今度は
お久しぶりです。
※後半キスシーンあり
今日の分の仕事が終わった三田頼之は、仕事部屋からリビングに向かった。
リビングに行くと、家事が一通り終わったのか、ソファーですやすやと気持ち良さそうに寝ている天使渉を見つけた。
頼之はそっと近づいて、渉の髪を優しく撫でる。
「……っ、ん……?」
「おはよう」
「……はっ、すいません、つい気持ちよくて寝ちゃってました──」
渉は起きて、誤魔化すように窓を指差して言った。
「ほら、今日いい天気で、暖かかったから……!」
「そんな必死に言わなくても、俺は怒ってないぞ?」
あまりにも必死な渉に、頼之は思わず笑ってしまう。
渉は「だって……」と申し訳なさそうに続けた。
「サンタさん仕事してるのに、俺だけ寝てるのは失礼じゃないですか」
「いいんだよ、テンシはテンシの仕事をしたんだから──」
と頼之が微笑むと、渉は少し苦笑いで「はい……」と頷く。
そんな渉に、頼之は一つ提案した。
「そんなにいい天気なら、外に行こうか。桜は咲いてなくとも、梅なら見られるかもしれない」
「ああ、ですね! 行きましょう──何か持っていきますか?」
ぱっと笑顔になった渉を見て、頼之は良かったと思いながら答える。
「おにぎりとか。小腹が空いた時に食べたいな」
「わかりました。じゃあ、梅干しで握りますね──」
と渉はキッチンに向かう。
頼之はレジャーシートを探しに、玄関の方に向かった。
*
そして二人は、近所の少し広めな公園にやってきた。
「どこら辺にします?」
渉は鮮やかに咲く梅に見とれながら、頼之に訊く。
「そうだな──あそこにしようか」
と頼之は少し奥の方を指差した。
そこは、大きな梅の木が一本ずっしりと身構えていて、周りの木がその梅の木を隠すような形になっている。
ここなら梅の木を独り占めできるだろう。
「いいですね、特別な感じがします」
と渉は笑った。
頼之も微笑んで「じゃあ決まりだ」と歩きだす。
渉も「はい」と頷いて、頼之と並んで向かった。
二人は大きな梅の木が見上げられる所に、レジャーシートを敷いて座った。
渉は作ってきたおにぎりと、お茶を容れてきた水筒を、レジャーシートの上に置いて一息吐く。
「ふぅ……やっぱりいい天気ですね」
「そうだな──」
そう答えた頼之の横顔は、目の前の梅の木を優しく見上げていた。
「……」
「どうした?」
見られていたのに気付いて、頼之が渉の方を見ると、渉はなんでもないというように笑う。
「いや、ただちょっと、サンタさんの横顔が優しいなと思って」
「なんだそれは」
「いやいや、別に深い意味はないんで」
と渉は前に顔を戻した。
頼之も顔を前に向けて、梅を見上げる。
「きれいだな」
「はい」
「次は、桜を見に来よう」
「はい──」
二人は少しの間ぼんやりと梅を見てから、おにぎりを食べ、お茶を飲んだ。
ぽかぽかと暖かく、お腹も満たされ、頼之は思わず欠伸をする。
「ふぁ……」
「ちょっと眠ります? まだ明るいし、少ししたら起こしますよ」
と渉が提案する。
頼之は「じゃあ」と渉の言葉に甘えた。
「少しだけ寝るよ。十分くらいしたら起こしてくれ」
「はい」
頼之はレジャーシートに横になって、渉に訊く。
「ちょっと、足貸してくれるか? 嫌ならいいんだが」
「このままだと低くてな」と頼之は苦笑いする。
渉は「良いですよ」と正座をした。
「ここでよければ……」
「ありがとう──」
少し照れながら言った渉に微笑んで、頼之は渉の太ももに頭を乗せて、そっと目を閉じた。
渉は少しドキドキしながら、ちらっと頼之を見る。
もう寝ているかはわからないが、こうやってじっくりと寝顔を見るのは初めてかもしれない。
「……」
そっと髪に手を当てて、ゆっくり撫でてみる。
「ん……」
少し反応するものの、頼之は寝ているのか、心地良さそうに寝息を立てていた。
「もう寝てる……」
渉は少し考えてから、まだいいよなと頼之の髪を撫でる。
普段頼之に撫でられたりすることはあっても、渉から頼之に触ることはない。
「はは……なんか、俺が年上みたいだ」
と小さく呟いて、渉はふと思った。
今なら、自分からキスができるのでは──と。
いつも頼之からしてくるので、ふと思ったのだ。
それもこの間、頼之と触れるキスから深いキスをした。
「……っ……」
渉は思い出してから少し赤くなる。
そして、あれが出来たんだから、自分から出来るはずだ、と変に意気込み、渉は周りに人がいないのを確認してから、小さく息を飲んだ。
それからゆっくり頼之に顔を近付けていき、触れる直前でばっと顔を上げた。
「……っ、無理無理無理無理……!!」
と小さな声で叫びつつ、赤くなった顔を両手で隠しながら、渉は悶える。
なぜ自分からしようとしたのかが、不思議なくらい恥ずかしかった。
ドキドキするし、何より顔を頼之に近付けた時、寝息がかかったことに緊張した。
「……はぁ、何してんだ、俺──」
と渉は一人苦笑いして、梅の木を見上げる。
もう少ししたら、サンタさん起こそう……と渉は小さく溜め息を吐いた──。
頼之がふと目を覚ますと、目の前に渉の寝顔があった。
「……テンシ?」
頼之が声をかけると、ゆっくりと渉が目を開いた。
「ん……ぁ、れ?」
「寝ちゃってた?!」と渉が顔を上げると、もう陽が傾き始めていた。
「すいませんサンタさん! 俺も寝ちゃって……」
「いいよ。急ぎの用事もないし」
と頼之は起き上がり、渉の隣に座り直す。
「すいません……」
「気にするな。帰ろう──」
と頼之は渉の頭を撫でると、微笑んで立ち上がった。
自分がしようとした事の罰か……と思いながら、渉も大人しく立ち上がった。
レジャーシートを畳んで、頼之の方に向き直ると、頼之がふっと笑ってキスをした。
「へ……」
「……今度は、ちゃんとしてくれるんだろ?」
「は? ……っ起きてたんですか?!」
「少しな」
と頼之は笑って、先を歩き始める。
渉は恥ずかしさで赤くなりながら、頼之の後を追うのだった──
帰り道。
頼之(どことなく嬉しそう)
渉(どことなく顔が赤い)
次回、桜を見に──。




