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竜使いの聖域~少年剣士カミルの探求記~  作者: チャラン
第3章 『広き世界ヴァイテヴェルト』探求の旅(後編)

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第40話 ハビツ

 親切なギルドの親父から十分な情報提供を受け、所用を済ませたカミルたち一行は、頑丈な加工が施された木材で構築されている総二階の建物を後にした。


 カミル、エミリア、ソフィーの3人は、今日の朝内にマルテの交易船から降りて、探し当てた総合ギルドに移動し、情報を仕入れていたわけだが、ゾンネサルツの広場にある立派な時計塔を見ると、まだ時刻は午前10時頃で、日が暮れるまで時間が十分残っている。


 そうした背景もあり、カミルとエミリアと一緒に、時計塔の時刻をしばらく見ていたソフィーが、


「天日塩の山や中央広場の大きな商店街とか、面白そうな所がいっぱいある町だけど、あの親父さんから良い情報を貰ったんだし、先を急いでみようか。ゾンネサルツを回ってじっくり見物するのは、今度にしよう。この町は西の大陸北部の一大拠点だし、また立ち寄ることになると思うよ」


 旅慣れた年長者らしく、できるだけ今日の時間を有効に使い、旅を進めようと2人にそう提案した。


 カミルとエミリアは、ソフィーの提案をすぐ理解し、納得と同意のうなずきを即座に返している。


 パーティの次の行動は決まった。カミルたち一行は、港町ゾンネサルツ北の出入り口から出発し、北西の高山都市、アトランティスを目指していく。




 ギルドの親父が提供してくれた地理情報にもあったが、カミルたちが所持している西の大陸の地図を開いて見たところ、ゾンネサルツから見て北西方向の図上にオリンポス山が鎮座しており、今、パーティがいる地点からその山麓(さんろく)までは、きちんとした街道がつけられていることも確認できている。


 ゾンネサルツ北の出入り口から伸びている街道は途中で枝分かれしており、所々に立て札も設置されている。それゆえ、塩田の港町ゾンネサルツから、西の大陸北部地域の各拠点へ向かうときは、この街道に沿って行けば大抵迷わない。


 また、街道の要所には馬車の駅も建てられており、幾らかの運賃を払えば、ゾンネサルツ発の幌馬車に乗って途中まで旅路を進めることもできたのだが、今回、カミルたち一行は、路銀節約のため、そういう選択をしなかったようだ。


 カミル、エミリア、ソフィーの3人は他の旅人に混じり、今、その街道を伝い、徒歩でオリンポス山の麓へ向かっている。


「雄大な景色ってやつだな。まだまだオリンポス山までは遠いけど、山の姿はここからでもしっかり見える。とても高くて神々しい山だな。眺めてるだけで威厳みたいなものを感じるよ」

「カミルって、そんな詩人みたいなことを思うのね。今までずっと一緒にいたけど知らなかったわ。でも確かにそういう気分にさせてくれる山ね。神様が居そうな、そんな感じの山」


 北西方向に街道を進むにつれ、姿が段々と大きくなってくるオリンポス山を眺めつつ、カミルとエミリアの幼馴染カップルは、ちょっとしたデート気分で語り合っていたのだが、ふと辺りを見ると、道を行く他の旅人や行商人の数が、めっきり少なくなってきたようだ。


 こうしたときに事は起こるものだが、流石は魔剣のソフィーである。


「2人で楽しそうなところ悪いんだけどさ。上を見て得物を構えな。来るよ!」


 銀髪の彼女は幾多の危地を今までくぐり抜け、鋭敏な嗅覚を鍛えてきたのだろう。辺りの瘴気の高まりを感じ、いち早く魔物の気配を察したソフィーは、多少油断していたカミルとエミリアに鋭く声をかけると、鋼鉄の片手剣をスラリと抜き、上空を旋回している大鷹型モンスター3羽を、キッと睨みつけた!


「空を飛ぶモンスター!? どうやって戦えば!?」

「パニクるんじゃないよ、カミル。この大鷹のモンスターたちは、ハビツと言う。こいつらは上空を旋回している間、こちらから手出しの仕様がなくてね。多少厄介だよ。ハビツが私たちに狙いを定め、かかって来たときに、カウンターで攻撃するんだ。エミリアも、よく動きを見定めて魔法を撃つんだよ。こっちから追ったら駄目だ。わかったね!」


 空を飛ぶ鳥型モンスター、ハビツに初めて遭遇し、狼狽しているカミルとエミリアであったが、百戦錬磨のソフィーから的確な指示を受けると、2人は心身のバランスを素早く取り戻し、


『はい!』


 と、大きな声で返事をすると同時に、戦闘態勢を冷静に整えた!


『ピィーッッ!!』


 甲高く、ともすれば美しさすら感じられる鳴き声を発しながら、ハビツ3羽は上空から急降下を始め、カミルたち3人目掛け、襲いかかってくる! だが、こちらの戦闘態勢は既に万全だ。カミルとエミリアはソフィーの的確なアドバイス通り、ハビツたちの動きを見定め、風の魔法ヴィントをカウンターで撃ち放つ!


『ピィーッ!?』


 魔法で生み出された風の刃は、3羽のうち2羽に命中し、1羽のハビツは断末魔の鳴き声と共に戦闘不能になり、真っ逆さまに地へと落ちてきた!


 残るはヴィントの魔法を受け、ダメージを負った1羽と、風の刃をかわした無傷の1羽だけだ。攻撃を喰らい、戦う力を大きく削られたハビツの群れだが、この大鷹型モンスターは勇猛で、この期に及んでも、まだ戦闘意欲を失ってはいない。

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