第50話 - どこの職場でも -
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その日ギルドに併設された酒場は大変賑わっていた。長年誰も攻略出来なかったダンジョンが遂に攻略されたと聞いて、冒険者達は攻略した者がいるという酒場に集まっていたからだ。
「しっかし、アンタらが攻略しちまうとはな!」
「俺はデコピンで冒険者をぶっ壊した時にコイツらならって思ったがな!ガハハハ!全く見えなかったんだからな!」
「あれは凄かったよな!こんな小さいのに凄ぇぜっ!」
「アンタ、アルスローで竜を討伐したって本当なのか?」
「ああ、本当たけど…頼むからエールを飲ませようとしないでくれ…」
ダンジョンを出てギルドへと戻ってきた一行はギルド職員へと報告したのだが、これがなかなかに使えない職員だった。
ダンジョン攻略の証として持ち帰ったダンジョン核を見ても半ば信じていない様子。それどころかギルドカードも確認せず、ベルゼの風貌からガセだと判断したのだった。
普段ならいつもの女性職員が対応してくれるのだが、彼女は不在だった。
本来ギルドへの攻略階層の報告は義務付けられていないのだが、いつからかベルゼ達が帰ってくる度に「今日は何階層まで行きましたっ!?」と聞いてくるようになったのだ。
彼女のおかげ(?)もあって仕事真面目なギルド職員達はついにダンジョン攻略者が現れるかもしれないとベルゼ達の進捗具合は気にしていたが、一部の不真面目な職員達は気にすらしていなかった。
その一部の1人が今日報告した職員だったのだ。
当初、「まあ義務では無いけど一応報告したし、ダンジョン攻略の打ち上げをしようか!」と、"冥府の使者"は併設した酒場へと来て飲み食いしていたのだが、不在だった女性職員が戻って来た時にベルゼ達を発見し、「いつもの調子でどうだったか?」と聞いたのだが、事情を説明された職員は驚き、ダンジョンを本当に攻略した者が現れた事に対して、隣3軒には聞こえるような声を上げた。
ベルゼ達の素性や、(形だけだが)貴族に仕えている事、過去の討伐魔物、最近の情報、ダンジョン核の残骸から事実であろうと判断した職員は一瞬のうちにギルド長の部屋へと消えて行ったのだが、数分後、再び隣3軒に聞こえるような大声が上がった事は言うまでもないだろう。
改めてギルド長へと報告したのだが、最初に報告した不真面目な職員は定時退社をバッチリ決めていた為、確認が取れなかった。定時退社万歳。
報連相が出来ない職員は明日出社した際にどうなるか…こちらは想像に難くないがその話はもういいだろう。
2人の大声と他の職員達の話から、冒険者がゾロゾロ集まってしまい、ダンジョン攻略の情報がもたらされ、冒頭へと話が戻る。
「そろそろ引き揚げたいな?」
「そうね。これだけ騒がしいのは苦手。」
「べるぜー!私酔っちゃったぁ」
「うわ、酒くせぇ…どんだけ飲んだんだよ…」
「えへへへへ」
「今日は許してあげなよ。嬉しかったに違いない。」
「まあそうだよなあ。クロのこと結構羨ましがってたし。」
「えへへ」
その日の内に冒険者から街の人まで、噂はどんどん広まり、人々は夜更まで飲み明かした。
♢翌日
「うーあたまいたい………」
「飲み過ぎだよ。」
目を覚ましたリエルは二日酔いに苛まれていた。
それもそのはずだろう。昨晩は散々飲み散らかしたのだから。
再び見上げたベルゼの右眼は昨日と違い、今の両眼は元の紅色だ。そっとベルゼの右頬に触れる。
「今は普通なんだね。」
「普段は普通なんだよね。意識すると変わるみたいだね。」
「そうなのね。こっちの眼が好きだったけど、あの感じもゾクゾクしたなぁ」
「ゾクゾクって…」
「えへへ!思い出したら興奮してきちゃった…今日は朝からでも良いかな…?」
「嫌じゃないけど…」
ドンドン!ガチャ!
「ダメ。」
「「ティア」」
「今日は朝から打ち合わせするって言ってた。」
「ノックから入るまで早すぎない…?」
「何度もノックしたけど出てこなかった。これ以上待ったらおっぱじめそうだった。」
「うーティアちゃんのいじわるぅ!」
「いじわるじゃない。プライベート大事にするのは良い。でもパーティメンバーを蔑ろにするのは良くない。」
「「ごめんなさい」」
「ん、許す。」
そう。昨日はダンジョン攻略を祝うため、今後の打ち合わせは翌日の朝からしようと言うことになっていたのだ。一応空気を読んで2人の部屋で暫く待ってくれていたティアに感謝と謝罪する2人だった。
「新しい仲間も増えたし、改めて簡単に自己紹介しよっか。疑問とか質問は後から聞いてね。じゃあまず、リエルから。」
リエルは回復魔法により既に二日酔いから復活している。
「リエルだよっ!みんな知ってるとは思うけど、魔法と剣を使うよ!得意な属性は光属性だよ!改めてよろしくねっ!」
「ありがとう。次はティアね。」
「ん。ティア。魔法は使えないけど剣はそれなりに使えるつもり。よろしく。」
「はい、次はクロ。」
『シャドウクリーパーのクロだ。クロという名は主から賜った故、我のセンスではないぞ。闇属性ゆえ、他の属性は使えぬがよろしく頼む。』
「俺にネーミングセンスは期待しないでね。次は天狐。」
『はーい!天狐ちゃんだよ!光属性の魔物だけど、リエルちゃんの使い魔になったからよろしくねっ!リエルちゃんは今度アタシに名前つけてね!」
「分かったっ!」
「はい、じゃあ自己紹介終わり。質問とか疑問ある人ー?」
手を挙げたのはティアだ。
「シャドウクリーパーと天狐は私は聞いた事しか無い魔物だった。それがリエルとベルゼの使い魔になってるのはどういう事なの。」
「それについては生きて帰れれば話そうって言ったし、これからもパーティメンバーとして一緒にやってくから説明しなきゃね。」
『我らは確かに魔物である。だが、ただの魔物では無い。』
『そうそう!アタシ達は光と闇の最上位の魔物なの!最上位の魔物は、その属性を極める者と契約ができるの!』
「闇属性が得意の俺は、闇属性最上位のクロと契約して、光属性のリエルは光属性最上位の天狐とさっき契約が終わったの。」
「なるほど。では最初、天狐の声は聞こえなかった。でも今になって天狐の声が聞こえるのは。」
「私も最初クロの声は聞こえなかったの。ベルゼがクロと契約をしたら私にも聞こえるようになったんだけど、2人の契約が終わってから聞こえるようになったから、もともとベルゼとパーティの私にも聞こえるようになったんじゃないかなって思う!」
「なるほど…今までたくさん魔物を討伐してきたけど、こういう事があるなんて未だに信じられない。。」
「私もそうだったぁ!でも単純にベルゼとクロは羨ましかったなぁ」
「クロと契約した頃ずっと羨ましそうにクロと戯れてたもんね。」
「確かにずっとモフモフしてた気がする!笑」
『うむ。嫌ではなかったな』
『小僧ずるい!リエルちゃん私もモフモフできるからねっ!』
「わーーーい!!!!」
「ところで…」
ぐううう…
「ごめん、お腹空いたや…」
「朝食もまだだったもんね!」
「私もお腹空いていた。」
『主よ、続きと今後の予定は食事の後にでも…我は甘味が良いのだが…』
『甘味ってなにっ!?アタシも食べたい!!』
「みんなごめん!笑 クロの言う通り朝ご飯の後に話の続きをしようか。」
「「『『さんせーい!』』」」
ベルゼの腹の虫によって話し合いは一時中断となるのだった。
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