第99話 - ティアの冒険 -
14万PVありがとうございます。
今回はGWで時間が取れたので少し長めです。
気に入って頂けたらブクマ、高評価をお願いします…!
疾風の翼のメンバー達は緊張していた。
一部の者達には、将来まで語り継がれていくであろう。と称された冒険者が自分らの目の前で肉を頬張っているからだ。
彼はその見た目とは裏腹に、見ている者も震え上がらせる程の多彩で高威力の魔法を行使する。そしてその魔法で数々の実績を残してきている。
一部の冒険者から生きる伝説と呼ばれるのも不思議ではない。
「おい、ティア。その海老は俺が先に目をつけてたんだぞ」
「私のフォークからは誰も逃れられない」
「まったくもう!海老は逃げないよ!皆んなも食べなよ?」
「「「ははは……」」」
高ランク冒険者も人間。目の前にご馳走があればそこは戦場となり得るのだ(?)
そう思ったのは疾風の翼リーダー、ハイクであったが、自分らもご馳走を前にして、食べないという選択肢はなかった。
それに、せっかくの高ランク冒険者と接する機会だ。話を聞ける良い機会だ。
「では、ティアさんもBランク冒険者になられたんですね!」
「ん!」
疾風の翼唯一の女性リーナから、憧れの眼差しで質問に答えるティア。握られたフォークの先には大きな海老が踊っている。
「改めておめでとうございます!」
「私達も早くBランクになりたいね〜!」
「そうだな」
短く相槌を打つこの男は、盾役のバナード。彼の持つスプーンには既にデザートが乗っている。見た目とは裏腹に甘党なのかもしれない。
「Bランクの試験は毎回変わると聞きますが、もし良かったら今回の試験のお話を聞かせてもらえませんか!?」
「あ、そういえば俺も詳しく聞いてなかったな」
ハイクの話ににベルゼも便乗する。
先程までフォークの先にいた海老は尻尾を残し既にティアの口の中だ。幸せそうに頬張る彼女は、2人からの話に悪い気はせず、ちょっとだけ自慢げに話し始めたのだった。
ー ー ー
その試験は、ベルゼが前世の知識からイメージする、ギルドの試験よろしくご多忙に漏れず、試験に集った者達でパーティを組み、協力し合いながら問題を解決するという内容だった。
だが、ベルゼが前世で読んでいた小説には少なからずいた、パーティを組んだら俺様が〜!と偉ぶる者や、謎にライバル視してくる今後良きライバルフラグを立てそうな者はいなかった。残念なことに。
ただただ普通に愛想の良い者達とパーティを組む事が出来たようだ。
やや、前衛重視のパーティではあったものの、何事も不便はなく、そして変なフラグも立つ事なく、道中も至って普通に進んだ。皆が協力し合い魔物を狩り、卒なく試験に臨めていたらしい。途中までは。
そう、途中までは。
獣人と人間のハーフであるティア。普段は少ない魔力でも使う事ができる変身魔法によって、猫耳や尻尾を隠している。
だが、その嗅覚や身体能力などは、純粋な人間に比べ圧倒的に優っている。
他のパーティを含め、おそらくソレに気がついたのはティアだけだったかもしれない。
今回の試験内容は、数年前に人口減少で滅んだ山間の村に、何処からか突然湧いて出たアンデット種が住み憑き、周辺の街や街道を通る者に被害が出るようになってしまったので解決するというものだった。
山間の村、しかも数年も放置されていた村というだけあって、街道から一本外れた村へと通ずる道も荒れ果ていた。
「よし、とりあえずここからが試験本番だ。分かっているとは思うが、無理はするなよ。あくまで試験だからな。」
男は地図を見ながらそう言った。ティアを含めたパーティメンバー全員が真剣な顔をしながら頷く。
「じゃ、じゃあ中衛の私が指揮を執らせてもらうけど、なにぶん初めてだから上手くいかないかもしれない。私なりに全力は尽くすけど、命に関わる事や危険と判断できる最悪の場合は私の指示よりみんなの身を優先してね!」
互いの事を殆ど知らない者通しでの臨時パーティ。とはいえ誰かが指揮を執る必要があるという事で、後衛か、中衛の者で話し合った結果、リーダーとなった彼女が、そう言った。
荒れ果てた村へと続く道は次第に鬱蒼とし、あんなに気持ち良く晴れていた青空は、既に見る影もない。
道中何度か魔物との戦闘になったが、そこはBランク候補者というだけあって問題はなく、順調に歩を進めてきた。
そろそろ例の村…という所で異変に気がついたティア。それと、後衛を務める若い男性冒険者が不意を突かれ負傷したのはほぼ同時の事だった。
「(臭いが変わった……?)」
先頭を歩くティアが手を上げ、歩みを止める。後ろに続く者達は、すぐさま同様に止まる。
リーダーの彼女が、何事か聞こうとした瞬間。後ろからの唐突な悲鳴で振り返る。
「うわあああああ!」
彼の腕は鋭利なもので斬りつけられ、出血の代わりにみるみる腐食している。
斬りつけた張本人は、『ケッケッケ』と笑い姿を眩ませたのだった。
「くっ…レイスっ!」
そう言うと、リーダーの彼女はすぐさま回復役ヒーラーとしての役割をこなす。
が、彼女の本業は回復魔法より味方の強化魔法バフを得意とするサポーターなのだ。そしてやはり初めてのリーダーということもあったのか、他の者への指示は全く出来ずに回復に専念している。
「厄介な魔物だな…姿を消せるんだろ…?」
「んっ。カンナはそのまま回復を。私とホルスでカバーする。」
「分かった!」
本来、不可視の相手と戦っている際、パーティメンバーが負傷した場合ならば、すぐさま移動するのが良いかもしれない。だが、腐食効果が付与された武器での傷は一刻も早く治療する事が望ましい。
というのも、見えない敵から安全な場所に移動して、それじゃあ治療するね!では全身が腐食し切ってしまうからだ。
カンナと呼ばれたリーダーの判断は決して間違いではない。
「カバーったっていきなり後ろに現れてピルナみたいに斬られたらどうするんだ!?」
「大丈夫、姿を消せると言っても完全に消えてる訳じゃない。それにレイスは単独行動専門の魔物。一体な私の剣で止めれる。」
どこかのストーカー呼ばわりされている男みたく完全に姿を消せる者は限りなく少ない。
レイスは生霊タイプの魔物。自身の姿を限りなく薄くしているのが、消えているように見えるトリックだ。
「なら俺は2人を援護する!レイスの対処は任せて良いか!?」
「んっ!」
小さく呟くとティアはすぐに目を凝らした。普段ベルゼ達と魔物を討伐している時と同様、その姿からは落ち着きが見える。
数瞬の間の後、まるで見えているかのような動きで、何も無い空間に技を繰り出す。
「瞬光双撃」
放たれた技は、本来リエルが使う技を模範した物だった。光を纏った剣で瞬時に2度斬りつけるのだが、その閃光は×のようにクロスしたものとなる。
『グギャアアァ!』
断末魔を上げた空間を、よくよく目を凝らすと薄っすら人型に見える。そして斬られると同時にその姿が明瞭になり息絶える。
リエルによって光属性が付与された、このエターナルイデアの前では、アンデット種は、その命を容易く断ち切る事ができるのだ。
「すげぇな!俺には全く見えない魔物だったが…それを一瞬で倒すのかよ!」
「ん。私は眼が良いから。それよりピルナは?」
レイスによってダメージを受けた青年、ピルナは苦痛の表情を浮かべてリーダーのカンナによって治療を受けている。
「大丈夫!私の治療魔法じゃ魔力回路までは瞬時に治す事は出来ないけど…これで問題ないわ!徐々に治るから!一応念の為、帰ったら高位回復魔法が使える人に診てもらってね!」
並程度の回復魔法では傷は治せても、魔力回路までは瞬間で治す事は出来ない。腐食部分は取り除き、回路は緩やかに回復する事になる。ピルナ本人も、全快ではないが試験に受かりたいという気持ちが強かった。負傷しただけの今のままでは不合格の可能性が高いだろうと判断し、試験続行を選択してしまったのだった。
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