第101話 - ティアの冒険3 -
ティアの冒険はこの話でおしまいになります。
2人が急に倒れた。
洞窟に光が差していて綺麗な場所。だけど、とてつもなく嫌な臭いがする場所。姿は見えないけど何かがいるのはすぐに分かった。
今のレベルで、ましてやリエルから借りた光魔法があれば、Bランク位の魔物に遅れをとる事はない…と思ってた。
自信が無い訳じゃないけど油断はしたくない。したく無かったんだけど、2人は倒れてしまった。
幸い拘束系の魔法らしいから、命に別状はなさそう。でも私一人だけならまだしも、2人が動けない状況で、複数の敵を倒して前に進む事は厳しそう。
「ん。ピルナは攻撃できる?」
無事だった彼にそう聞いたものの、表情は明るくなかった。先に進むのは諦めるしかない…か。。
魔物が湧いて出て来る原因は分からないけど、この洞窟から魔物が出ないようにする事はできそう。ここは脱出するに決定。
「この洞窟から退避する。もし、魔力が練れるなら身体強化で2人をお願い。道は私がひらく。できる?」
この問いに対しては、芳しい顔だった。彼は表情でよく分かる。
それならば。私がしっかり道を作って全員で無事に脱出する。
ー ー ー
「摩煇怨靁っ!!」
私に出来ることを全力でするだけ。
光を纏ったエターナルイデアを振るう。その技は剣を振るう度に、光の波動が邪の者の動きを阻害する。
その剣技に見惚れていたピルナ。
出会ってから間も無く、正直彼女の事はよくしらない。人前でよく喋るタイプというよりは、どちらかというと寡黙なタイプなのだろう。剣の腕はレイスを倒したり、これまでの戦闘で見はしたが、魔法使いの自分にはよく分からなかった。
それでも彼女の剣はとても美しく思えた。こんな状況で呑気な事を言ってるんじゃねえ!と、ホルスに言われても仕方がないだろうな。ピルナは動けない2人を担いでほんの少し惚けていた。
「進む」
短く綴られた彼女の言葉。その声でハッとしたピルナだったが、洞窟内の魔物がかなり間引かれ、入り口へと通ずる一本道が見える。
「急ぐ!」
やや大きめの声と共に彼女は走り出した。彼女が切り開いた道はやがて魔物が再び塞ぐだろう。ピルナも遅れずに走り出した。
先ほどまで進んでいた洞窟を逆戻りする。その一本道には倒してきたはずの魔物が復活したかのように大挙している。
前を走るティアはそれを意に介さず斬りながら道を切り開いていく。
「ん!出口が近い」
どれだけ走っただろうか。身体強化をしているとはいえ、2人を担いで全力で走るなんて今までに無かった。肺はかなり悲鳴を上げている。
そんな中で前から聞こえた言葉に、疲れ果てていた脚も心なしか早くなる。
「洞窟をでたらそのまま走り抜けて!」
「分かったッ!!」
入り口から差す光を駆け抜けた2人。
洞窟を飛び出したピルナは言われた通り森へと走り抜ける。
動けないまま申し訳なさそうにするホルスと、祈るように目を閉じているカンナを抱えたまま。
一方ティアはというと、洞窟から飛び出した瞬間、振り返り剣を振るう態勢に入る。
光の魔力をありったけ注ぎ込み、振るう技をもしピルナが見ていたらきっとまた見惚れていただろうか。
目にも止まらぬ速さで振られた剣は、光る斬撃となって崖を切り崩す。そうして崩れた土砂で洞窟の入り口は完全に封鎖されたのだった。
「おい!今の音は…!?」
やがて動けない2人を担いだピルナが、崖が崩れた音を聞いて森の方から戻ってきた。
「ん。」
短く答えるティアの目線を追ったピルナは、ティアが洞窟の入り口を塞いだ事を一瞬で理解した。が、
「おいおい!洞窟の入り口を塞いだって、レイスなんかはすり抜けて来るぞ…!?」
本来であればその通りである。アンデット種の中でも実体を持たない幽体のレイスなどは、入り口を土砂で塞いだところで、すり抜けて来られるのである。
ただし、本来ならば。が付くのだが。
「ん。ありったけ光の魔力を込めた技で斬った。土砂で埋まった入り口は光が充満してる。だからアンデット種は入り口から出て来れない。」
ティアの言葉を聞いて、なるほど。と感心するピルナ。アンデット種は、特に光に対して弱い。実体があろうが、幽体であろうが、洞窟内部からあの光の魔力に溢れた土砂をすり抜ける事はしないだろう。もしすり抜けようとするならば、自動的に消滅する事になるだろう。そのくらいアンデット種は光に弱いのだ。
「そうか、なら良かった。。」
明らかに安堵を浮かべドサッと腰を落とすピルナだったが、そこに近づく者がいるのをティアは匂いで感じ取っていた。
「お前たち大丈夫か!?」
「ん。」
「そうか。それは良かった。試験の途中だが、どういう事なのか状況を説明してくれないか。」
近づいてきた男はギルドの職員だった。
確か、試験はギルドの職員が監視していると、事前に説明があった。それは冒険者が試験で命を落としたり、重大な事が起きないようにするためだ。ただ、よほどの事がなければ試験中に出てくるという事はまず無いのだが。
ピルナが洞窟内部での出来事を詳細に伝え、光の魔力で洞窟の入り口に蓋をした事を伝えると、職員は満足そうに頷いた。
「そうか。一種の封印と言って良いな。なるほど…」
ギルド職員は暫く顎に手を当て、考える素振りを見せたあと、4人に対して伝えた。
「よし!これにて試験は終了。全員合格だ!」
「「えっ」」
「なんだ?不合格が良かったのか?」
「いえ…合格なのは嬉しいんですけど…」
「原因は分かってない」
まさかこの場で合格という事を告げられるとは思っていなかった上に、正直自分は何かをしたというわけでもない。活躍どころかパーティの戦力にすらなっていなかった。それなのに合格で良いのか?と思ったピルナだったが、ティアが口を挟んだ事によって遮られてしまった。
「今回の試験は、原因の解明ではなく"問題を解決する"だからな。何よりBランク魔物が複数いるとなると、Bランクの試験ではなくなる。それと、自分は何も出来ていないと卑下する事はないからな。今回はパーティでの試験だったんだ。100点満点では無いにしろ、協力し合い、問題を解決し、無事に全員で生還したんだからな。まあ後ろの2人は無事というか何というかだがな!はっはっは!」
その言葉を聞いて、ピルナの心はスッと晴れた気分になった。確かに途中で怪我を負い、あまり戦闘に参加する事はできなかったが、動けない2人を担いで無事に生還させる事ができたのだから。もし魔力が少ないティアだったらこうはいかなかっただろう。
現在拘束系の魔法にかかっている2人も、ここまでの道中に起こった戦闘で力量を測られ、また、治療中のカバーや、リーダーとして為すべき最低限の事はできていた。と、判断してもらえたのだろう。
「という訳だ。この紙を持ってギルドまで帰るのが試験だ。最後まで気を抜かずに帰れよ!」
そう言って4人に仮合格証を渡し、何処かへと消えて行く職員を見届け、カンナとホルスの回復を待った後、ティアはベルゼがいるギルドへと帰還したのだった。
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