し、国を良くしたいと本気で思っている。


だがその方法が、だいたい“スープの味見”から始まるのだ。


そのときだった。


城の中庭に、異変が起きた。


空気が裂けるような音。


次の瞬間──


黒い裂け目が、空間に開いた。


「……ここが、“過去”」


そこから一人の女性が現れる。


黒いコート、鋭い目。


だがその瞳の奥には、疲れと覚悟があった。


彼女の名前はミラ。


彼女は知っている。


この世界の“10年後”を。


そして、その未来は──壊れている。


「間に合った……まだ、崩壊の前だ」


ミラは静かに呟いた。


その瞬間。


背後から、呑気な声がした。


「そなた、迷子か?」


ミラは振り返る。


そこにいたのは──スープ鍋を持った男。


金の髪、落ち着いた目。


そして、あまりにも場違いな笑顔。


「朕はレオン。この国の皇帝だ」


ミラは固まった。


(……この人が?)


未来の記録では、“暴政の象徴”として語られる男。


だが目の前の彼は、どう見ても──


厨房で迷子になっている人だった。


「えっと……ここ、どこだと思ってます?」


「厨房だが?」


「正解ですけどそうじゃない」


レオンは真剣にうなずく。


「そなた、腹が減っているのだろう。人は空腹だと道に迷う」


「違います」


「ではスープを飲め」


「話が飛びすぎてる!!」


ミラは頭を抱えた。


(……本当にこの人が、未来で“あの皇帝”になるの?)


しかしそのとき。


ミラの胸元の機械が、小さく警告音を鳴らした。


『警告:歴史変動の可能性』


ミラの表情が変わる。


(やっぱり間に合ってる。まだ修正できる)


彼女は一歩前に出た。


「皇帝レオン。私は未来から来ました」


「ほう」


「あなたはこのままだと、この国を崩壊させます」


沈黙。


料理長がそっと後ずさる。


「また変な人来た……」


しかしレオンは怒らなかった。


むしろ──少し悲しそうに笑った。


「そうか」


それだけだった。


「……信じるのですか?」


ミラは逆に戸惑う。


普通なら、誰も信じない。


だがレオンは、スープをひとくち飲みながら言った。


「そなたの目は、嘘をついておらぬ」


その言葉に、ミラは一瞬だけ言葉を失う。


(……この人、本当に暴君になるの?)


そのときだった。


遠くで爆音。


「敵襲!!」


城が揺れる。


衛兵が駆け込む。


「北門より正体不明の魔導兵が侵入!!」


レオンはスープを置いた。


さっきまでの間抜けな空気が消える。


「……そうか」


その声は静かだった。


だが次の瞬間、空気が変わる。


「民に被害は?」


「まだ出ておりません!」


「ならば十分だ」


レオンは立ち上がる。


そしてミラを見た。


「未来から来たと言ったな」


「はい」


「ならば少しだけ見せよう」


「何をですか?」


レオンは笑った。


「朕が、“この国を守る方法”だ」


---


城壁の上。


炎と煙。


敵の魔導兵が次々と侵入してくる。


重臣たちは混乱していた。


「皇帝はどこだ!」


その声の中で──


レオンが現れる。


だが彼は剣を持っていない。


代わりに持っていたのは──スープの鍋だった。


「……陛下?」


誰もが固まる。


ミラも固まった。


(何をする気!?)


レオンは鍋を掲げる。


「民を傷つける者よ」


静かに言う。


「ここは、朕の国だ」


次の瞬間。


スープが光る。


魔力が溶け込んだそれは、風のように広がり──


敵兵の動きを一瞬止めた。


ミラは目を見開く。


(……魔力制御? こんな使い方……!?)


レオンは続ける。


「朕は戦を好まぬ」


「だが、民を泣かせる者は嫌いだ」


そして──一歩踏み出す。


その姿は、さっきまで厨房で迷子になっていた男とは別人だった。


敵兵が怯む。


だがレオンは剣を抜かない。


ただ静かに言った。


「帰れ」


その一言で、魔導兵たちは撤退していく。


まるで“心を折られた”ように。


戦いが終わる。


静寂。


風だけが残る。


ミラは呟いた。


「……何、今の」


レオンは振り返る。


またいつもの少し抜けた顔に戻っていた。


「スープは冷めてしまったな」


「そこじゃないです!!」


その瞬間だった。


ミラの胸元の機械が再び警告音を鳴らす。


『警告:未来変動開始』


ミラは息をのむ。


(もう“変わり始めてる”……この人のせいで)


でも同時に思ってしまう。


(この人、本当に“壊す側”なの? それとも──)


レオンは空を見上げた。


「朕は、寂しがりなのだ」


ぽつりと呟く。


「だから……民が笑う国にしたい」


その言葉は、誰にも届かないようで。


確かにミラの胸に刺さった。


---


そしてその夜。


城の屋上。


ミラは一人、夜風に立っていた。


「……この人を止めるべきか」


しかし背後から声。


「止める必要はあるのか?」


振り返ると、レオンがいた。


スープの鍋を持ったまま。


「まだ朕は何も知らぬ」


「だが、そなたの未来は変えられるのだろう?」


ミラは言葉を失う。


レオンは少し笑う。


「ならば教えてくれ」


「朕は、どうすれば“嫌われぬ皇帝”になれる?」


その問いは、あまりにも真っ直ぐで。


ミラの心を揺らした。


(この人を救うことは、本当に未来を壊すことなのか……?)


夜風が吹く。


運命が、少しずつ動き始めていた。


---


## 第一章・終


---


# 次の展開おすすめ


このまま続けるとかなり強いです:


* 第二章:ミラが“未来の崩壊原因”を話せない理由

* 皇帝の「デート回(ギャグ全開)」

* 宮廷内に裏切り者登場

* 皇帝の“寂しさの正体”が判明


続き書くならどれ行きますか?


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