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やる気、衣装替えをする

 日暮れギリギリのタイミングで巡洋船に戻ると、まず制服すずのを呼んでヴァンを食堂に連れて行ってもらい、私は足の不調を訴えるエリックを連れて医務室へ行った。


 医務室には看護服すずのの他に、一番最初にエリックたちと救助した女性がようやく意識を取り戻した様子でベットに座っていた。


 ところがエリックの姿を見た途端、急に取り乱して悲鳴を上げながらベットの上を後退り、隅の方で自身の身体を抱えこんで小刻みに震わせながら、言葉にならない言葉を呟き始めた。


 私とエリックはその姿を見て互いを指差して見合った。


「……いまのはどう見てもエリックの姿に反応しただろう」

「いや、デザイアさんの姿を見て恐怖を感じたんじゃないですかねぇ」


 エリックとそれなりに会話を交わしている所為か、多少の軽口が混じってきている。結界内で飛ばされないところを見ると、彼なりに距離感を掴んできたのだろう。


 そんなやり取りをしている間に、看護服すずのは素早く取り出した銃型の注射器を女性の首筋に当て引き金を引いていた。


 やがて、ブツブツと独り言を呟いていた女性は薬の効果で寝たのか、意識を失ったのか、その場に力なく横たわった。


「極度のショック症状を起こしたようなので精神安定剤の注射を打ちました」

「すずの、原因は?」

「彼女が意識を取り戻してから幾つか会話を試みましたが、それから察するに、ここに来る前に男性たちから酷い扱いを受けていたようです。おそらく、エリックさんの、……男性の姿を見て、その記憶がフラッシュバックしたのかと推測されます」

「……エリック、お前らがやったのか?」

「い、いや、知らん知らん」


 睨みを利かせエリックを見やると、慌てて首を横に振って否定した。


「……幾ら奴隷と言っても、大事な商品と扱いは同じだ。酷い扱いをして傷モノにしたら、それこそ信用に関わるし問題にもなる」


 顔に汗を浮かべながら、そんなことを言った。


「ふーん」

「う、ウソじゃねぇ! あ、いや、ウソは言ってません」


 エリックの謝罪の言葉を耳の右から左に流して、薬で意識を失った女性を見やる。そういえば、砂浜で横になっていた初見の際、彼女のことを鑑定していなかったと思い出した。


 改めて専用眼鏡の鑑定機能を使って星界システムの記録ログを確認してみた。すると、所属国の欄に回収した漂着者たちとは違う国名が表示されていた。


「……クローヴィス王国」

「なん、だと?」


 私のつぶやいた所属国名を聞いたエリックに僅かな驚きが見られた。


 今回救助した漂着者たちが所属していたブリスヤード帝国とも、フローレシア王国とも違う国名。女性の名前は、アリスティア・バーデンシルト。


 外見は、白に近い金色の髪で長くウェーブが掛かり背中の中ほどまで伸びていて、身体は脂肪と筋肉がバランスよく付いて標準的な体型をしている。


 クローヴィス王国所属。王国第七騎士団の団長。フローレシア王国の救援に向かう途中、ブリスヤード帝国の私掠船団の奇襲を受け、応戦するも拿捕されて捕虜となる。


 女性指揮官と言うこともあって、クローヴィス王国の動きの情報を得る建前の下、その扱いは苛烈だったようだ。看護服すずのの推測はおおむね正しかったと言える。


 その後、一緒に捕まっていた部下たちが、監視の隙を突いて奪った小舟に満身創痍のアリスティア一人を乗せて脱出させた。


 しかし、大海原の真っ只中を意識を失ったまま漂流している最中に、突如発生した大嵐で小舟は転覆して遭難した。とあった。


 どうやらこの女性は、エリックたちとは別口の漂着者だったようだ。いずれにせよ、彼女もまた私たちのアレのとばっちりを受けた被害者だった。


 騎士団の団長である彼女が、エリックたちと同じ場所に流れ着いたのは、群島を取り巻く海流の影響だろうか。


 明日、エリックたちや奴隷たちの国に向かって出港することを考えて、あとで星界システムを使って確認してみよう。


「その国の騎士団の団長らしい」

「そう、なのか? むしろ、その団長がなぜここに居るのか判らないんだが?」

「だろうな。私も名前と所属国を鑑定できるぐらいだから、いま判る情報はそれだけだ」


 私が確認した鑑定結果は、一応個人情報になるのだし、ここに到った詳細をエリックに教える必要はない。


「それより、すずの。エリックの足を診て欲しいんだがいいか?」

「はい、デザイア船長。エリックさんその椅子に腰を掛けてください」


 看護服すずのが、意識を失ったアリスティアをベットに寝かせたのを見計らい声をかけた。そして、それに応えるように、すぐにエリックへ椅子に座るよう指示を出した。


「エリックも早くその足を診てもらえ。さっさと食堂に戻るぞ」

「あ、ああ」


 看護服すずのは、椅子に座ったエリックの足を診て、筋肉の軽い炎症と診断。足の太ももやふくらはぎに湿布を貼りまくっていた。ちょっとした騒動があったものの、エリックの足の治療を終える。


 医務室を出る際、看護服すずのにアリスティアが目を覚ましたら報告を上げるように指示を出して、私たちは食堂へ向かった。


「マスター、緊急でしたのでなにも言いませんでしたが、人前に出るのであればその格好は好ましくないので着替えてもらいます」


 私は、食堂前で待ち構えていたイステールにそう言われて掴まった。ちなみに一緒に居たエリックは食堂に通されている。


 食堂の隣に在る会議室で、新たに用意された服に着替えさせられた。


 さすがに下着みたいな布製キャミソールにドロワーズは拙いか。と、思い直して着替えたはいいけど、用意されていたのが左胸のあたりに勲章っぽいのが幾つか付けられた、白い軍装の制服なのはどういうことだ?


 「マスターお気に入りの地球型星界の資料映像にあった日本の文化、夏と冬に開催される創作イベントなる催しで着用されたいた服の一つです。フリー素材にあったので用意しました」


 イステールの弁である。なるほど、専用眼鏡を使いこなしているようで何より。そんなことを思いながら、姿見鏡の前で用意されたコスプレ衣装に腕を通して、ついでとばかりに付属品されていた帽子を被る。


 横で着替えを見守っていた制服すずのを見たけど、着ている紺色の制服と色と形が違うので統一感がまったくない。この星界においては些細なことかと思い直した。


 そして、食堂で漂着者たちに改めて自己紹介と挨拶をした。最初の威圧的な挨拶が功を奏したのか、漂着者たちは神妙な表情を浮かべて騒ぎは起きなかった。


 その流れから、漂着者たち二十六人に対して、各々が帰りたい地域や場所へ送り帰すことを宣言してから、その希望を募った。


「……仲間内で相談することもあるだろう。なので明日の朝まで期限を設ける。質問や方針が決まったら、そこに居るメイド服のすずのかイステールの二人に直接言うなり聞くなりして欲しい。以上だ」


 私の言葉でいささか騒がしくなった食堂を見回してから、イステールとメイド服すずのに「あとは任せた」とアイコンタクトを送り、私と制服すずのは食堂を出た。


 このあと、少し狭いけど、彼らには椅子とテーブルを端に寄せて雑魚寝することになっている。毛布なども用意した。多少の不便さは感じるだろうけど、国に帰るまで我慢してもらおう。

我が妄想。

ツイッターで楽描きして、他の方のネット小説を読み漁っていたらこのザマ(二ヶ月近く放置)ですわぁ。

仕事もデスマーチに入ったので次の更新は未定。……済まぬ。

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