表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/27

第27話 狼は闇に手を伸ばす

第27話 狼は闇に手を伸ばす

■ 近江・観音寺城 小座敷(義仲一人称)

 夜の帳が下りる頃、俺は一人、灯したばかりの蝋燭の火を見つめていた。目を擦りながらも眠気抑えて地図を見る

 手元の地図には、伊賀の複雑な山系と、そこから四方に伸びる抜け道が書き込まれている。


(……伊賀という国は、一つの生き物だ。無理に掴もうとすれば霧となって消え、背を向ければ喉笛を食い破る。なら、どうするか色々の手があるか手荒の真似できぬ俺としての意地があるしな。)


 俺は筆をとり、伊賀の境界線に沿って、点々と丸を打った。伊賀当たり甲賀辺り六角家と伊賀や甲賀の国境周辺等などあまり広いと駄目だがこの丁度いい大きさなら“あれ”が出来るやも


(『伊賀守護』の職は、奴らにとっての宣戦布告だ。だが、『左衛門佐』の名分は違う。都の治安を守るという“公の目”を、奴らの逃げ場のない山々に配置する。忍びとしては身動き取れない……これこそが、俺の仕掛けた『檻』だ)


 忍びは、秘密を糧に生きる。

 ならば、その秘密を暴くのではなく、「常に誰かに見られている」という不快感を植え付ければいい。それはこれまで武士たちがされた事だ


(宇野には、付かず離れずの距離で『目』の役割を命じた。盛長には、その目を守るための『壁』になれと言ってある。……さて、伊賀の連中はどう動く?)


 俺は冷めた茶を喉に流し込み、暗闇の向こう側を、じっと見据えた。

■ 伊賀・千賀地ちがちの隠れ里

 伊賀の地侍、そして忍びの元締めである「上忍三家」の者たちが、人目を避けて座を囲んでいた。

誰音立てずに静かに殺気出しながら向かい合っている

 中心に座るのは、智謀に長け、多くの忍術書を遺したとされる藤林長門守ふじばやし ながとかみ。そして、伊賀随一の武闘派として知られる百地丹波ももち たんば


「六角の若造……いや、左衛門佐か。妙な手を打ってきよる我らの習慣や慣例を利用してじりじりと近づく本当に狼みたいだな…」


 百地丹波が、低い声で毒を吐いた。


「兵を入れず、命令も出さぬ。だが、境目には六角の旗が立ち、不気味なほど静かにこちらを伺っている。……追い出そうにも、奴らは『京を警護する役目だ』と言い張る。手を出せば、こちらが『公敵』だ」


「……あの大狼、伊賀を御する気ではないな」


 藤林長門守が、細い目をさらに細める。


「奴は、伊賀という闇に『光』を差し込もうとしている。隠れようにも、絶えず誰かの視線を感じる。……これは、忍びにとって死よりも辛い。我らの『自由』が、あの狼の眼光に射抜かれているのだ」

(まして何が手打ってくる気もしないのが気味が悪いなのだかな)と上忍達3人感じている。

 伊賀はかつて、仁木氏を追い出し、守護を置かせなかった歴史を持つ。忍びとしては武士や公家居たら動きバレるし自由は活動するのが制限されて飼い殺しされてしまう可能性あるので仁木氏を追い出した経緯がある。


 だが、今の六角義仲は、武力ではなく「存在感」そのもので伊賀を侵食していた。天下を狙う者たちは必ず何が内に問題抱えてから成長した。三大英傑信長・秀吉・家康そして信玄・謙信・氏康群雄達もだ……

■ 伊賀・境目の陣(義仲一人称の継続)

 伊賀の麓に展開する我が軍の様子が、宇野宗秀から逐一届けられる。義仲は報告を聞きながらにやりと笑うと宇野宗秀からの報告にまた耳傾けていた。


「殿の仰せの通り、忍びに気取られる程度の距離で、常に姿を見せております。……奴ら、苛立っておりますな。姿を消す隙を与えぬ監視は、彼らにとって何よりの屈辱にございましょう」


 宗秀の報告に、俺は小さく頷いた。


 一方、軍を預かる小川盛長は、血気盛んな兵たちを抑えるのに必死だった。兵共は六角家の軍政の一環で始まった農兵や足軽の中から選ばれた数少ない精鋭農兵や足軽達である手柄欲しいだろう。


「……抜くな! 刀を抜けば、このにらみ合いは終わる。殿は、この『気まずい静寂』こそが勝利だと言っておられるんだ。耐えろ!」


 盛長が歯を食いしばる。


 彼の不満も理解できる。だが、ここで血を流せば、伊賀は完全に三好や筒井の側に落ちる。ましては手柄取り義仲やその周りに居る重臣達に気に入ってもらえて立身出世したいのだ。


(盛長、よく耐えた。その辛抱が、狼の罠を完成させる最後のピースだ)

■ 数日後・伊賀の結論

 伊賀の里では、再び密談が交わされた。

「……六角は、踏み込まぬ。だが、背も向けぬ」

「噛みつこうにも、相手は牙を隠してこちらを見つめているだけだ。……気味が悪い」


 藤林長門守が、重い口を開いた。


「今は、動かぬ。……あの大狼が、この伊賀を使って何を企んでいるのか。あるいは、何を『守ろう』としているのか。それを見極めるまでは、我らの刃は鞘に収めておく」


 伊賀が、初めて「沈黙」を強いられた瞬間だった。

■ 夜更け・観音寺城(義仲一人称)

 独り言のように、俺は呟いた。

「吠えるな。踏み込むな。だが、目は逸らすな」

 狼は、闇を恐れない。闇の中に溶け込み、相手が自分を「どう見ているか」を逆に見透かす。


(伊賀は、まだ俺の国じゃない。……だが、俺以外の誰にも使わせる気はない)


 俺は地図の上、伊賀の文字にそっと手を置いた。

(闇を統べるには、闇そのものになる必要はない。……ただ、闇よりも深く、静かに息を潜めればいいだけだ)


 近江の大狼は、碧金の刀を傍らに置き、静かに目を閉じた。

 その意識は、既に伊賀の山々を越え、次なる一手――この沈黙を嫌うであろう「三好長慶」の動きへと向けられていた。


### **第27話 後書き**

第27話をお読みいただき、ありがとうございます。

この回で描きたかったのは、「何もしない」という行動が与える最大の重圧です。

義仲は伊賀に対し、あえて兵を出さず、交渉もせず、ただ**「そこに視線を置く」**という選択をしました。

忍びにとって、闇を暴かれるよりも「見られているせいで何もできない」状況こそが、最大の屈辱であり、封じ込めになります。

「近江の大狼」という名は、吠えて威嚇するためではなく、**「一度狙った獲物の喉笛を、音もなく、確実に捉える」**その静かな眼光を指しています。

さて、第28話からはこの「静」が「動」へと一転し、周辺諸国を呑み込む怒濤の展開が始まります。

#### **■ 今後の予定:第28話〜「狼の遠征編」**

ここからの義仲は、一切の無駄を省いた「実利」のみで天下を塗り替えていきます。

**【第28話:内政編「牙を研ぐ」】**

* **精鋭農兵と足軽の組織化:** 土地に根付いた農兵を、徹底した実戦訓練によって「個」を捨てた「組織」へと昇華させます。

* **武具の統一:** 刀の反りから弾薬の持ち方まで、戦場で最も効率的に動けるよう規格化。

* **天下人の狼光ろうこう:** 領内の停滞や嘘をこの光でスキャンし、一寸の隙もない軍事拠点を作り上げます。

**【第29話〜:伊勢・北畠家編】**

* **「剣豪 vs 組織」:** 剣豪・北畠具教に対し、義仲は**「一騎打ち」**に応じます。しかし、それは誇りのためではありません。最強の敵を自ら引き付け、その隙に組織として相手の退路を完全に断つための、冷徹な勝利の計算です。

**【第32話〜:北近江・浅井家編】**

* **「佐和山・小谷城の解体」:** 近江の分断に終止符を打ちます。浅井の語る「義」に対し、義仲は圧倒的な物量と封鎖によって、逃げ場のない「敗北という現実」を突きつけます。

**【第36話〜:河内・畠山家編】**

* **「旧秩序の崩壊」:** 権威に縋る名門・畠山を、「狼光」で暴き出した内部の腐敗と、調略によって戦う前に自壊させます。

義仲はもう、迷いません。

「左衛門佐」としての権威を背負い、静かに、だが確実に獲物を仕留めていく。

第28話からの爆速の進撃、ぜひご期待ください

話前後するのと伸びる可能性あります笑


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ