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邂逅と交渉と攻撃

「いい事! 条件は三つ。彼らを交渉のテーブルに着かせる事。二つ目はその交渉で決まった事は絶対に守らせる事」


 戦闘ヘリのアパッチに先導されて飛ぶ輸送機チヌークの機内の通信機から鈴谷八重の声が響く。


「はい」


 神妙な風に紀一郎は返事をする。


「で、三つ目は…… えーっと、」


「三つ目は?」


「えーっと」


 言葉に詰まる。


「三つ目は考えてなかった?」


「うるさい、三つ目は自分で考えなさい」


「了解です。期待して待っていて下さい」


 司令部との通信が切れるとパイロットから通信が紀一郎の耳に聞こえてきた。


「一分後に降下地点に到着する。各員降下準備」


 周囲に緊張が走る。


 隣に座っているエメラインの手を握る力が自然と強くなる。


 ミリアとシュザンナはどちらかと言うと状況が理解できないのかキョトンとしていた。


 ケージが開き自衛隊員がロープを下ろしラペリングですばやく地上へ降下し周囲の安全確保を図り、次いでヘリも降下し始める。


 彼等からの攻撃があるかと予想していたのだが杞憂に終わった様だ。


 窓から外を覗くと近付いてくる者もなく遠巻きでこちらの様子を伺っているだけだ。


 紀一郎は安全ベルトを外して立ち上がりエメライン、ミリアと順に彼女達の安全ベルトを外していく。


「着きましたよお嬢様、どうぞこのままお父様の下へ戻って下さい」


「ありがとうキイチロウ。感謝しますわ」


 立ち上がり謝意を述べた。


「さぁ、行ってください」



 ナルトラウシュ辺境伯とその家臣達は街を見下ろす小高い丘の上に本陣を構えていた。


 領民の避難や有力者の護衛に辺境騎士団を巨人の足止めと攻撃に竜騎士隊をと二つに分け対処していた。


 しかし先の出兵で竜騎士隊は壊滅してしまい組織的な行動が取れず、また人間相手では高い効果を発揮する手槍や投石といった竜騎士の攻撃もその図体にふさわしい耐久力を持つ巨人に有効なダメージを与えられない。


 巨人が現れてから丸一日が経ち不眠不休で状況打開を図っていた辺境伯達は疲労の色が色濃く出ていた。


「閣下少しお休みになられてはいかがですか?」


 派手目な銀色のプレートメールに身を包んだ男がこの世界では高齢と言えるナルトラウシュ辺境伯を心配して進言する。


「いらん、それより前線の隊士達に順次休息を取らせるように徹底させろ。飲まず食わず寝ずではいずれ自滅するぞ」


「御意、じき伝令が戻りますので改めて指示を出しましょう」


 彼の名はオリンス・ブラドネッド、ナルトラウシュ辺境騎士団の団長で同時に辺境伯の軍事参謀を勤める。


 元々ヴェルター出身で竜騎士隊と違いこの土地に封じられてからの付き合いなのだが、誠実で実直な性格と統率力を買われて騎士団長となった男だ。


「ここに居る者も同様だ、皆も食事と休息を取るように。疲労と空腹では軍神レビナが嫌って勝利の珠を持ち帰ってしまうぞ」


「承知いたしました、某も糧食を貰いに行ってまいりますぞ」


 カチャカチャと金属音を鳴らしながら天幕を去っていった。


 街を見下ろす。あちこちで黒い煙が上がっており、倒壊した家屋などが見て取れる。


 貴族街に住んでいる貴族や裕福な商人などは早々と街から逃げており、残っているのは市井の領民と貧民街に閉じ込められている貧民だけになっていた。


 七年の歳月を掛けて守り育てた街が文字通り破壊されている様に唇を噛む。


「伝令! 伝令!」


 騒がしく声を上げ天幕に一人の騎士が入ってきた。


「ご苦労、前線ではどうなっておる?」


「はっ! 巨人ギガントと交戦中も今だ戦果が上がっておりません。しかし先程より多数のギガントがうずくまり動かなくなるという状況が発生し現在小康状態となっております」


「動かないとはどういう事だ?」


「は、それが……」


 少し歯切れが悪そうになる。


「恐らくは睡眠をとっているのではないかと思われます」


「好きなだけ喰らって好きな時に寝ると申すか……、我らをただの肉としか思っておらんのだな」


 いつもは温和なナルトラウシュ辺境伯の顔が怒りと憎しみに溢れる。伝令の騎士が思わず生唾を飲み込んだ程だ。



「眠っている奴に攻撃を加えてはならん。暴れている奴に攻撃を集中させ各個に撃破するのだ。それとお前達も休息と食事を取る様に、先は長いのだからな」


「ははっ、閣下のお言葉副団長以下全員にお伝え仕ります。閣下それともう一つ、シュザンナお嬢様の件でございますが……」


「まだ見つかっておらんか」


 伝令が沈黙する。無言の返事に一瞬逡巡するが。


「よい、今はアレを何とかする事が先決だ。従者も付いておる」


「ですが」


「行け」


 騎士は敬礼をして去って行った。


(このような日に限って城下に出掛けるとは……。大神マーグリーヴよ、どうか愛娘シュザンナを御護り下さい)


 ナルトラウシュ辺境伯は祈りを捧げた。


 目を閉じていると自然に耳に神経が集中するもので、本陣で家臣達が動き回っている音とは別に聞きなれない音がしている事に気付いた。


 何の音なのか聞き入っていると次第にその音が大きくなり、それに比例する様に家臣達も騒がしくなっていった。


「御館様! 何者かがこちらに向かって来ております!」


 トレント主席行政官が慌てた様にやって来た。


「何者……か? ギガントではないのか?」


「いえ魔物や怪物の類ではありません。恐らく人だと。こちらへ」


 天幕を出ると人々が同じ方向を見上げてそれに見入っていた。


 ナルトラウシュ辺境伯もそれを見つける。


 元々好奇心の強い彼は見るからに人工物と思われる飛行体に少しでも近付こうと歩き出した。


 バラバラと音を上げる飛行体は近付くにつれかなりの大きさを有しているのが分かる。


 下手をすると飛竜よりも大きいのではないだろうか、次第に周囲から警戒する空気が流れ出す。


「竜騎士達は皆出払っております。地上から攻撃致しますか?」


 トレント主席行政官が提案する。


「弓矢では届くまいて、それに敵かどうかまだ分からん」


「しかしボーダーラントの代物でないのは明白です。何者か知りませんがこの様な時に我らの本陣に空から乗り付けてくるなど敵対行為そのものではありませんか?」


 ナルトラウシュ辺境伯はケラケラと笑いだした。


「そうだな攻撃されても文句は言えんわな。だが何処の誰かはおおよそ見当は付く」


「……、やはり例の都市国家ですか。我らの窮状に付け込んで来るとは、オリンス団長に迎撃を指示いたします」


 ナルトラウシュ辺境伯の表情が曇る。


「竜騎士隊だけでなく辺境騎士団まで失わせるつもりか? わしが命じるまで攻撃は控えよと兵達に徹底させろ」


「御意」


 トレント主席行政官は素直に頷く。立場上そう進言しただけで本心ではなかった様だ。


 本陣の入り口まで行くと兵士達が武器を構えていた。統制が利いているらしく攻撃する者はいない。もっとも攻撃しても無駄だと言わんばかりの威容を放つ飛行体に気おされているともいえるが。


「閣下ここにおられては危険ですぞ、お下がりください」


 先頭で構えていたオリンス団長がナルトラウシュ辺境伯を見つけて諌めてきた。


「気にするな、アレを前にしては前方も後方も大して変わらん。それよりも兵達に持ち場を離れんように徹底させろ」


「はっ! 閣下の指令は隅々まで行き渡っております」


 飛行体は目と鼻の先にまで近付くとロープを垂らしたと思うとすばやく人がそれを伝って滑る様に降りてきた。


 周囲を警戒するようにすばやく散会すると次は飛行体が降下を始め地面に着地する。一連の行動は非常にスムーズでナルトラウシュ辺境伯は美しさまで感じる程だった。


「浅学な自分ではアレが何かはさっぱり分かりませんがこれだけは分かります、あれは兵士です。長年軍事に関わってまいりましたがあの様に洗練された動きは見た事がありません」


「気が合うなわしもだよ。絶対に動いてはならん」


 オリンス団長が頷く。元々歴戦の軍人で好戦的な人物なのだが、いやむしろ好戦的だからこそ目の前の兵士達と戦うのは絶対に不味いと直感的に感じていたのだろう。


 次に何が起こるのかと凝視していると中から場違いとしか思えない綺麗なドレスを着た少女が降りてきた。


 その見覚えのある衣装と風体を見たナルトラウシュ辺境伯は思わず走り出す。


「お父様!」


「シュザンナ」


 シュザンナは彼の胸に飛び込んだ。


「申し訳ありませんお父様……」


「良いんだ、良いんだ。良くぞ無事で」


 泣きじゃくるシュザンナを強く抱きしめた。


 その後ろからはミリアが姿を見せ彼の元にたどり着くと膝を折り臣下の礼をとる。


「準騎士ミリア帰参いたしました」


「ご苦労だった、他の者は?」


「混乱の中で散り々りになってしまい生死の判断すら分かりません。お嬢様を危険に晒してしまい何とお詫びしてよいか」


「その必要は無い、礼を言う。それより何があったか話をしてもらえるか」


「はい、詳しい報告は致しますがその前に彼らと会談を御館様にして頂きたいのです」


「後ろの連中とかね」


「は、お嬢様をここまで送り届ける事を条件に御館様との橋渡しを求められました」


「それでお前はそれを飲んだのか?」


「お叱りは甘んじてお受けいたします」


 ナルトラウシュ辺境伯は異様な迫力を見せる集団に目をやると、大きく溜息を吐いた。


「厳しい交渉になりそうだな」



 その後簡単な自己紹介と事情説明の後、本陣内の天幕で会談が行われる事になり紀一郎と自衛隊員を代表して明石一尉と一応の護衛役として三人の計五人が行く事となった。


 紀一郎は明石一尉を代表者に立てて通訳に徹するつもりだったのだが、本人にその気がなかったのとそもそもこちらの提示する条件を飲むか飲まないかの話でしかなかった為、紀一郎が直接交渉する事になった。


 対して向こうはナルトラウシュ辺境伯に加えてオリンス団長にトレント主席行政官が出席していた。


「まずは娘のシュザンナと準騎士ミリアを送り届けてくれた事を感謝する」


 ナルトラウシュが口を開く。


「こちらも下心でやった事ですから気にする必要はありません。ただ僕の事はご存知ですよね?」


 紀一郎は見覚えのあるトレントを一瞥するが彼はポーカーフェイスを崩す事無くこちらを見ている。


「部下から聞いているが先の戦いで捕らえた捕虜だったそうだな。どういう経緯でここにいるかは分からぬが無事で何より……。と、わしが労うのは門違いなのだろうな」


 慎重に言葉を選んでいるのが分かる。しかしそれは彼とは話が出来るという事の証拠でもあり紀一郎のやる気を上げるものだった。


「そうですね。その事はいずれ償ってもらいますが、でも今回我々がここに来たのはそれじゃあないんですよ」


 ナルトラウシュ辺境伯は紀一郎の真意は読めなかった。


「では何の用件で来られたのかな?」


「後ろにいる彼らは自衛隊といって僕等の国を護ってくれてる人達で、今回は僕を救出する為に来てくれたんですね」


 唐突に自衛隊員について話し始める。しかし内容がいまいち具体性に掛けており威嚇や脅しとも思えなかった。


「知っていると思うが色々と立て込んでおってな」


「でしょうね」


「申し訳ないが急ぎで無いならまた後日に改めて……」


 話を遮ろうとナルトラウシュ辺境伯が口を挟むと紀一郎は椅子から立ち上がりテーブルに両手を付き前のめりになる。


「本当なら僕を確保出来たんでもう帰る所なんですが……。ついでなんであの巨人も倒してあげようと思いましてね」


 言っている意味が理解出来なかった。


「な、ついでだと申すか?」


「見た所手こずっている様ですのであなた方の代わりにやってあげますよ」


 斜め後ろに控えていたオリンス団長がテーブルをバンッ! っと叩いた。


「ふざけるなっ! 貴様達の助力が無くともギガントなぞ我ら騎士団で屠ってくれるわ!」


「失礼ですがあれが現れてから一日以上経ってますがまったく対処できてない。それとも街の住人が巨人に喰い尽くされるまで待つつもりですか?」


「小僧!!」


「押さえよオリンス。話は分かった、奴等を君らが倒すというのならそれはそれで良かろう。……、だが当然タダではないのだろう?」


 食って掛かる彼をナルトラウシュはなだめる様に静止する。どうも若干芝居掛かっていて役割分担的にやっているようにも見えた。


「僕が本拠から受けている指示は三つです。一つは私達と交渉のテーブルに着く事。二つ目は一つ目に付随する事なのですが、その交渉で決まった事は必ず履行すると約束する事です」


「交渉? 今行っているのがそれではないのか?」


「僕を含めてここにいる人間はそういった事を決める権限を持っていません。後日代表者と色々な交渉をしてもらう事になります」


「なるほど、しかし具体的にどういった内容の話になるのかが分からねば返答は難しいのだがね」


 空手形は出せないといった所か。


「申し訳ありませんが僕からはどういった交渉になるかは何も言えません。しかし屈辱的な内容になる事は覚悟しておいて下さい。もちろんあなた方が私達に対して行った行為の償いも議題になるでしょう」


「なるほど、一応三つ目も聞いていいかね?」


「三つ目は……」


 ちらりと明石の方を見る。私事を入れることにためらいを感じたが惚れた女子の為ならどんな事でもやってのけるのが紀一郎が持つ性癖の一つでもある。


「三つ目はあなた方が人質として捕っていたエメライン・スヴェルを自由にする事です」


 最後の提案に三人は三様のリアクションを見せる。ナルトラウシュは笑いを噛み殺した表情になり、冷静沈着だったトレントは驚き、エメラインの事情を知らないオリンスは意味が分からないという顔をしている。


「この三案を受け入れればギガント共を主等が倒すと?」


「今日中に攻撃を開始し、今日中にケリを付けます」


「一つ聞くが会談には君も出席するのかね?」


「通訳として僕も出る事になると思いますが、それが何か?」


 即答を避ける様に少し溜めると彼は口を開いた。


「よかろう、君の提案を受け入れよう。助勢をお願いする」


「決まりですね、始めましょう」


 口角を持ち上げ紀一郎は右手でこぶしでテーブルをコンコンとノックするように叩いた。


 話が決まった後の明石達自衛官の行動は非常に素早かった。


 無線ですぐに司令部と連絡を捕り現状を報告、偵察機から得ていた航空画像等と照会して攻撃案が作成される。


 現地では前線で戦っている騎士や竜騎士の退避などの要望がナルトラウシュ辺境伯に伝えられ着々準備が進められていく。


 その後大体の準備が完了して攻撃を待つのみとなった紀一郎はエメラインの様子を見にチヌークへ向かう。


「大丈夫?」


 エメラインは大人しめにチヌーク機内の座席にちょこんと座って隊員から貰った糧食をかじっていた。


「よっぽど好きなのねその質問」


 気ぃ使いの紀一郎を揶揄する様に答える。


「そうかな? それ美味しい?」


「美味しいわよ。エセル麦を練って固めたみたいなのに不思議な味ね」


「よかった。もうじき攻撃が始まるから一緒に表で見ない?」


「でも……」


「エメラインの事は辺境伯に認めさせたし、自衛隊の人達が付いてるから安心だよ」


 彼女の手を引くがエメラインは立ち上がらなかった。


「ごめんなさい、疲れているの。このままで……」


「まあ物見遊山なんて趣味が悪いか……」


「あの怪物を倒したらその後どうなるの?」


「家に帰るだけだよ。でもこの街も人も予想した以上に相当破壊されてててね、うちの代表の指示で緊急支援をする事に決まったから当面はそれの手伝いをする事になるかな」


「支援?」


「そそ、食料や薬とか、その他諸々?」


「何で? ナルトラウシュ辺境伯はあなたの町を襲った敵なんでしょう?」


「何でって言われても……。まあそうなんだけどね」


「きぃ達はやっぱり変よ」


「かもね。でもまあこれが終われば帰れるんだから、もう少しの辛抱だよ」


「そう……」


 彼女は何か言いたい事がある様なのだが紀一郎はあまり気に留める事はしなかった。それよりもこれから起きる事やしなければならない事に気が向いていたからだ。


「大丈夫だよ、働くのは僕でエメラインは何も心配する必要なんか無いよ。疲れてるなら少し横になるといい。また後で」


 エメラインに笑顔を向けチヌークを後にした。



「ピンク髪の子とはもういいのか?」


 街が一望できる場所に行くと同じくギガントを見下ろしていた明石一尉が尋ねる。


「ええ疲れてるみたいだから休むそうです。虜囚生活は僕より長いですから」


「付いていてあげた方が良いんじゃないか?一人じゃ不安だろうに」


「まあそうなんですけどね、怪獣退治なんてこれを逃せばもう二度とお目にかかれないでしょう? それに時間はこれからいくらでもありますから」


「妬けるねぇ、攻撃開始まで一分切ってる。こっち世界の連中はどんなリアクションするか楽しみだよ」


「これが終われば彼らの態度も変わりますよ」


 二人は少し離れた場所でギガント達を見下ろしているナルトラウシュ辺境伯達を見る。


 航空支援に際して明石の指示に何かと反抗し、尊大な態度に若干うんざりしていた。


「来たぞ」


 明石の声で反射的に空を見上げる。


 紀一郎は何も見つけられなかったがジェットエンジン特有の音が徐々に聞こえ始め、音の方向に目を凝らすと四つの黒い点を見つける事ができた。


「見えた!? 戦闘機!」


「F2支援戦闘機だ」


 F2とはF16ファイティング・ファルコンをベースに三菱重工が開発したマルチロール機で対艦戦闘を得意としている。


 低空からの海上戦闘を想定しており海洋迷彩といわれる鮮やかなブルーの塗装が美しい機体だ。


「えらく低く飛んですね」


「あれはそういう機体なんだよ。レーダー探知の困難な低空で侵入して地平線ギリギリから攻撃するってのが主任務さ」


 地上に居るギガントの上空を飛び越えたと思うと一瞬光る赤い炎と膨大な爆煙が巻き上がり、それに伴う爆音が鳴り響いた。


 その刹那周囲から歓声が上がる。


 蒼い翼から投下された五百ポンド爆弾は無誘導ながら大きな的とパイロットの腕により直撃か超至近弾を連発させる。


「煙で見えませんけど、やったと思います?」


「アパッチの30ミリで倒せるんだから今頃ハンバーグになってるよ」


「勘弁してくださいよ、ハンバーグ食べられなくなっちゃう」


 その後もいくつかに散らばっていたギガントに爆撃が行われ、風に乗って火薬の匂いが鼻をくすぐる。


 一発約二百四十キログラムの高性能火薬による急激な燃焼の高温と爆圧で周辺諸共、原型をとどめる事無く生命活動を強制的に停止させられる。


 その後上空を駆るF2は目標の撃破を確認した後、紀一郎達にサインを送る様に上空をぐるりと旋回したのち悠々と飛び去って行く。


 こうしてヴェルターで猛威を奮った怪物の跳梁はあっけなく終了した。


「終わったな。感想は?」


 明石は得意気な顔で紀一郎を見る。


「何と言いますか、思っていた以上にその…… 地味? すごかったとは思いますよ?」


「これだから近頃のガキは。映画とかゲームのド派手な映像に慣らされてんだよ」


 炎で焼く事を目的としたナパーム弾と違い

爆圧と爆風でダメージを与える通常爆弾はそれほど派手さは無い。


「さて、これから人道救援活動だ。忙しくなるぜ。頼りにしてるぞ通訳官殿」


 紀一郎の方にぽんと手を載せる。


「もちろんですよ。ご存知無いでしょうが鈴谷八重を支えるのは僕の使命なんです」


 自信満々に応える紀一郎を見てヒュウと口笛を吹いた。

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