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竜使いの聖域~少年剣士カミルの探求記~  作者: チャラン
第2章 『広き世界ヴァイテヴェルト』探求の旅(前編)

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第35話 商人たちの支援

 今、カミルとエミリアが所持している装備品と比べ、2つの木箱の中に入っている5つの武器防具は、どう見ても格段に上のランクの品である。これほど素晴らしい装備品を、シューンの農村にいながらアルバンはどうやって仕入れたのか、カミルたちはその点が信じられず、輝くような品々を目の前にして固まってしまっている。


「ははっ。2人とも驚きすぎて声も出ないみたいだな。まあ、それだけの凄い武器防具が一式揃っているから、固まってしまうのも無理はないか」

「ああ……。すまない、なんか現実感がなくてな。それにしてもアルバン、こんな高価な装備をどういう()()で仕入れたんだ? シューンでは、俺が今持っている鉄の両手剣ですら、手に入れるのに苦労するだろう? それなのに、こんな素晴らしい武器防具が目の前にあるのが信じられなくてな……」


 笑いながらアルバンが話しかけると、カミルは体が固まった状態から抜け出せたらしく、自分が考えていたところを、そう率直に問いかけた。カミルの疑問を聞いたアルバンはというと、なぜか少し恥ずかしそうに顔を赤らめ、頭をかきながらこのように答えている。


「そのことか~。やっぱ、そう思うよな。俺が全部仕入れた! って言いたいところなんだけど、そうじゃないんだ。この装備品一式は、カミルの従伯父(おじ)さん、マルテさんからの預かり物なんだ」


 アルバンはコミカルな仕草を交えて、なぜ農村シューンに似つかわしくない、強力で高価な武器防具がこの店にあるのか、その種明かしをした後、装備品がここに至るまでの詳しい経緯を話し始めた。


(ある日、一通の手紙と共に、装備品一式が入った2つの木箱が、アルバンの万屋に送られてきた。アルバンは、手紙の差出人名を見て目を丸くし、両親と一緒にその内容を一通り読んだ。


 2つの木箱はマルテから送られてきた物だったのだが、手紙によると、港町ネプトスで有力商人として幅を利かせている彼は、海上交易ルートを使い、従甥のカミルと、そのガールフレンドのエミリアのために、鋼鉄の大剣、青玉鋼のプロテクター、白銀糸の強化服、菩提樹の杖、白銀糸のローブという、舶来品の上等な装備一式を仕入れたそうだ。


 マルテはカミルとエミリアに、これらの装備品を自分の手で渡したかったようだが、旅中の2人の所在が不明確であるため、シューンに構えを持つ、アルバンの万屋で預かっておいてもらおうと、荷をまとめて送ったのだという。


 手紙の内容を読んで、マルテの依頼を理解したアルバンは、その後、村外れに行き、「カミルたちが戻ってきたら、ここに来ると思う。そのとき、店に寄ってくれと伝えてほしい」と、家にいたエルマー翁に言伝を頼んだ。そういう一連の事の流れがあったらしい)


 アルバンから詳細な経緯を聞いたカミルは、


(従伯父さんは、ここまで俺たちを心配し、気にかけてくれていたのか……)


 と、感動すると共に、マルテがかけてくれた恩に感謝するしかなかったが、木箱の中に入れられた、あまりに立派な品々を見ている内に、ちょっとしたある気がかりも浮かんできたようで、親友の彼に、こういう話をしている。


「そうだったのか。マルテ従伯父さんは、こんな凄い装備を俺たちに……。でも、アルバン。これってタダで貰っていい物なのか? アルバンはこの場所を取る木箱を、店でしばらく預かってくれてたんだろ? 預かり賃くらいは払わないと……」


 全く何も払わないで、これだけの武器防具を受け取るわけにはいかない。そこに少々気がかりを覚え、考えを回したカミルは、魔法のポーチの中から幾らかの金を取り出そうとしたのだが、アルバンはそれを手で制し、


「そんなことするなよ、カミル。水臭いじゃないか。俺はマルテさんと同じで、カミルたちの旅を応援したいんだ。気にせず一式全部持って行ってくれ。そうしてくれないと俺が困る」


 気の置けない幼馴染の親友をそう咎めた(のち)、商品在庫置き場と更衣室を使って、贈った装備を試しに装着してみるよう促した。


 カミルは幼馴染のアルバンに対して、逆に無礼を働いてしまったことに気づき、恥ずかしさで耳を赤くしていたが、すぐに気持ちを落ち着けると、鋼鉄の大剣、白銀糸の強化服、青玉鋼のプロテクターを装備し、天井が高く広さがある在庫置き場で大剣の試し振りを行った。鋼鉄の大剣はカミルの手によく馴染み、振り心地が良く、身に着けた防具も、彼の動きの妨げにならないよう、ぴったりフィットしている。


 エミリアもカミルに倣い、万屋内の更衣室で白銀糸のローブを装備し、奥ゆかしい菩提樹の杖を手に取った。菩提樹の杖は、内在する力をエミリアが持つ魔力と共鳴させ、薄っすらと赤く光り輝いている。反応を見るに、どうやらこの杖は、自身を使いこなすに足る新しいマスターとして、エミリアを認めたらしい。白銀糸のローブも、エミリアのスレンダーな体型にフィットしており、試着に全く問題はなかった。


「うん。2人とも凄く(さま)になってる。いい感じだよ。やれやれ。渡す物を渡せて、これでようやく肩の荷が下りたよ。ハハハッ!」


 アルバンは、声を出して心から笑うと、良い格好になったカミルとエミリアの肩をポンと軽く叩き、親愛の情を見せている。


 マルテとアルバン、商人である2人からの支援により、カミルとエミリアは強力な装備を手に入れ、自分たちそれぞれの戦闘能力を、次の段階に押し上げることができた。


(こんないい友だちを持ってるなんて、カミルとエミリアは幸せ者だね)


 本当に仲の良い幼馴染3人のやり取りを、じっと見ていたソフィーはというと、そんなことを考えながら笑顔を浮かべ、一人うなずいている。

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