表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/10

第6話 陥れられる

 その夜、ムタヤは市場から戻ってきた。


「母上。殊の外、高く売れました。滋養のある物を買って来たので、早く良くなってください。」

「すまないねえ。今日も療養所からあの先生に来ていただいて、気分がかなり良くなったよ。」


2人が話しているところに、戸をドンドンと叩く音がした。


「ムタヤ。お調べがある。戸を開けよ。」

「はい、ただいま。」


ムタヤが戸を開けると、家の前に役人が大勢集まっていた。


「何ごとでございましょうか?」

「市場で人が襲われ金が盗まれた。お前に疑いがかかっておる。」


役人が指さして言った。


「何かのお間違いでしょう。市場には行きましたが、金は盗っておりませぬ。」

「では家探しするぞ! それ!」


役人たちは家に土足のまま上がり込み、あちこちをひっくり返した。モリ―とムタヤは不安そうな顔でそれを見ているしかなかった。やがて役人が外のかごの中から布の包みを見つけた。


「これは何だ!」


と役人は包みを開いた。すると中には金が入っていた。


「これこそ動かぬ証拠! ムタヤ! お前には来てもらうぞ!」


役人は大声を出した。ムタヤは青ざめて何度も首を横に振った。


「これは何かの間違いです。断じて私ではありませぬ。」

「言い訳は役所で聞こう!」


役人はムタヤを縄で縛って連れて行った。


「ムタヤ!ムタヤ!」


その後ろで泣き叫ぶモリ―の姿があった。




 ムタヤが捕まったことはすぐに町中のうわさになった。


「ムタヤ様が・・・まさか・・・」


その噂を聞いて、ミイナはすぐにムタヤの家に向かおうとしたが、その前にユーラス公爵が立ちはだかった。


「行ってはいかん!お前はここにいるのだ。」

「行かせてください。あのムタヤ様がそのようなことをするはずはございませぬ。」


ミイナは声を上げて言った。だがユーラス公爵は許さなかった。


「断じていかん。お前までお調べを受けたらどうする!」

「構いませぬ。父上だってムタヤ様がそんなことをするとはお思いにならないでしょう。」

「それはそうだが・・・。しかしお前が行ってどうなる? とにかくここから出るのは断じて許さん!」


 ユーラス公爵はミイナを部屋に閉じ込めて鍵をかけた。その部屋からはむせび泣くミイナの声が聞こえていた。




 療養所にもムタヤが捕まったことが広まっていた。


「あの男が商人を襲って金を奪ったようだ。その商人は大けがをしているらしい。」

「金に困っていたのか。」

「人間、追い詰められたら何をするかわからんな。」

「ああ、しかしミイナ様がおお可哀そうだ。あの男の母親のことまで心配していたっていうのに・・・」


患者たちは話をしていた。それを聞いて老人は思った。


(これは何かある。ムタヤがそのようなことをするはずがない。誰かが何か企んでおるな。)


老人は腕組みをして考えた。



 一方、サーブ公の屋敷にはカライが報告に来ていた。執行官である彼がムタヤの事件を担当していた。サーブ公は町のうわさでムタヤが捕まったことを知っていた。


「うまくいったようだな。」

「奴は捕まえております。後はこちらの胸三寸でどうにでもなります。」

「ふふふ。ご苦労。」


サーブ公はいやらしく笑った。それを見てカライもニヤリと笑った。


「ではご苦労ついでに、ユーラス公爵の家に行ってきてくれ。ムタヤのことがあればあの娘も無下に断れまい。」

「はい。早速。」


カライはそう言って席を立った。




 ムタヤは牢に入れられた。暗く寒いその場所はムタヤの心を凍らせていた。明日からは厳しい拷問が待っていよう。自白させるまで・・・。全く身に覚えのない罪で捕まり、不安で明日の希望も見いだせなかった。ただ彼の心にはあのミイナの姿が浮かんでいた。もう彼には届かぬ彼女の姿が・・・。


「ミイナ・・・」


ムタヤはそうつぶやくしかなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ